腰や肩、関節の痛みは「病院×整体」で治す あなたの痛みに向き合う施設の選び方「部位別おすすめストレッチ」もご紹介
人生100年といわれる時代。平均寿命も、仕事をリタイアする年齢も延びているからこそ、「健康寿命」がますます重要視されている。そんな中、予期せず訪れる腰や肩、膝の痛みや慢性的な痛みにどう対処したらよいのだろうか。痛みのプロに聞いた。
教えてくれた人
新田真吾さん/あんしんクリニック川西院長
田中宏さん/天竺整骨院院長、柔道整復師
三木英之さん/とつか西口整形外科院長
大木麻衣さん/理学療法士
本田洋三さん/鍼灸師で柔道整復師
木原洋美さん/医療ジャーナリスト
病院と整体の「合わせ技」を
生活習慣を整え、セルフケアを施しても痛みが改善されない場合は、専門家の力を借りるべし。人工関節手術の名医として患者を数多く治癒に導いてきた、あんしんクリニック川西院長の新田真吾さんは、最初に原因を特定することが肝要だと話す。
「散見されるのは、病院に行くのを億劫がって民間療法に通いつめるパターン。マッサージなど筋肉をほぐして一時的に痛みが改善されたとしても、根本的な解決にはなりません。実際、レントゲンを撮ったら骨が壊死していたという患者もいました。重病を見逃さないためにも、早期の段階に病院で診察を受けることは必須です」
病院で原因が特定できたら、整骨院や鍼灸院との“合わせ技”で治療を進めるのが根治への近道だと天竺整骨院院長で柔道整復師の田中宏さんは言う。
「痛みやしびれが強くて眠れない場合などは、病院で注射を打ったり処方された薬をのんだりして痛みを抑えつつ、整体や鍼灸で体を整えていくのが近道です。体の状態がよくなれば注射や薬の量が減っていき、最終的には病院も整体も卒業することができます」
複数の施設に並行して通うことが負担になる場合、病院で体を整えるための指導を受けることも可能だ。
「病院によっては理学療法士がストレッチなどの運動療法や、日常生活についてのアドバイスを行っています。ネットの動画などを見ながら家で運動するのも悪くありませんが、自己流は悪化するリスクもある。一度、関節疾患に精通した理学療法士の指導を受けることを推奨します」(新田さん)
スポーツ医学に詳しいとつか西口整形外科院長の三木英之さんも、頼りにすべきは理学療法士だと声を揃える。
「整形外科で行う治療のメインは医師が診療した後のリハビリです。そのため、医師の役割は1~2割で、残りは理学療法士が担う。関節痛の原因と大きく関係してくるのは、肥満などの生活習慣と筋力不足です。理学療法士から運動療法や生活指導を受けることで、大抵の関節痛はよくなります」
理学療法士からの評価に基づいた内容のリハビリメニューを自宅でも取り組めば、根治はさらに近くなる。
三木さんの病院でリハビリを担当する理学療法士、大木麻衣さんは「まずは簡単なストレッチから、ぜひやってみてほしい」と話す。
「トレーニングをしようとしても硬くなった筋肉で行っても意味がない。最悪の場合、さらに痛みが生じます。まずはストレッチで筋肉を適度に緩めてからトレーニングを行えば、痛みは大きく緩和され、再発予防にもつながります」(大木さん・以下同)
まずチャレンジすべきは膝ストレッチ。
「布団の上で膝を伸ばして座り、片方の足裏にタオルを渡して、両手で引っ張りながらゆっくりと仰向けの姿勢を取ります。膝をまっすぐ伸ばすことを意識して、そのままの姿勢を呼吸しながら15秒間キープしましょう。これを5セット行ってください」
膝をしっかり伸ばした後は、腰へのアプローチを。
「四つん這いの姿勢から片足を90度前に出して、すねが真横に向くようにします。その体勢から、前に出した足側のお尻の筋肉を伸ばすことを意識して、前腕をつけます。この姿勢で10秒間、呼吸しながら伸ばしましょう。左右それぞれ、1日5回ずつを目指して取り組んでほしいです。姿勢が悪く猫背の人は、お尻の裏と太ももの筋肉がこわばることで痛みが生じやすい。無理のない範囲でストレッチすることで腰痛が緩和されるケースが多いです」
理学療法士が教える膝・腰の痛み対策ストレッチ
【2】膝をまっすぐ伸ばすことを意識しつつ、約15秒間、そのままの姿勢をキープする。
《腰ストレッチ》
【1】手を肩幅ほどに、足もそれに合わせてやや大きめに開きながら四つん這いのポーズを取る。
【2】片足を90度前に出し、すねが真横に向くように倒していく。
【3】お尻の筋肉を伸ばすことを意識しながら前腕をついて、呼吸しながらその姿勢を10秒間維持。
いい整体師は「未来」を語る
痛みの源を知って、根治を目指すにあたり、よき伴走者となる施設やスタッフはどう探すべきか、鍼灸師で柔道整復師の本田洋三さんはこうアドバイスする。
