看取り率6割、看護師の施設長が運営する介護付有料老人ホーム<前編>
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
今回紹介するのは、杉並区の介護付有料老人ホーム「ライフステージ阿佐ヶ谷」だ。
ライフステージ阿佐ヶ谷
「ライフステージ阿佐ヶ谷」は、JR「阿佐ヶ谷」駅から徒歩約4分と利便性の高い場所に位置しており、杉並区では唯一の医療関連企業による老人ホームだ。運営を行っている株式会社星医療酸器は、1974年の創業以来、医療ガスを提供し、在宅医療にも貢献してきた。ここでは看護師が施設長を務め、看取りへの取り組みに力を入れている。
6割近い看取り率を実現している取り組みとは?
ライフステージ阿佐ヶ谷には、看護師が24時間常駐している。そのため緊急時や医療度の高い入居者にも適切な対応が可能だ。そして、看護師は看取りを行う上でも重要な役割を果たしている。
介護施設で「終の棲家」をうたっているところは少なくない。しかし、その実情はそれぞれだ。看護師として現場での経験を重ね、施設長として奮闘する高橋桂さんに介護に対する考え方、具体的な取り組みを聞いた。
「終の棲家として入ってきていただいているので、安心して生活できることを重視しています。そして過剰な介助にならないようにしています。残存能力を維持するために助け過ぎないようにしないと、本来は歩ける人が歩けなくなってしまいますから。そうならないように、職員や施設都合で援助しないようにしています」(高橋さん。以下、「」は同)
生活リハビリという考え方があり、日常生活において自力でできることはした方が良いのだが、集団生活をするための効率性との兼ね合いが必ず問題になってくる。
「例えば、歩いて食堂に行くと時間もかかるし、職員もマンツーマンでつかないといけません。車椅子でお連れした方が早いんですが、そういった方もできるだけ歩いていただくことが大切です。
後は、できるだけ自宅に近い環境、雰囲気を作ろうと心がけています。ご高齢の方は大きな環境の変化で不安になってしまう方もいますし、慣れるのにも時間がかかってしまいます。ここは施設の規模も小さいので、比較的目が行き届きやすいですね。フロアごとに担当を分けているわけではないので、入居者様全員に全職員がかかわれます」
看護師がいることで実現できること
ここは、看護師しかできない経管栄養やたんの吸引などが必要な人も入居できる。そして看取りの時にも、麻薬の使用など看護師がいることで実現できることは多い。
「高齢になると、だんだん物が飲み込めなくなって、食べられなくなってきます。そして誤嚥性肺炎を起こすことが非常に多くなります。誤嚥性肺炎になると吸引が必要になってきますが、夜中に吸引ができないので、家には戻れないと言われてこちらにいらっしゃる方もいます。ある程度の医療処置が必要な方でも、看護師が24時間いるので、安心して入居いただけます」
高橋さんによると、最期に病院を希望する入居者を除いても半分以上、6割近くの入居者の看取りまでしているという。24時間途切れないケアと連携している在宅医療の医師の協力によって、それを実現させているのだ。もちろん、看取りを行うにあたって重要なのが、本人、そして家族の意思だ。いざ直面するまでは目を背けている人も多いこのことについても聞いてみた。