美容整形で病気を予防|眼、乳房、シモの悩みも…美と健康を両立させる手術とは
美容整形を受ける人が増加中だ。幅広い世代の女性が気軽に施術を受けるようになったのには理由がある。今や美容整形は美しくなるだけでなく、病気の予防や症状の改善のために「受けておく」ものになりつつあるのだ。美と健康を両立させる整形手術とは。
宮根誠司、和田アキ子も受けた眼瞼下垂手術
『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ系2019年1月15日放送)で宮根誠司(56才)が発した「結果的にプチ整形です」という言葉を覚えている人は多いだろう。歌手の和田アキ子(69才)も、宮根と同じ手術を受けていたことを、『アッコにおまかせ!』(TBS系2018年12月2日放送)で告白した。彼らが受けたのは、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」の症状緩和のための手術だという。
そもそも、これはどのような病気なのか。高須クリニック院長・高須克弥さんが解説する。
「眼瞼下垂とは、加齢のほか、生まれつきや、例えばコンタクトレンズをつけっぱなしにすることなどにより、まぶたを持ち上げる筋肉がダメージを受けることで、まぶたが下がってきてしまう病気のこと。“眠そうな目” “老け顔”に見えるといった見た目の問題もありますが、下がりすぎたまぶたで黒目が隠れて視界不良になり、視力が低下する原因になるという物理的障害も引き起こします。そればかりか、目を大きく開こうとするあまり、おでこの筋肉を使いすぎて頭痛が起こることもあるのです」
眼瞼下垂を改善するには手術しかない。上まぶたの皮膚を切開し、緩んでいる挙筋腱膜(きよきんけんまく)を瞼板(けんばん)に縫いつけるというもの。これにより、まぶたを持ち上げることができる。
視力低下を招く逆さまつげを二重まぶたの美容整形で改善
こうした美容整形手術で、美容だけでなく、治療としてのメリットを実感できたという声は多い。
東京都に住む50代の細谷美由紀さん(仮名)は、幼い頃から目の「ゴロゴロ感」に悩んでいた。20代の頃、医師に相談したところ、分厚い一重(ひとえ)まぶたのせいでまつげが目の内側に入り込んで眼球に接触しているせいだとわかった。そこで二重(ふたえ)まぶたの美容整形手術を受け、改善したという。
「逆さまつげは、放っておくと角膜が傷ついて視力が下がることもありますが、二重まぶたの整形手術を受けたおかげで、逆さまつげが治ったという例は非常に多いのです」(高須さん)
だが、本来、まぶたを二重にする手術に健康保険は適用されない。高須さんが続ける。
「例えば、逆さまつげのせいで角膜が傷ついて、目に炎症が起きるなどの症状が“病的である”といえる状態の場合は、医師によっては『治療』とみなし、保険が適用される場合もあります。眼瞼下垂も同様で、まぶたが垂れ下がっているせいで視力が著しく低下したり、ひどい頭痛がしたりといった場合には、保険適用にする医師もいるでしょう」
ただし「眼瞼下垂が悪化して、将来視力が低下するかもしれないから」という予防目的や、「見た目が悪いから」という理由での手術は、どのクリニックでも保険の適用外だ。
まぶたの中の筋肉が衰えて眼瞼下垂が起こると、老けた印象になるだけでなく、視界が悪くなり頭痛が起こることも。
乳がんは摘出・再建で回避。傷痕も目立たず高コスパ
2013年、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー(44才)は、検査によって遺伝的に87%以上の確率で乳がんになると判明したため、乳房の全摘手術に踏み切った。
“バストの総合医療”を手掛けるナグモクリニックの院長・南雲吉則(なぐもよしのり)さんはこう話す。
「彼女が受けたのは、『皮下乳腺全摘同時再建(ひかにゆうせんぜんてきどうじさいけん)』と呼ばれる手術です。あらかじめ受けておくことで、乳がんが発症するリスクを限りなく低くすることができます」
予防医療のため保険適用外で、同クリニックの場合は片胸で約70万円ほどの費用がかかる。
高額に感じるが、実際に乳がんが発症した場合の治療費用・乳房再建費用の保険算定金額とほぼ同額だ。入院で働けなくなることや治療の苦痛などを考えると、予防のための美容整形を受けた方が、コストパフォーマンスがいいともいえる。
「“本当にきれいに再建できるのか” “手術痕が残るのではないか” という心配の声も聞かれますが、報道などで彼女のバストを見ると、きれいな形に再建できていることがわかります。乳頭・乳輪と皮膚を残して乳腺だけを取り、インプラント(シリコンでできた人工乳腺バッグ)を入れるというやり方なので、わきの下とアンダーバストのラインに5㎝ほどの小さな傷がつくだけで済みます。昔は胸元に横一文字の大きな傷が残るようなやり方が主流でしたが、今の方法なら傷痕がわかりにくい。温泉にも堂々と行けます」(南雲さん)
乳がんの罹患率は30~40代にかけて大きく跳ね上がる。予防のために皮下乳腺全摘同時再建手術を受けるのも、30~40代が多いと南雲さんは言う。
