インスタント味噌汁と手づくり味噌汁、認知症になりやすいのはどっち?
Q インスタント味噌汁と手づくり味噌汁、認知症になりやすいのはどっち?
a インスタント味噌汁
b 手づくり味噌汁
c どちらも変わらない
答えはa、インスタント味噌汁です。
理由は塩分の量にあります。あくまで一般論ですが、インスタント味噌汁1杯に含まれる塩分は2グラム以上のことが多く、家庭で手づくりする味噌汁1杯に含まれる塩分は1.5グラムほど。インスタント味噌汁のほうが多いのです。
では、なぜ塩分が少ないと認知症予防になるのでしょうか?
それは高血圧との関係にあります。塩分の摂りすぎは高血圧の原因のひとつです。
実は、近年の研究から、認知症の原因として「脳梗塞」がクローズアップされてきました。特に、75歳以上のアルツハイマー型認知症のうち93%もの人が、脳梗塞をわずらっていたのです。脳梗塞を防ぐには高血圧を防ぐことが必要です。つまり塩分を控えることが、認知症予防につながることがわかってきたのです。
この減塩策には実績があります。日本と同じく高齢化が進むイギリスでは、1990年代から国を挙げて減塩に取り組みました。その結果、20年後の2010年には認知症の患者数を22%も減らすことができたのです。
イギリスが取り組んだ減塩策では、1日の塩分摂取量は「6グラム以下」とされました。現在の日本人の塩分摂取量は平均で10グラム前後ですから、6グラムはかなり少ないですね。
このイギリスの例に見るように、認知症は決して予防策のない病気ではありません。脳の老化だから予防できない、遺伝性だから何をしてもムダ、ということはないのです。
食生活に注意することで予防することができます。たとえば、ラーメン1杯に5〜6グラムの塩分が含まれていますから、毎日ラーメンを食べると習慣のある人は要注意ですね。
(ひとくちメモ)◎血管性認知症とは?
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳卒中の後遺症で起きる認知症です。脳の知的な活動を司る部位にがいが残ることで発症すると考えられます。1回目の脳卒中後に約1割の人が、脳卒中を繰り返した人の約3割の人が認知症を発症しています。
■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。
[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。
文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ
初出:まなナビ