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《ホームヘルパーの資格も取得》大仁田厚が語る“本当の親父”だった義父の介護 「介護は愛して育ててくれた恩返しの気持ちがないと続かない」電流爆破などプロレスを通じて培った「あきらめない力」も活きた

「有刺鉄線電流爆破デスマッチ」などの過激なスタイルでプロレス界に革命を起こした、プロレスラーの大仁田厚さん(68歳)。現在もリングに上がり続ける一方で、ホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を持ち、介護への見識を持つことでも知られている。亡くなる約7年前から始まった義理の父親の介護経験、そしてレスラーとしての生き様がどのように介護に結びついたのかを聞いた。【全3回の第1回】

血のつながりを超えて愛してくれた義父への恩返し

――大仁田さんが小学3年の時に父親の大仁田平八郎さんと母親の巾江さんが離婚、小学5年生のときに巾江さんは松原茂二さんと再婚しました。再婚当時、大仁田さんは実父の元にいらっしゃたそうですが、義父の松原さんとの関係はどうでしたか?

大仁田さん:ぼくが15歳で全日本プロレスの寮に入ったこともあり、関係が構築されたのは大人になってからですが、とても良好でした。連れ子にもかかわらず、義父はぼくの将来やお袋のことを一生懸命に考えてくれました。プロレス団体・FMWをやっていたとき、経理を手伝ってもらったこともあります。やんちゃをして車を壁にぶつけてボロボロにしたときも、普通なら怒るであろうところ「体は大丈夫か?」と車のことは流してくれるような、寛大で優しい人でした。

――お義父さまの介護は、いつごろからどのように始まったのでしょうか?

大仁田さん:2008年ごろからです。一緒に散歩へ連れて行ったりしていたのですが、まずは足が弱くなってきて、少しずつ認知症の症状も進行していきました。それから2年ほど自宅で介護を続けて、最後は全身に麻痺が広がり、食事も喉を通らなくなってしまったので、病院に入院することになりました。

――ご家族で介護を分担されていたそうですが、どのような体制だったのですか?

大仁田さん:うちの家族は、お袋を中心にひとつにまとまっているんです。ぼくと長女、次女の3人がお袋の連れ子で、義父とお袋の間に生まれた弟が18歳年下の松原孝明。彼は今、大学で教授をやっています。きょうだいが4人いるので、みんなで予定を合わせて交代で義父のケアをしていました。

 ぼくも妹たちも、実の父親以上に、義父を「本当の親父」だと思っています。だからこそ、家族に対して一生懸命だった義父を、みんなで看取ろうという意識が自然とありました。家族介護は「しなきゃいけないからする」という義務感ではなく、その人がどれだけ自分たちを愛して育ててくれたか、そういう恩返しの気持ちがないと、なかなか続かないと思います。

人間は動かさないとダメになる。「外に連れ出す係」として車いすを押した日々

――ご自宅で介護をされていたころは、どのようなサポートをされていたのですか?

大仁田さん:当時、ぼくは千葉の浦安に住んでいたのですが、五反田に小さなビルを買って、義父たちを下の階に住まわせて、ぼくが上の階に住むようにしました。だから、いつでも駆けつけられる距離だったんです。

 ぼくの介護の役割は、主に一緒に散歩をすることでした。おむつを替えるような身体介助はほとんどなく、手を取りながら五反田の町を歩いたり、車いすに乗せて連れ回したりしていました。

 人間って、年を取ったからといって家に閉じこもって体を動かさないと、筋肉がどんどん萎縮してダメになっていくんです。デイサービスなどの介護施設を運営していたときも、高齢者の方に積極的に運動してもらっていました。体を動かしている人の方が長生きしますからね。

――プロレスラーとして培ってきた体力や精神力は、介護にどう活きましたか?

大仁田さん:レスラーの精神として「あきらめちゃいけない」というのがあるんです。あきらめた時点で終わりじゃないですか。負けちゃいけない、どうにかするしかないんです。介護の世界も同じで、どうやればこの人が喜ぶか、どうやれば元気になるか、あきらめずにノウハウを見つけていくしかない。

 ぼくは電流爆破で大火傷を負っても、年齢を重ねて治りが遅くなっても、乗り越えてきました。そういう「生き抜く力」を若いときから身につけてきた経験が、介護に向き合う精神的な強さにつながったと思います。

お墓には実父も含めて家族全員一緒に

――お義父さまが入院されたときは、どのような状態だったのでしょうか?

大仁田さん:口から食べ物を食べられなくなったので、点滴だけで栄養を摂る状態になりました。できれば自宅で看取りたかったけれど、病院に預けるしかありませんでした。病院に入るとぼくらの手から離れてしまうので、見舞いに行って「具合はどうだ?」と聞くことしかできず、もどかしさもありましたね。

 でも、親父は強かった。点滴だけで3か月も生き抜いたんですから。食糧難の戦中・戦後の時代を生き抜いてきた昭和一桁の世代の強さを感じました。義父は2013年、84歳で亡くなったのですが、家族みんなで病院に駆けつけて、目を閉じる瞬間を看取ることができました。老衰のような穏やかな最期で、心から「よく頑張ったな」と思いました。

――血のつながりを超えた絆は、お義父様が亡くなった後も続いているそうですね。

大仁田さん:実は、ぼくが家族のためにお墓を買って準備していたんですが、そこにはぼくの実父も入っているんです。お袋が最初に結婚した相手ですね。義父に、実父も一緒の墓に入れていいかと聞いたところ、「いいよ」と許してくれました。普通なら嫌がるかもしれませんが、義父は本当に寛大な人でした。今は実の父親と義理の父親、そして将来はお袋やぼくらきょうだいも、みんな同じお墓に入る予定です。

――大仁田さんはホームヘルパーの資格もお持ちですが、実習などで大変だったことはありますか?

大仁田さん:ヘルパーの資格を取ろうと思ったのは、「いい加減だろう」「凶暴そう」というレスラーへの偏見を取り除きたかったからです。実習では人様の家に行って、ご飯を作ったり、シーツやおむつを替えたりしました。ぼくは体が大きくて力もあるから、誰も抱き上げられないような方を介助するのに重宝されました。ただ、それが大変だったかというと、そんなことはありません。

――介護において一番大切なことは何だとお考えですか?

大仁田さん:ただ表面的な介助をこなしたり、運動させたりするだけではなく、精神的な部分に重きを置くことです。相手が望むものを理解し、それに応えるという対話が必要なんです。忙しいとつい流れ作業になりがちですが、「この人はちゃんと自分のことを見てくれているんだ」と感じないと人は心を開きません。義父も、ぼくら連れ子のことを、いつも自然体でちゃんと見つめてくれていましたからね。

◆プロレスラー・大仁田厚

おおにた・あつし/1957年10月25日、長崎県生まれ。15歳で全日本プロレスに入門し、ジャイアント馬場の付き人を経て海外で活躍。度重なるけがによる引退と復帰を繰り返し、1989年にプロレス団体「FMW」を設立。有刺鉄線電流爆破デスマッチを考案し、一世を風靡した。40歳で高校へ進学し、明治大学を卒業。2001年から2007年まで参議院議員を務める。義父の介護を機にホームヘルパー2級を取得。現在も「FMWE」のリングに上がり続けている。

撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香

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