【世界の介護】ユマニチュードの本場 古城を利用した仏の老人ホーム
お城らしいシャンデリア、大理石の暖炉はそのままに
「ルモイ城」では、らせん状に伸びる階段や、こうこうと輝くシャンデリア、大理石の暖炉など、城ならではの贅を凝らしたつくりはそのままに、その他の設備は、入居者のニーズや要介護度に合わせて、何度も改修工事を重ねてきた。例えば、以前オレンジを栽培していた温室や馬小屋だった建物は、作業療法室や図書室、講演会などを行うホールに様変わりした。
キリスト教文化圏では欠かせないチャペルは、ホスピス機能も
館内の奥に向かって歩を進めていくと、一番奥の部屋からひんやりとした静寂な空気が流れてきた。そこは、重要文化財に指定された礼拝堂。中に入ってみると、見上げるほどの高い天井の空間に、ステンドグラスから光が差し込んでくる。歴史の重厚感と優美さを兼ね備えた礼拝堂で、人生を振り返る人も少なくないとか。毎週金曜日の午前中には、司祭が招かれて礼拝がとり行われ、大勢の入居者が集う。
「入居者のほとんどが、ここで最期を迎えます。この教会はホスピスの機能も担っており、入居者の心のケアをしてくれる牧師さんの存在はとても重要なのです」
180ある居室の造りはシンプル。別荘として利用する人も
古城を利用した施設の居室はどうなっているのか? 見せてもらうと共有施設に比べ、意外とシンプルな造りだ。全部で180室あり、要介護度や症状に合わせて13のセクションに分けられている。セクションの分け方は、施設オリジナルの約20項目の簡易スケールで点数を付けて行われる。それぞれのセクションには、看護師や介護士、管理栄養士など専門職のスタッフたちが10名ずつ配置され、医療ケアまで対応する。
1か月の利用料は、自立した生活ができる人で約3,000ユーロ(約37万円)、寝たきり状態のような症状が重い人で約3,500ユーロ(約43万2000円)。この中には居室料金の他に、介護費や食事代が含まれる。居室の料金は、16平方メートルの個室で94ユーロ(約1万1600円)、29平方メートルの2人部屋で160ユーロ(約1万9700円)である。家具は持ち込み自由で、約半数の人が内装を自分好みにしつらえている。
入居者の中には、ここを別荘のように利用している人もいるのだとか。
服薬管理はハイテクを利用
さらに、入居者の高齢化に伴い、認知症の入居者が増えてきたので、新設で認知症ユニットを改装中とのこと。これは日本と同様、認知症の人のペースを乱さないように、生活スペースを他の入居者と区別する配慮から。さらに、服薬管理を徹底するため、ハイテクを利用したネットワークシステムを導入した。スタッフが薬袋のバーコードをかざすと、パソコンに入居者の顔写真が表示される。その写真と薬箱に貼り付けている顔写真とを照らし合わせて、スタッフから本人へ確実に薬を渡すというシステムだ。スタッフが薬を飲んだことを確認し、パソコンに記録を入力するまで、画面を閉じることはできない。二重のチェックを設けたため、人為的なミスは起きていないという。