終の棲家としての老人ホーム<2>全国の看取りが凄い施設
老人ホームで最期を迎える人が増える中、「看取り」の質は、施設によって大きく異なっているという。
高齢者施設の専門家(※注)の指南で、本当に「看取り」をしてくれる施設の見極め方には、以下9つのチェックポイントがあることを第1回では紹介した。
・医療機関と一体化しているか
・2人に1人を看取っているか
・車椅子を手入れしているか
・食事や入浴が自由にできるか
・夜間におむつを換えてくれるか
・室温を入居者に合わせてくれるか
・最期に家族が立ち会えるか
・看取りケアプランがあるか
・死後の面倒まで見てくれるか
今回は、これらの条件を満たす施設を、全国から厳選した。入居から看取り、そして、死後に至るまで安心のサポートが受けられる「幸せに死ねる老人ホーム」のサービスを紹介する。
※注 専門家は以下の2名
田村明孝氏:「タムラプランニング&オペレーティング」代表
佐藤恒伯氏:介護情報誌『あいらいふ』編集長
* * *
ひだまりガーデン南町田(東京都町田市)
「死ぬための準備」に向き合う業界タブーの「パンフレット」
在宅医療を専門とし、年間180人もの看取り実績のある医療法人・はなまる会が、昨年、「看取りに注力した」施設を開業した。 看護師が24時間常駐し、入居者の容体急変時には昼夜問わず医師がすぐに駆けつける。
田村氏が推薦理由を語る。
「入居後に渡される『おわかれパンフレット』は、入居者の状態の変化と、その時々の家族の対応を段階的に示した冊子です。これまで『死』を明文化することがタブー視されてきた高齢者施設では珍しい試みです。この冊子のおかげで、入居者も家族も死を身近なものとして向き合う準備ができます」
冊子には〈食欲低下〉、〈喉の奥がゼロゼロいう〉、〈無呼吸が30秒ほど起こる〉など、10段階で状態変化が記されている。
安らかな死を迎えるための「緩和ケア」として、薬物療法や音楽療法にも力を入れている。
同施設の大谷博・常務理事が言う。
「居室内に電子ピアノを持ち込み、音楽セラピストが演奏や歌う音楽療法を取り入れています。人間の五感で最後まで衰えにくいのは、聴覚だと言われていて、音楽を聴くことで精神的な安定を得られます。欧米では広く知られた緩和ケアで、入居者からの評判も上々です」
要介護認定を受けていない人も入居できる。老人ホームの枠を超えた足湯などのサービスのほか、食事も楽しめるバーラウンジでは、かつて有名ホテルで腕を振るったシェフによる本格的な鉄板焼きやオリジナルカクテルも味わえる。
フェリエドゥ横浜鴨居(神奈川県横浜市保土ヶ谷区)
専門医の頻繁な往診で高い看取り率を実現
看取りをする上で重要な役割を担う看護師。同施設の主任看護師は、これまで200人以上を看取ってきた大ベテランで、提携先の訪問医師とともに看取りの際には、昼夜問わず柔軟に対応する。宮本こま子・施設長が言う。
「当施設の看取り率は、ほぼ100%。その理由は専門医を配し、入居者の病状に細かく対応しているからだと思います。精神科医や泌尿器科医など専門医が定期的に訪問診療する施設は珍しい」
佐藤氏もこう言う。
「これまで何年もこの施設に入居紹介をしていますが、クレームが届いたことはありません。月に1度、職員から入居者家族に送られる報告書には、手書きで細かく入居者の様子が綴られていて、家族も施設に信頼を寄せています」