認知症の妻・大山のぶ代を残して・・・砂川啓介さんの心残り
認知症を患う妻は、愛する夫の死をどう受け止めているのか──。大山のぶ代(83才)の夫・砂川啓介さん(享年80)が7月11日、亡くなった。2016年4月に尿管がんの宣告を受け、放射線治療や抗がん剤治療を行いながら、十数回におよぶ入退院を繰り返し、2年間闘病を続けていた。
断腸の思いで妻を老人ホームへ
がん発覚の前年、砂川さんは大山がアルツハイマー型認知症を患っていることを公表。「私、ここ(自宅)にいたい」──大山は認知症の診断後もそう望み、自宅で老老介護を続けてきたが、砂川さんのがんがわかり、入院が必要になって事態は一変。「このままでは共倒れになる」と断腸の思いで妻を老人ホームに入れた。
「砂川さんは、“ペコ(大山の愛称)ひとりでやってけるだろうか”と心配していましたが、彼女は自宅よりむしろ老人ホームのほうが肌にあっていたようで食事もすすむようになって体調も上向きでした。“妻を老人ホームに入れるのはイヤだと突っ張っていた自分はなんだったのか”と苦笑していましたよ。それでも認知症の進行は止まらない。最近では夫のがん闘病のことも理解できていないようでした」(夫婦の知人)
砂川さんは著書『娘になった妻、のぶ代へ 』(双葉社)の文庫版のあとがき(今年5月発売)で、こう述べている。
《僕に残された時間はあとどれぐらいあるのだろう。(中略)でもね、ペコ。僕は必ず生き続けてみせるよ。決してペコより先に死んだりしない》
前出・知人が言う。
「大山さんには親やきょうだいなど近しい身寄りがいません。砂川さんは“自分が死んだら妻が天涯孤独になってしまう”と自分亡き後の大山さんを心配していました」
子供のいない夫婦の晩年はどうなる・・・
超高齢化社会の日本では身寄りがなく、老人ホームで暮らす認知症患者は少なくない。
「一般的には、老人ホームが本人に代わって自治体に相談し、市区村長が家庭裁判所に申し立てをして、適任な『成年後見人』が選ばれます。後見人が本人に代わって財産の管理や介護契約など、人生の最終盤の補佐をします」(成年後見の実務に詳しい弁護士)
夫婦には子供がいない。結婚当初に死産した子と、7年後に生まれた娘が3か月で亡くなっている。
砂川さんは「子供さえいれば」と晩年まで悔いていたという。前出の著書ではこう述べている。
《子供はいないんだから、「孫=俺の生まれ変わり」が欲しい。ひ孫でもいい。俺の生まれ変わりが欲しいな。そんな事しか思いがいかない、最近》
砂川さんの思いは、今も大山に寄り添っている。
※女性セブン2017年8月3日号
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