《心筋梗塞、脳梗塞を遠ざけるために》血管・心臓のエキスパートである医師が指南する「“ぷるぷる血管”を保つ」のに欠かせないこと
では、血管をやわらかく保つには、どうすればいいのでしょうか。最も手軽で効果的なのが温熱刺激です。
「入浴」は血管再生の強力なツールです。お風呂に入って肩まで温まると、毛細血管が一気に開きます。体がぽかぽかして、顔が明るくなるのはそのためです。
じつは、温熱刺激によって実際に、血管やわらか物質であるNO(一酸化窒素)が増えることも研究によって判明しているのです。筋肉を温めるだけで血流が増え、NOの産生が活発になる。つまり、体を温めることは、軽い運動と同じ効果を生みます。
なんと、お風呂の中で手足の指をグーパーするだけでも、毛細血管の先端まで血液が行き渡り、酸素供給が改善します。
軽い動きでも自分でできる”再生医療”になる
たとえば手を握ってパッと開く、ふくらはぎに力を入れて抜く──これだけで筋肉のポンプが動き、血液が勢いよく流れます。
リハビリの世界でも、筋肉を押して離す運動は、最も基本的な血流改善法として知られています。
スマホやテレビを見ながらでも構いません。椅子に座って、かかとを上下させたり、タオルを足首に巻き付けて引っ張ったりするだけでも、毛細血管が反応して温かくなります。
自分の力で体の中の「血液の道」を動かしているのだと考えてください。
温熱やストレッチによって血管が開き、血流が戻ると、そこにNOが分泌されます。
NOは血管を広げるだけでなく、内皮細胞を修復する作用もある。
ですから、ストレッチや軽い運動はある意味では再生治療にも近いことを、日常の中で自分の力で行えるのです。
血管は、動かすほどに育つ臓器なのです。
お風呂やウォーキング、ヨガやラジオ体操──どれも小さな刺激ですが、続ければ血管の内側が少しずつ再生されていきます。
最新の研究では、たとえ高齢でも、温熱刺激によって筋肉量が増え、毛細血管のネットワークが再構築されることが確認されています。
動かして温める、それだけで血管は「再生モード」に入るのです。
結局のところ、血管をやわらかくするいちばんの方法は、特別なサプリメントでも高価な施術でもありません。ぷるぷる血管を自ら生み出すことに尽きるのです。
血管をやわらかく保つことが本当のケア
血管がしなやかであれば、心臓への負担も減り、圧に耐える力が生まれます。
心肥大を防ぐためにも、「高血圧にならないように」と同時に、「高血圧でも血管が耐えられるように」血管壁をぷるぷるに保つことが大切なのです。
やわらかい血管は、心臓の働きを助け、静かに体を守ってくれます。
そして、このしなやかさを保つ方法は、日々の暮らしの中にこそあります。
食事や薬よりも、まずは自分の体の使い方を整えること。
深呼吸をして、体を伸ばし、下半身を動かす──そのひとつひとつの動作が、命を救う小さな積み重ねです。
血管は鍛えるものではなく、育てるもの。
ぷるぷる血管は、病気を遠ざけるだけでなく、人生を軽やかにしてくれるのです。やわらかさは若さであり、命そのものなのです。
教えてくれた人
医師・医学博士・高橋亮さん
1979年千葉県生まれ。北里大学大学院修了。東京大学医科学研究所に所属した後、医療法人理事長。オーストリアのウィーン大学留学中に最先端の心臓移植に接したことで、血管に興味を持つ。以来、血管のエキスパートとして、内科と外科、基礎研究と臨床という「二刀流 × 二刀流」の実績を持つ。がんの転移を抑制する新たな治療の可能性を世界で初めて示し、日本炎症・再生医学会賞、北里大学黒川賞を受賞。米国で開催された数万人が集まる国際学会ではアジア代表のひとりとして特別講演を行う。がん転移の研究過程で、血管と血管壁の潜在的な力を見出し、がん・血管・免疫細胞からなる「神の見えざる手」理論を提唱した。海外の病院での経験や研究成果をベースに、格闘技有段者としての「自重トレーニング理論」や、藍の服用といった自身の肉体で試した「実践的栄養学」なども融合させ、本書の健康ノウハウを開発。新しい健康的な生き方として「血管道」を世に広めている。北里大学医学部非常勤講師。外科指導医、内科認定医、麻酔科標榜医、移植認定医、内視鏡専門医など専門医資格多数。Dell統括産業医も務めた。
