ダブルケアが社会問題に!老後に親子破綻するシニアが続出
認知症の親のケア、いつまでもお金がかかる子供の世話など、今、注目されている”ダブルケア”で破綻するシニアが増えているという。
* * *
写真/アフロ親のために介護離職は「年間10万人超」、親と同居する壮年失業者は「9.1%に急増中」、高くなるばかりの「生活保護受給のハードル」──これはもう自分だけで解決できる状況ではない。「認知症の親」「介護離職でローン地獄」「パラサイト息子&娘」、そして「孫リスク」。生活保護も受けられずに「四世代下流転落」は誰にでも起こり得る。
老後破産や下流老人に陥る危険性には、自分ではどうすることもできない要因がある。その最大のリスクが、「親と子」である。親の介護と子供の世話を同時にするダブルショックで“破綻”に追い込まれるシニア世代が続出している。
「サザエさん一家」は幻想
「親と子」の問題から「老後破産」に焦点を当てて話題を呼んだのがNHKスペシャル取材班の『老後親子破産』だ。
一昨年8月に放送されたNHKスペシャル『親子共倒れを防げ』をベースに書籍化したものだ。
「放送直後から『明日をどう生きるか考えさせられた』『どうすれば防げるかさらに伝えてほしい』といった反応が多くの視聴者から寄せられた」(NHK広報局)
「発売1週間で重版がかかりました。子育て中の40代男性から、『この先、何が起こるかわからない怖さを感じた』とのハガキをいただきました」(出版元・講談社の担当編集者)
作中では高齢の親世代の介護や、収入が不安定な子供世代によるパラサイト同居により、シニア世代に危機が訪れると警鐘を鳴らしている。
同書ではそれぞれ別々のケースとして紹介される「親と子」の問題だが、「最も怖いのはそれが同時に襲ってくること」と指摘するのは、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏だ。
「高齢の親の介護と困窮する子供世代のケアが重なる『ダブルケア』に直面する人が50~60代を中心に増えています。親と子の板挟みになって心身ともに疲弊することが多く、最悪の場合は三世代揃って“共倒れ”になる危機が迫っているのです」
安倍政権は「一億総活躍社会」の実現を目指し、三世代が同居する住宅の建設を支援する方針を打ち出している。同居に必要な住居の改修を行なえば所得税や相続税を減額し、子を育てる親がその親世代と一緒に暮らすことを積極的に推奨している。
まるでサザエさん一家のような「幸せな家族のかたち」だが、現実はそんなに甘くない。結城教授が指摘するように、三世代同居は「老後親子破綻」の大きなリスクを孕んでいる。