「100円御用聞き」で高齢者を支える!話題の代行サービスって
「こんなサービスが欲しかった」
口コミが広がって、『NEWS ZERO」で又吉直樹も体験するなど、話題となっている『御用聞き』。5分100円からの家事代行サービスだ。
超高齢化社会が進む中、高齢者世帯や単身世帯を中心に「かゆいとろに手が届く」と人気のこの会社。実際どのように利用されているのだろう。この会社の代表・古市盛久さんに、詳しいサービス内容や意気込みをうかがった。
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板橋区・高島平団地を拠点に、電球交換や掃除などちょっとしたお手伝いから粗大ゴミの移動、網戸の張り替えなど、家事代行を細かな時間、料金設定で提供している『御用聞き』。
サービス内容は以下の通り。
●100円家事代行
5分100円メニュー
・電球交換
・電池交換
・あて名書き
・郵便物回収
・びんのフタ開け
・カートリッジ交換
・ウォーターサーバー付け替え
・日常的なお掃除
●たすかるサービス
5分300円~メニュー
・家具、粗大ゴミ移動
・草むしり
・大掃除お手伝い
・ふろの掃除(しっかりめ)
・トイレ掃除(しっかりめ)
・キッチン掃除(しっかりめ)
・ちょっとしたPCサポート
・その他いろいろ
8割がリピート、年間1000件を超える依頼が
他の事業も行っている会社の一事業部ではなく、「5分100円からの家事代行」が専業で、黒字経営の会社だ。福祉的な意味合いをもつ活動も行っているが、公的助成金などは受けていない。
高島平団地に限らず板橋区、練馬区、町田市、清瀬市、新座市の全域、千葉県柏市、神奈川県の港南エリアなどでサービスを行っていて、他のエリアからの依頼に対しても、臨機応変に出張相談にも応じているという。
利用者を高齢者に限っているわけではないが、サービス内容や対象エリアの地域性(高島平団地の場合、住民の高齢化率は43%)から、高齢者世帯や単身高齢者からの依頼が多いそうだ。
「御用聞きの仕事は、ご家庭にお邪魔して行う家事代行です。最初は重い荷物の移動や、電池交換など『5分100円』のサービスを利用して様子を見る方が多くいらっしゃいます。そして8割以上の方がリピートしてくださっていて、サービスを行うスタッフと信頼関係ができるにつれ、サービス内容も多様になるケースが多いです。
現在は年間1000件を超える依頼件数があり、平均単価は3000円を超えています。とはいえ、頼みやすさの垣根は低いまま続けていきたく、5分の御用も喜んでうかがいます」(古市さん、以下「」内同)
お金を払うからこそ、頼みやすい
ちょっと御用を聞き、応えるビジネスを古市さんが始めたのは2010年。練馬区光が丘団地に『団地の縁側』という事務所を設け、コミュニティサロンを開放していたが、その後、高島平団地でのコミュニティスペース立ち上げと事務局運営の依頼があり、2014年に拠点を移した。
以来、高島平団地では、不要の品をリサイクルするフリーマーケットの機能をもつコミュニティスペース『未来箱』や、誰でも参加できる『ちぃちゃん体操』の運営、商店街や自治会のイベント支援などを行いながら、『御用聞き』の存在を地域住民に広報しているという。
身近に家族や親戚などが住んでいても「ちょっとした困りごとを頼むために、わざわざ来てもらうのは申し訳ない」と考えるお年寄りは多いのだそう。ましてや離れた場所に住んでいればなおさらだ。
また、数百円でもお金を払って仕事をしてもらうほうが頼みやすいということもあるようだ。
「今、ご高齢の方は高度経済成長の時代に“消費”をしてきた人たちですから、無料だと利用しにくく、かえって不安なようです。何度か価格を見直してきましたが、価格を上げると注文が増えるんです。『商売としてやっていて、儲ける気がある会社なら安心』と言ってくださる。もし無料だと『この程度のことを人に頼むのは申し訳ないから我慢しよう』となってしまう可能性が高いかもしれない。
小さな困りごとも、私たちが仕事として受け、お代をいただき、『ありがとうございました』と言うのが道理だと思う。それが人生の先輩方の暮らしの役に立ち、尊厳を守ることにもなればと願って働いています」
お客様に”口だけ”でも参加してもらって、”成果”を喜び合う
企業理念として「会話で世の中を豊かにする」を掲げていて、御用を聞く作業中にはたとえ“口だけ”でもお客さんに参加してもらい、生活の困りごとが解決した“成果”を喜び合うように工夫しているという。
「会話の中で、本当に困っていることなどをうかがうこともあります。ご希望や必要により、地域の情報を提供したり、行政や福祉の専門職につないだりできます。また逆に、行政等から私たちにさまざまな依頼や相談もいただきます。
私たちは御用聞きに徹し、お客さんや地域にとって必要な存在になりたい。1000万人の人が気軽に使えて、笑顔になって、使い続けてくれるサービスのしくみをつくることができたら、会社も生き残っていけるかと(笑い)」
福祉や医療、市民が協力して高齢者の見守りの体制づくりに取り組む地域が多い中、『御用聞き』は介護施設や病院などより長く期間、高齢者の生活に寄り添う“生涯ケア”としてもその存在が注目されている。