【69歳、これからの生き方】ダンサーになりたい!『マツケンサンバ』のダンサーに憧れ続けるオバ記者が若手女優たちの舞台と盆踊りで直面した「壁」
幼少期から「ダンサー」に憧れ続けてきたというオバ記者ことライターの野原広子氏(69歳)。ダンスミュージカルに心を揺さぶられ、翌日には神田明神の盆踊りへ繰り出すも、体力と振り付けの壁に直面する。母との思い出や日々の葛藤を交えながら、69歳の夏にオバ記者が辿りついた「これからの自分の舞台」への思いを綴る。
バレリーナに憧れた小学生時代
ダンサーになりたい! ああ、言っちゃった。実は私、69歳の今までずっと心の奥底の「やりたいことリスト」から消えない願いがこれなのよね。
最初の記憶は小学低学年の時に近くの保育園で始まったバレエ教室だ。同じクラスの子が白いタイツをはいて手足を動かしているのを見て母親に「私も習いたい」と言うと、まあ、無学でガサツな女は言うことが違うよ。「バカ言ってんじゃね! 大勢の前で足上げて何が面白れーんだ」だって。それでバレリーナの道はあっけなく消えたけれど、私が育った1960年代は歌謡番組の全盛期。四角いブラウン管の中は夢の世界だ。小学生の私はポカンと口を開けて見ていたに違いない。
もちろん視線の先はスタンドマイクで歌う歌手だったんだけどね。いつしか歌手の後ろで踊るバックダンサーから目が離せなくなったの。私の故郷である茨城の地元にも歌のうまい人はいる。でもダンサーはいなかった。無言で手足を動かす人たちってなんでこんなにカッコいいのよ!と思ったんだね。
それからだ。スクールメイツになりたい、ジャズダンサーになりたいと折々と思ってきた。映画『フラッシュダンス』『サタデー・ナイト・フィーバー』など観た後は地上から5cmくらい足が上がって歩いていた。そして『マツケンサンバ』の腰元ダンサーズには今でもなりたいと思っている。やれるかな、いや、いくらなんでももう無理でしょ。キラキラの動画を見ながらそんなことを思っていたんだけどね。
若き女優たちの圧倒的パフォーマンスに「オバちゃんも頑張ろ!」
もうそんなバカなことを考えるのはやめやめ、というショッキングなことがあったの。ま、最初からナイ寄りのナイでしょという声は無視するとして、ことの発端はライター仲間のNさんから「観劇、行きませんか?」と誘われたこと。
ここのところ、人の誘いは断らないキャンペーン中の私は、問答無用で高円寺の「座・高円寺2」というミニ劇場へ向かったわよ。そこで観た舞台『シン・ダンレボ』は、全編が踊りのミュージカルなんだけどね。最初は微妙に身体を揺らして、舞台上の女優さんと一緒に踊っているつもりになったけれど、途中で振りの数の多さにおいおいおい!これ、彼女らはどうやって覚えたのよと恐ろしくなったのよ。
ほとんどが群舞だから、ほんのちょっと誰かの動きが遅れただけでリズムが壊れる。それが小さい劇場では観客にまるわかりだ。その破綻がまったくないって、もう、女優さんたち、どんだけ練習したのよ。そう思って観ていたら胸が熱くなってね。いつの間にか、よし、オバちゃんはオバちゃんの舞台でがんばろっと!と、20代の娘たちに励まされちゃった。
舞台が終わっても興奮が冷めず、主役の渡邉このみちゃんとツーショットをお願いしちゃった。
神田明神の盆踊りで「踊り渋滞」と体力不足の現実
で、返す刀で、と言うのもヘンだけど、その翌日、私はご近所の神田明神の盆踊りに参加したの。私が完璧に踊れる盆踊りは、『炭坑節』と、ずいぶん前にネットを見て特訓した『ダンシング・ヒーロー』のみ。『東京音頭』もイケそうな気がするけど、調子に乗っていると間違えるんだわ。
そういえば寝たきりになった母ちゃんに『東京音頭』がむずかしいと言ったら「『東京音頭』なんちゃ簡単だっぺな」と言って私に手踊りをしてみせたっけなぁ。
それにしても神田明神の境内は人、人、人で踊り渋滞よ。それはそれで活気があっていいかもだけど、途中で息切れしちゃってね。最後の踊りを待たずに帰ってきちゃった。
「ダンスの才能はなかった」と観念した69歳の夏
そして帰り道、思ったの。私が長い間、人が踊っているのを見ると出来そうな気になっていたのは、ただの気の迷いでね。歌でもそう。一度聞けばすぐに歌える人がいるの。ダンスも振り付けを覚えるのに苦労しない人がいるの。つまり、天性だね。その才がなかったと、もうそろそろ観念した方がよくないか?と、そんなことを思った69歳の夏でした。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。
