車いすと介護ベッドの選び方と事故の予防【福祉用具相談員が解説】<第3回>|プロが教える在宅介護のヒント
使い始めに多発する電動車いすや介護ベッドの事故防ぐ為に
福祉用具は、日々進化していて、便利なものがたくさん開発されています。電動車いすや介護ベッドのご家庭での利用も、珍しくはなくなりました。
しかし、これらを利用する場合は「使用上の注意」に従い、安全に配慮する必要があります。
福祉用具メーカーは事故などを予測して十二分の対策をとっていると感じますが、日用品とは違い、あまり扱った経験のない物であるため、誤使用や不注意などによって事故が発生しているようです。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の発表によると、2011〜2015年に電動車いす利用時の事故が28件(うち死亡または重症21件)、介護ベッドでの事故が53件(うち死亡または重症36件)起きています。
電動車いすの事故の約4割、介護ベッドの事故の約3割が「使い始めてから1年未満」に起きていますので、とくに使い始めの時期には事故予防を意識して、次のポイントにご注意ください。
■電動車いすの事故を防ぐために
電動車いすの事故の主な原因は「利用する人が運転に不慣れであったこと」(NITE発表)。
死亡事故の多くは、走行中に路肩などから河川や用水路、斜面などに転落して起きています。道幅の狭い道路や、ガードレールのない道路を走行する場合、また、道を譲ろうとするときなど、路肩に寄り過ぎないように注意を。
■介護ベッドの事故を防ぐために
介護ベッドの事故の主な原因は「隙間防止措置をしていなかったこと」(NITE発表)。
サイドレール、ベッド用グリップ等の隙間に体の一部を挟む事故が多く、頭部、頸部を挟んだ事故は「死亡」に至ることも。
サイドレールは、1つのベッドに何本か同時に使うことが多いですが、1本ずつ定位置が決まっていて、他の位置で使うと無駄な隙間ができる原因になることがあります。
ベッド導入時には定位置に設置されていたのに、何かの折に外し、定位置が分からなくなってしまうことがあります。サイドレールそれぞれにナンバーをつけ、ベッドサイドに配置図を貼っておくと安全です。
どうしてもできてしまう隙間は、カバーやスペーサー(隙間解消器具)で埋めておきましょう。
教えてくれた人
山上智史さん
株式会社K-WORKER福祉用具貸与事業所(東京、新宿区)部長。区の福祉用具専門相談員の職能団体の代表も務めるほか、地域で連携している医療・介護の専門職など有志と共に福祉用具開発にもチャレンジしている。ホームセンター勤務時に福祉用具を取り扱ったことがきっかけで、福祉用具専門相談員となるときには「利用する人がいる現場を知りたい」と介護ヘルパーとして1年半働いた。「物好きで、販売の仕事も好き。物が人を笑顔にし、はつらつとさせる可能性は福祉用具を扱うことで知ることができた」と話す。2016年5月には一般社団法人地域医療フォーラム主催「MEDプレゼン2016 在宅医療」に登壇し、不良環境でのケアの問題と環境づくりの必要性を訴えた。
撮影/下重 修 取材・文/下平貴子