「体の状態は日々変化していくものです。だから、“流れ作業”のように、毎回同じ施術ばかりする施設は避けた方がいい。また、いい整骨院や鍼灸院は、“痛みの原因が何で、どんなことをするとよくなり、将来的にどう改善するか”などと、生活指導や今後の予定を教えてくれます」
医療ジャーナリストの木原洋美さんは、鍼治療の場合、「トリガーポイント療法」を取り入れているところがいいと話す。
「痛みを引き起こしている筋肉の中の凝った部分(トリガーポイント)を特定し、鍼を打って痛みを取り除く治療法です。トリガーポイントは痛みを感じる部分から離れたところにもあります。とりわけ近年注目を集めており、取り入れている病院もあります」
資格を持っていることもひとつの目安になる。
「国家資格の有無も見極めるポイント。柔道整復師、はり師、きゅう師は国家資格ですが、そのほかの民間資格は簡単に取れるものもあり、腕にバラつきがあるので注意が必要です。また、“すべて骨盤のゆがみが原因です”などと、原因を1つに限定しようとするところも、避けた方がいい。症状を正しく判断できない恐れがあります」(田中さん)
あらゆる手を尽くしても痛みが取れず、日常生活にも支障が出るようになれば、いよいよ手術を検討することも必要だ。膝や股関節の人工関節置換術を受ける際は、特に病院選びを慎重に行うべし。ひとつの目安は症例数や手術件数。
「ただ、手術となる場合、症例数を増やしたくて技術が不充分であるにもかかわらず手術を行う病院があるのも事実。ネットだけではなく、実際に手術を受けた知人からの情報も参考にしてほしい。また、手術を希望する患者であっても、手術しない選択肢も提案してくれる病院は信頼できます。もし不安に思うことがあれば、遠慮せずにセカンドオピニオンをとってください。術後も定期的に病院に通う必要があるため、手術を含めて同じ医師が担当できる病院が理想です」(新田さん)
いまからでも遅くはない。痛みと向き合い、対策を講じることが、豊かな老後につながる。
病院・整体・整骨・鍼灸はこう選ぶ!
【病院】
リウマチなど、痛みの原因となる疾患やけがの有無を調べるため、「整形外科」を最初に受診。疾患やけがが原因の痛みは、疾患やけがから回復すれば治る。「痛み外来」や「痛みセンター」では、「痛みを取る」に特化した集学的治療を受けることができる。理学療法士が常在し、ストレッチや体の動かし方を指導してくれる施設も。
急性痛と慢性痛とで、受診すべき診療科は変わる。レントゲン検査や血液検査でも「異常なし」の場合は慢性痛であることが多いので「痛み外来」へ。鎮痛薬を継続して処方されたり、手術や先進医療をすすめられた場合は、セカンドオピニオンをとること。
【整骨院】
開業には柔道整復師の国家資格が必要。けがの治療だけでなく、けがをしにくい体の使い方、ケアの仕方にも精通している。けがによる打撲や脱臼など突発的な痛みを取る治療を得意とする。保険適用になるのは骨折、挫傷、脱臼、打撲、捻挫の症状改善のための施術であり、骨折と脱臼は緊急の場合をのぞき、医師の同意が必要になる。
近年はスポーツトレーナーの資格を有し、プロアスリートから部活、一般人の運動指導まで幅広く請け負っている柔道整復師が増えている。痛みを和らげるテーピングは技量の差があらわれやすいのでお願いしてみるのも手。関節痛にならない体の使い方など、理論的に説明してくれる人を選びたい。
【鍼灸院】
開業にははり師・きゅう師の国家資格が必要。鍼やもぐさを使って、体の内側から痛みにアプローチする。神経痛や四十肩、骨折やむち打ちの後遺症などに適している。医師の同意など一定の基準を満たすと保険適用になる。
鍼灸治療は痛みだけでなく、美容から不妊治療、婦人科治療など適用の幅が広い。痛み治療を得意とする鍼灸師は、そのことをホームページに書いているので、要チェック。関節痛で通うなら「トリガーポイント療法」を取り入れているかどうかも調べよう。
【整体院】
民間資格なので、施術に保険は適用されない。肩こりや腰痛、座骨神経痛など筋肉や神経に生じる慢性的な痛みへの対処を中心に行う。骨盤や背骨のゆがみを整え、筋肉をほぐすことで痛みを取る。
整体師個人のレベル差が大きい。施術はもちろん、生活習慣の指導までしっかり行ってくれるか、毎回まったく同じアプローチになっていないかなどが見極めポイント。「すべて骨盤のゆがみによるもの」など原因を限定する施設は避けるべし。
監修/木原洋美さん、イラスト/勝山英夫
※女性セブン2024年4月18日号
https://josei7.com/
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