車いすと介護ベッドの選び方と事故の予防【福祉用具相談員が解説】<第3回>|プロが教える在宅介護のヒント
事故を予防! 車いすと介護ベッド、利用のポイント
介護の専門家である「福祉用具専門相談員」の山上智史さんは、介護ヘルパーの経験を活かした独自の提案を行い、今、医療・介護関係者から注目されている。
その山上さんが部長を務める『K-WORKER福祉用具貸与事業所』では、全スタッフが車いすに乗車して働いているという。仕事をしながら、長時間、車いすで過ごすことで、使用感をつかみ、利用者への提案、調整に役立てたいという思いからだ。
専門家に在宅介護のヒントを教えてもらうシリーズ、今回は、車いすを利用するとき注意したいポイントと、高齢者の死亡や重症事故も起きている電動車いすと介護ベッドの事故予防について聞いた。
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車いすは必ず試乗して。レンタルがオススメ
要介護認定2以上になると、介護保険で車いすを借りることができます。多くの方は、車いすを利用するのは初めてで、カタログを見せられても何を選んだらいいか、分からないとおっしゃいます。
福祉用具専門相談員が、使用目的や環境を考慮して最適な機種をご提案しますが、次のようなポイントで選び、活用しましょう。
(1)車いすで何をするかをイメージする
車いすに乗車して何をすることが多いかイメージして選びます。
■主に要介護者自身が操作して、外出や食事など活動を目的とする場合は「能動座位」がとれるタイプを選びましょう。
■日常、車いすで過ごす時間が長く、くつろぐことを目的とする場合は「安楽座位」がとれるタイプを選びましょう。
各部位の調整も「能動座位」か「安楽座位」かに合わせてもらいましょう。
違う目的で利用するとき(能動座位に調整された車いすでリラックスしたい場合など)はクッションを使って微調整します。
前回で紹介したラクな姿勢を支えるクッションなどを利用すると便利です。
座面の高さ、奥行き、背の張り、肘当ての位置、フットサポートの位置などは調整できます。
(2)背の張り具合をチェックする
車いすを選ぶときは、必ず試乗しましょう。
多種の車いすに試乗し、体格の違う人が乗り換えるなどもして、使用感と調整ポイントを確かめている『K-WORKER』スタッフが、車いすのチェックポイントとして1番に上げるのは「背の張り具合」です。
もたれたときの感触で違和感のないものを選ぶと、乗車時の疲労が少ないはずです。「背の張り具合」が調整できるタイプも多数あります。
別の理由で、調整箇所の少ない車いすを選ぶ場合には、併行してクッションなどを選び、背もたれを工夫することをオススメします。
(3)レンタルで、変化に合わせて乗り換えを
車いすを使用する目的、利用する人の体の状態、介助者の事情などは変化するので、現状に合ったものをレンタルで利用し、変化に応じて、再調整してもらうか、別の車いすに乗り換えましょう。
「気に入ったので購入したい」と言われることもありますが、人が車いすに合わせて使うことになる可能性があるので、レンタルをオススメします。
福祉用具は、その人に合った物を利用して、生活の質を高めていただきたいです。