アルゼンチンタンゴ音楽とダンスの魅力
息をぴったり合わせ、抱き合うように踊るタンゴの魅力
こうしてタンゴの歴史を紐解き、映画でイメージをつかんだ後は、いよいよダンス実技の時間だ。タンゴ初挑戦の筆者もレッスンに加わった。
実技指導は相良先生のほか、FJTA認定講師のグルージャ鶴世先生、アシスタントとしてFJTA公認インストラクターのKEIKO先生も加わり、約15名の受講生に先生が3名もつくという贅沢ぶり。
今日の目標は「体幹とコアを知ろう」だ。まずは基本中の基本である、正しい立ち方からレッスンが始まった。おへその下を意識して立ち、スーッと息を吐いて腹圧を高める。腰をグッと起こすことで背骨がピンと伸び、頭も上に引っ張り上げられるイメージだ。
まずは重心を身体の中央に感じる。次に片足ずつ体重を乗せ、左右に身体を揺らしながら重心の移動を確認する。なるほど。ここまでは初心者でもついて行ける。
次は男女ペアになって、「アブラッソ」と呼ばれる身体の組み方の練習だ。アブラッソは直訳すると「抱擁」。男性は右手を女性の背中に回し、女性は左手を男性の肩に。もう片方の手は肩ぐらいの高さで軽く握り合う。立ち方の基本に則って、正しい重心移動を意識しながら抱擁の形を取れば、2人の軸が1つに重なり、音楽のリズムに乗って美しく踊れる、はずだ。
「肩の力を抜いて、男性は腕じゃなく重心移動で女性をリードしてくださいね。女性は男性のリードに委ねて、2人できれいな軸を感じましょう」
鶴世先生のアドバイスが聞こえてくるが、初心者にとっては至難の業。そもそもアブラッソという抱擁スタイルに、どうしても照れが生じてしまう。パートナーは胸がくっつくほどの至近距離にいるのだ。
「見つめ合うのが恥ずかしければ、視線は外しても構いません」と相良先生。
「でも身体を寄せ合うと息も合わせやすいですよ。せっかくだから、アルゼンチン人になりきってみましょう!」
さらに「バルドッサ」と呼ばれる基本ステップを習い、音楽に合わせて見よう見真似で動いてみる。わずかに余裕が出たところで周りを見回すと、筆者と同じように苦戦している人もいれば、なめらかにステップを踏んでいる人もいる。聞けば受講3年目だというその女性は、「最初はぎこちなかったけど、ようやく少しコツがつかめてきたんですよ」とのこと。
1回の体験レッスンでは、とても「ダンス」と呼べる代物にはならない。だが、自由自在にステップを踏めれば、さぞ楽しいに違いない! その実感だけは確かな手応えとして残った。
〔受講生の今日イチ〕老若男女を問わず、受講生は一様に若々しい。タンゴの賜物か!?
取材講座データ:「アルゼンチンタンゴ音楽とダンスの魅力」 鶴見大学生涯学習センター 2017年春期
文/小島和子 写真/@Scott Griessel, @300dpi / fotolia、小島和子(講座写真)
初出:まなナビ