介護中に行きたい!【バリアフリー温泉】最新ガイド<3>山形県 かみのやま温泉
高齢の人、介護が必要な人、介護している人も、みんなで行けて、笑顔になれる。そんなすべての人に優しい温泉施設の最新情報を、『バリアフリー温泉で家族旅行』(昭文社)の著者であり温泉エッセイストの山崎まゆみさんが、ご紹介。介護中の人こそ、温泉でくつろいでほしいという山崎さんの思いがこもったシリーズ、必見!
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ご高齢の方や体が不自由な方に向けての優しい温泉旅館「バリアフリー温泉」が増えてきています。この動きは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて加速し、高齢化社会にとっても好機となるはずです。
私自身が、実際に取材に訪れ、ご主人や女将、スタッフに話を聞いた中で、厳選した「バリアフリー温泉」をシリーズでご紹介していきます。
山形県かみのやま温泉一口メモ
かみのやま温泉では、ウォーキングと温泉入浴で健康増進を目的とした「クアオルト」(温泉保養地)を推奨している。温泉街には高低差の異なる8つのウォーキングコースが設定してあり、体力に応じて選べる。毎週日曜の朝は、各旅館のご主人もお客さんと一緒にクアオルトで汗を流す。赤ちゃんからお年寄までも安心して入浴できる刺激の少ない弱アルカリ性。泉質は化粧水のような滑らかさのあるナトリウム・カルシウム塩化物・硫酸塩泉。かみのやま温泉が湧く上山市の公共トイレは全てバリアフリー対応。
かみのやま温泉『有馬館』
「父は温泉に入りたがらなかったのです。入りにくかったんでしょうね」と話してくれたのは、女将の須藤佳子さん。高齢の父が温泉でくつろがなかったことが今も悔やまれるといいます。
大正10年に創業した有馬館は、昭和55年に改築した。この時の有馬館は段差だらけ。実父の言葉を思い出しながら、平成5年に段差を無くす再改築を試みました。
「とはいうものの、どうしたらいいかよくわからなくて、とりあえずスロープや手すりだけでもという感じのバリアフリー化でした」(女将・須藤さん)
そんな女将に強力な助っ人が表れた。
4年程前、「僕も温泉に入れますか~?」とふらりと車椅子で訪ねてきたのが加藤健一さん。加藤さんは病気によって車椅子を使う毎日となり、障害をもった人も普通に観光ができるようにしたいと夢を抱いていた時期でもありました。
この出会いは、女将と加藤さんにとって、お互いの目標に大きく前進するきかっけになったそうです。
「素人考えでスロープを付けたりしていましたが、スロープが急すぎて使いにくいと、加藤さんに指摘していただきました。加藤さんは人柄がいいので、今ではなんでも相談しています」と、嬉しそうに語る女将。
有馬館には、トルコの温泉を彷彿とさせる「パムッカレ」、足腰を心地よく伸ばせる深さ120cmの立ち湯「貴宝石風呂立湯」、そしてバリアフリー対応の「やわらぎ」と3つの貸切風呂があります。
バリアフリールームまでは車椅子のまま、駐車場から玄関、フロントを通り移動できるようになっています。
また、バリアフリールームに宿泊する場合、客室に料理が用意されます。
山形の「ごっつぉう」として出される膳は、おかひじきやうこぎなどの山形の食材が並び、郷土料理を味わえ、また「ごっつぉう」の簡単な説明書も付いており山形についても知ることができます。この他、芋煮や山形牛などもいただけ、上山市でつくられるワインも選べます。
また、乳房の傷跡が残る人に、温泉に入る際、跡を隠すケアの用意もあります。
「どんなお客様にも温泉を楽しんでほしい」という気持ちのこもった有馬館は、加藤氏の協力を得て、日々努力し、進化しています。
有馬館のバリアフリー温泉の手伝いをしている加藤健一さんは、現在、南陽市に拠点を置き、山形への観光やバリアフリー温泉についての相談にのってくれる「山形バリアフリー観光ツアーセンター」の代表をつとめます。足腰が不自由な方にも空の散策をと、パラグライダーを推奨しています。
オススメポイント!
バリアフリーの貸切風呂は、車椅子を利用される方には、特に使いやすい宿です!
データ
「かみのやま温泉 展望の湯 有馬館」
住所:山形県上山市新湯6-5
TEL:023-672-2511
HP:http://www.arimakan.com