『九十歳。何がめでたい』1万通超の読者ハガキにみる人生訓
出版流通大手のトーハンと日販は6月1日、それぞれ「2017年上半期ベストセラーランキング」を発表した。いずれのランキングでも、総合第1位となったのは、佐藤愛子さんのエッセイ集『九十歳。何がめでたい』だ。トーハンの2位は『伝道の法』(大川隆法・著)、3位は『騎士団長殺し(1・2)』(村上春樹・著)。日販は2位が『騎士団長殺し(1・2)』(村上春樹)、3位が『蜜蜂と遠雷』(恩田陸・著)だ。
現在90万部を突破する大ベストセラーの『九十歳。何がめでたい』だが、発売は昨年8月。それだけに驚きの声が上がっている。
その面白さは、新聞や雑誌の書評、友人知人からの口コミなどを通してはもちろん、新聞の投稿欄を通しても広がっている。その数、この1か月だけでも、なんと4つ――。
新聞の投稿欄に感動の声が続々と
沖縄タイムス5月29日付「わたしの主張 あなたの意見」欄には「文豪はすごい 本の力に感動」と題した67才女性の投稿が掲載された。
『知的な分析力と表現力で、文章を読んだ後にドッと笑いに包まれる。この余韻をいつまでも、大切にしたい! オモシロイ!』
と感想を綴っている。
愛媛新聞5月25日付「てかがみ」欄には「私の日々」と題した90才の女性の投稿が掲載された。戦前・戦中の日々を振り返り、週1回のデイサービスを楽しむ近況を綴った上で、こう締めくくった。
『大正生まれの私は戦後の物の不自由を経験しているので、今の幸せをかみしめ、あと何年生きるかと考え寂しくなる。そんなとき、佐藤愛子さんの「九十歳。何がめでたい」を読んで、もうしばらく戦争のないこの平和な生活を楽しみたいと思う』
中国新聞5月23日付「こだま」欄には「人生で一番幸せ」と題した91才の女性の投稿が掲載された。長く髪を染めていたが、年相応でいたいと思って、昨秋それをやめたと綴った上で、こう結んだ。
『先日、お友達が佐藤愛子さんの著書「九十歳。何がめでたい」を貸してくれた。くすくす笑いながら一気に読み上げた。何くそという気持ちがあるので、余計共感した。
私は今、前向き。人生で一番幸せかもしれない』
そしてもう一つ、新潟日報5月21日付「窓」欄には、「心に残った一節を金言に」と題した73才の女性の投稿が掲載された。普段は小野不由美さんや上橋菜穂子さんの本を愛読しているという女性が『久々に読んだことのない作家の本を買いました』。それが佐藤さんの『九十歳。何がめでたい』だった。
『佐藤さんの怒りの金言に納得、同感で楽しく読みました。
一番心に残ったのは「人間のんびりしようと思ったらダメ」の一言です。作者が90歳になって実感されたこの言葉を私の金言にしてこれからの日々を過ごしていきたいと思いました』