《心筋梗塞、脳梗塞を遠ざけるために》血管・心臓のエキスパートである医師が指南する「“ぷるぷる血管”を保つ」のに欠かせないこと
心筋梗塞、脳梗塞──日本人の死因の約4分の1を占める「血管の不調」は、ある日突然襲ってくる。朝、普通に目覚めて朝食を食べた矢先に、胸が苦しくなり倒れてしまう。そんな悲劇が毎日どこかで起きている。
血管・心臓のエキスパートとして国際的に活躍してきた医師・高橋亮氏は、「打つ手ナシ」と見放された患者の血管をよみがえらせた実績を持つ。筋肉を伸ばすとNO(一酸化窒素)という血管を広げる物質が発生し、血管がしなやかさを取り戻す。血管がやわらかければ、心筋梗塞や脳梗塞を遠ざけられるという。では、血管をやわらかく保つには、どうすればいいのか──。
高橋氏が、血管を広げるメカニズムを解説し、スマホやテレビを見ながら、椅子に座ったままでできる方法をまとめた『血管の名医が薬よりも頼りにしている狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
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血管のやわらかさが心筋梗塞・脳梗塞を遠ざける
外来で患者さんに「血圧が高いのですが、薬で下げれば大丈夫ですよね」と聞かれることがあります。しかし、本当に大切なのは血圧の数字そのものではなく、血管がその圧力にどれだけ耐えられるかという「ぷるぷるさ」です。
健康な血管は、内側がなめらかで、血流の衝撃をぷるぷるとした弾力で受け止めてくれます。一方、硬くなった血管は衝撃を逃がせず、そのたびに内側が傷つきます。
その小さな傷が積み重なって、やがて心筋梗塞や脳梗塞の引き金になるのです。
傷ついた血管が自ら修復する過程で、プラークが生まれます。血管にプラークがつくと血流が乱れ、その周囲の内皮がさらに傷つく。新しいプラークができる。こうして血管の老化は静かに、しかし確実に進行していく。痛みも自覚症状もないままに……。
そしてある日突然、「詰まる」ことで命が奪われる。
それが心筋梗塞や脳梗塞の怖さなのです。
血圧の負担は、心臓にも少しずつ影を落とします。
血圧が高い状態が続くと、心臓はその圧力に耐えようとして、内側の筋肉(心筋)を厚くしていきます。いわば「強くなろうとする適応反応」です。
ところが、その変化は外から見てもほとんどわかりません。心臓の大きさ自体は変わらないのに、中の壁だけがじわじわと厚くなっていく。これが心肥大です。
心肥大は、痛みもなく、息切れもないまま、ひっそりと進行します。
最初のうちは心臓が頑張って血液を押し出していますが、次第に「もう少し圧を下げてほしい」と悲鳴を上げるようになります。
それでも高い血圧にさらされ続けると、やがて心臓は疲弊し、血液を十分に送り出せなくなる──それが高血圧性の心不全です。
だからこそ、「血圧を下げること=薬に頼ること」は、本当の解決にはなりません。
心臓にとっての本当のケアは、血管をやわらかく保ち、血流の衝撃を吸収できるようにすることです。