「遺伝性の乳がんは若い人ほど発症する可能性が高く、片方の乳がんの治療後にもう片方が発症するリスクも高くなる。そのため、若いうちに乳がんで片方の乳房を失った人のうち、10人に1人は、もう片方も予防のために摘出・再建しておきたいと言います」(南雲さん)
シリコンバッグの種類によっては悪性リンパ腫細胞発生のリスクが
ただし、再建のために挿入するシリコンバッグのうち、表面がざらざらした「テクスチャード」といわれるタイプは、その周りに悪性リンパ腫の細胞が発生することがある。最近では米国でこれに関連があるとみられる死亡者が33人に上ると発表されたばかり。
「そうしたリスクを避けるため、術後の定期検診は必ず受けてください。これから手術を受けたいと思っている場合は、再建する医師が術後に直接定期検診を行ってくれる病院を選ぶべき。万が一リンパ腫が発生しても、シリコンバッグの周りの被膜を摘出すれば完治が期待できる。その後、自家組織(自分の体の組織)を使った再建が可能です」(南雲さん)
●現在では手術痕がほとんどわからなくなった乳房全摘出手術
「シモの悩み」は膣へのレーザー照射で解決できる
加齢に伴う症状で、多くが人知れず悩んでいるのが尿漏れなどの排尿障害や、腟や外陰部の不快症状。この症状に効果的なのが「GMS治療」だという。
ジュノ・ヴェスタ クリニック八田の院長・八田真理子さんによると、GMS治療の一種「モナリザタッチ」は、女性器を若返らせるだけでなく、排尿障害や尿漏れ、腟の乾燥といった不快症状にも効果があると話す。
「『モナリザタッチ』は、腟内にレーザーを照射することで、萎縮した細胞を活性化し、腟壁の厚みや潤いを取り戻す、“最新のアンチエイジング”です。この施術で腟壁の厚みが戻ると、腟に隣接する尿道を支えてくれるので、尿漏れなどの排尿障害の改善が期待できます」(八田さん)
「モナリザタッチ」の施術時間はわずか5分ほどで、痛みはほとんどない。
「術後守らなければならないことは、当日の入浴と術後3日間の性交渉を控えることだけ」
と八田さん。
「最近、濡れなくて性交痛が…」という中高年が受ければ、若さを取り戻しつつ、将来の“シモの不安”も解消できそうだ。
症例数と医師のカウンセリングが病院選びの決め手
「モナリザタッチは年代を問わず受けられる」
と八田さんは語るが、ほかの手術はどうだろうか。ずばり「美容整形は健康な人であれば100才でも受けられる」
と高須さんは言う。
「74才のぼくも高齢といわれる年齢ですが、美容整形手術を受けています。カウンセリングをし、健康であることがわかれば、どんな施術でも行うことは可能です」(高須さん)
多くの美容整形外科はカウンセリングのみの来院も快く受け入れてくれるが、浅見さんは「クリニック選びには注意が必要」と警鐘を鳴らす。
「医師ではなくカウンセラーのような人としか話せなかったり、施術を急かして“今日施術を受ければ割引になりますよ”などと勧誘してくるクリニックは、術後も押し売りをしてくる可能性が高い。医師が直接、誠実にカウンセリングしてくれるかどうかは、非常に重要です。また、がんの手術と同じく、症例数が多い病院は技術が高いと見ていいでしょう。誠実で、高い技術を持っていて、アフターケアもしっかり行ってくれるところがベストです」(浅見さん)
前述の通り、美容整形は基本的には保険適用外。しかし、予防目的の美容整形を受けることで、将来的に病気が発生した時より、金銭的にも精神的にも負担を軽減できるとしたら、受ける価値は充分にあるといえるだろう。
今回取材した医師たちは、異口同音に「美容整形で得られるいちばんの効果は『美しくなって心が健康になること』」と話す。思い切って美容整形を受ければ、体と心に「幸せの副作用」が期待できるかもしれない。
年代別に受けた方がいい 病気を予防する整形手術
●眼瞼下垂手術
上まぶたの眼瞼挙筋を縫い縮めることでまぶたの開く力を強化し、目の縦の幅を広げる。手術は約30分間。眼瞼下垂を原因とする肩こり・眼精疲労・片頭痛は、ほとんどの場合改善する。目に重くのしかかっていたまぶたは持ち上げやすくなり、視界が広がる。
●年代:10~70代
●予算
・片目(通常の手術の場合)35万円
・両目(通常の手術の場合)70万円
●皮下乳腺全摘同時再建手術
わきの下とアンダーバストを切開し、乳腺を切除する。その後胸筋下にシリコン製の人工乳腺を挿入して再建を行う。1週間ほどの自宅療養が必要だが、手術のための入院は1泊。術後1か月ほどすれば傷痕も目立たなくなり、その後は1年に1回ほどの定期健診・メンテナンスに通院すればよい。
●年代:30~40代
●予算
・片胸70万円(予防の場合)
●GMS治療(モナリザタッチ)
炭酸ガスフラクショナルレーザーで膣内の細胞を活性化し、コラーゲンの生成を促すことで、膣内をふっくらさせ、潤いのある粘膜に生まれ変わらせる。頻尿や尿漏れなどの排尿障害、性交痛のほか、膣や外陰部の不快感、乾燥、かゆみの改善も期待できる。初回の施術から1か月後に2回目の照射をすれば、8~10か月ほど効果が持続する。
●年代:30代~上限なし
●予算
・3万円~
※今回取材した各クリニックの料金設定をもとに本誌で作成。
※女性セブン2019年8月22・29日号