木と人のぬくもりに包まれた介護付有料老人ホーム<後編>
グランフォレスト学芸大学
「グランフォレスト学芸大学」は住友林業グループの「株式会社フィルケア」が運営する介護付有料老人ホームだ。良質な木材をふんだんに使っており、温かみのある木のぬくもりに包まれて暮らせる。また、庭の植栽も美しく、眺める楽しさと育てる喜びを味わうことができる。
人のぬくもりと先端技術の効果的な組み合わせ
介護の人手不足が言われるようになって久しいが、様々な方法でこれを解決しようという動きがある。そして、それは決して介護を受ける高齢者に負担を強いるものではない。むしろ介護の質を上げることも同時に実現させているのだ。グランフォレスト学芸大学でもICT(Information and Communication Technologyの略で、情報や通信に関する科学技術の総称)を積極的に活用することで、入居者の満足度を高めている。
ベッドや居室内にカメラではなく見守りセンサーをつけ、入居者の行動を見守っている。ベッドにつける離床センサーは、入居者がベッドで寝ているのか、起き上がっているのか、睡眠が深いか浅いなどを離れた場所で把握することができる。この仕組みによって入居者の転倒事故などを減らし、安全・安心に生活できるようにしているとのこと。
「介護には目に見えにくく、スタッフの感覚に頼る部分がありました。しかし離床センサーや人感センサーを使うことによって、実際に入居者様の様子が目に見えるようになりました。まさに見える介護、感覚値ではない介護が実践できています」(グランフォレスト学芸大学支配人の三谷利嘉子さん、以下「」は同)
たとえば、認知症の人が眠れないという訴えをしたとする。しかし認知症がある場合、睡眠時間についても正確に伝えることはなかなか難しいこともある。そういった場合でも離床センサーの波形を見ると睡眠の様子が分かるのだ。訴えに基づいて処方されていた睡眠剤が、実はよく眠れていて服薬の必要がないということが分かることもある。
また、今までは本人や職員が説明した内容で医師から薬を処方されていたが、離床センサーを使うことで記録が残るため、薬の選択が的確にできる。正確な情報によって薬漬けにならずにすむ可能性が出てきたのだ。大阪市立大学医学部疲労医学教室と大阪市大医学部発のメディカルIT「ベンチャー・エコナビスタ株式会社」と協力しながらこのようなシステムを構築しているという。
「入居したての方の睡眠の波形と、入居後落ち着いてからの睡眠の波形は違います。それを見るだけでも、環境に慣れたきたかどうかが分かるんです」
離床センサーを活用することで、実際に転倒を未然に防いだこともあるそうだ。
「ベッド脇にもセンサーがあります。普段はあまり動かない入居者様が夜間、ベッド上にいないとなればどこかで倒れている可能性があります。そういったことを、スタッフがいち早く察知することができるんです。自由に動いていただいてもらいながらも、見守ることができます」