「肌のくすみ」「手足の冷え」は“血管の硬化”が原因かも? 医師が解説する“潤い”を取り戻す「グーパー血流リカバリー」のやり方
じつは、温熱刺激によって実際に、“血管やわらか物質”であるNO(エヌオー=一酸化窒素)が増えることも研究によって判明しているのです。
筋肉を温めるだけで血流が増え、NOの産生が活発になる。つまり、体を温めることは、軽い運動と同じ効果を生みます。
なんと、お風呂の中で手足の指をグーパーするだけでも、毛細血管の先端まで血液が行き渡り、酸素供給が改善します。
私は自分でもお湯の中で100回ほど手を握ったり開いたりしていました。当時は握力増強の訓練としてグーパーしていたのですが、結果的にこれだけで血管の内側がほぐれていたのです。
温まった体の中では、血管が少しずつぷるぷるとした弾力を取り戻していきます。
グーパーがよい理由は、温めることで血管を開かせて「道を記憶させる」ことにあります。
お風呂で温めただけでも毛細血管の「道」は開きますが、お風呂から上がって体が冷えるとまた閉じてしまう。せっかく開いた道を見失ってしまう。
ですから、道が開いている間に、その近くの動脈や毛細血管を刺激して、さらに血流を促してあげるのです。
ただお風呂で温まっただけの時と比べて、グーパーによる指の曲げ伸ばしによって、毛細血管の「道」が少し広がるようなイメージです。
そうするとお風呂から上がった時に今までなら完全に閉じていた「道」が、少しだけ記憶されていて、普段から末端へと血液が届き始める。
こうした小さな刺激を毎日続けるだけで、冷えにくい体へと少しずつ変わっていきます。
ただし、外側からの温めだけでは不十分です。使い捨てカイロや電気毛布などで皮膚の外表面を温めても、体の中心部分の体温「深部体温」は、じつはあまり上がりません。
血流を本当に良くするには、体の中から温めて血液を動かすことが大切です。
お風呂でしっかりと体の芯を温め、その状態で軽く手足を動かしたり、ふくらはぎをもんだりすると、閉じていた毛細血管まで血液が届きます。
温めることは、見た目の美容だけでなく、血管の命を延ばす習慣なのです。
教えてくれた人
医師・医学博士・高橋亮さん
1979年千葉県生まれ。北里大学大学院修了。東京大学医科学研究所に所属した後、医療法人理事長。オーストリアのウィーン大学留学中に最先端の心臓移植に接したことで、血管に興味を持つ。以来、血管のエキスパートとして、内科と外科、基礎研究と臨床という「二刀流 × 二刀流」の実績を持つ。がんの転移を抑制する新たな治療の可能性を世界で初めて示し、日本炎症・再生医学会賞、北里大学黒川賞を受賞。米国で開催された数万人が集まる国際学会ではアジア代表のひとりとして特別講演を行う。がん転移の研究過程で、血管と血管壁の潜在的な力を見出し、がん・血管・免疫細胞からなる「神の見えざる手」理論を提唱した。海外の病院での経験や研究成果をベースに、格闘技有段者としての「自重トレーニング理論」や、藍の服用といった自身の肉体で試した「実践的栄養学」なども融合させ、本書の健康ノウハウを開発。新しい健康的な生き方として「血管道」を世に広めている。北里大学医学部非常勤講師。外科指導医、内科認定医、麻酔科標榜医、移植認定医、内視鏡専門医など専門医資格多数。Dell統括産業医も務めた。
