快適介護に備える「環境作り」を考える 介護はいつから?【福祉用具専門相談が解説】<第1回> プロが教える在宅介護のヒント
「環境や用具に人が合わせる」のはNGです。
特に、レンタルの福祉用具を選ぶ場合は、「長持ちする」、「長い目でみる」のではなく、「今、必要な物を選び、随時見直す」というのが基本です。
提案された福祉用具は、まず、実際に使って動いてみて、その使用感を福祉用具専門相談員に伝え、調整してもらいましょう。
介護認定を受けた方は、介護保険で福祉用具をレンタル利用できます。
「取り外し可能型手すり」、「置き型のスロープ」、「歩行器」、「歩行補助杖」などがあり、手軽に“今、必要な物”を選びやすく、取り替えやすいというメリットがあります。
また、ポータブルトイレや入浴補助用具など直接肌に触れる用具の購入や住宅改修費用なども介護保険で補助がありますが、これらは取り替えしづらいので、必要な物をよく検討し、徐々に整えていく方針にするのがいいでしょう。
なお、介護保険で福祉用具や住宅改修のサービスを受けるには、ケアプランにその旨が盛り込まれる必要があり、ケアマネジャーを通じて福祉用具専門相談員に相談することになります。レンタル品を取り替えたいときも、ケアマネジャーにプランを変更してもらわなければいけないので、注意してください。
先手を打つのが賢明ですが、過剰な備えは、機能低下を招く場合もあり、本末転倒となってしまいます。
自分で歩くことができる要介護1以下の人が「車いすを使いたい」と希望しても介護保険では原則利用できません。介護保険法では身体状態像として「日常的に歩行が困難であるか」という項目に「できる」とチェックされる人を要介護1以下と想定しているからです。
しかし、介護に関わる各サービスから意見を集め、車いすの必要性が担当者会議で確認された場合には保険利用が可能な場合もあるので、ケアマネジャーに相談してください。
足元が不安になってきたら、まずは、「歩きやすい靴」や「安全を支える杖」などを利用して、安心して歩ける場所を歩き、歩行機能の維持・向上を考えましょう。
オススメの歩きやすい靴、杖は?
■靴
高齢者は脚力、反射反応や柔軟性の低下、むくみ、外反母趾、O脚などの問題によって、靴を履くことが不安になったり、歩行が困難になることがあります。
そうした点をカバーするため、軽量化され、つまずきにくい工夫が施された靴や室内履き、リハビリ用シューズなどが多数発売されています。
福祉用具貸与事業所経由で取り寄せることもできますが、介護保険利用はできず自費扱いになります。
【商品例】
「快歩主義 L112K」■歩行補助杖
「歩行補助杖」は要支援以上が介護保険でレンタル利用できる福祉用具の一つです。レンタルできる杖は多点杖と呼ばれる四点杖・三点杖や松葉杖などです。一本杖はレンタル対象外となります。
利用の仕方も一本杖では不安定だから多点杖が良いというわけでなく、歩き方などで合う・合わないがあります。杖の種類も多種多様なタイプがあるので、利用する場合は、適切な物を福祉用具専門相談員にアドバイスしてもらうといいでしょう。レンタル対象外ではありますが、ユニークでオシャレな傘にもなる杖もあります。
【商品例】
「日本製 UVION デュエットウォーカー」(東京丸惣)教えてくれた人
山上智史さん
株式会社K-WORKER福祉用具貸与事業所(東京、新宿区)部長。区の福祉用具専門相談員の職能団体の代表も務めるほか、地域で連携している医療・介護の専門職など有志と共に福祉用具開発にもチャレンジしている。ホームセンター勤務時に福祉用具を取り扱ったことがきっかけで、福祉用具専門相談員となるときには「利用する人がいる現場を知りたい」と介護ヘルパーとして1年半働いた。「物好きで、販売の仕事も好き。物が人を笑顔にし、はつらつとさせる可能性は福祉用具を扱うことで知ることができた」と話す。2016年5月には一般社団法人地域医療フォーラム主催「MEDプレゼン2016 在宅医療」に登壇し、不良環境でのケアの問題と環境づくりの必要性を訴えた。
撮影/下重 修 取材・文/下平貴子