自宅で親を看取るために必要なサービス・費用・もらえるお金や制度を専門家が徹底解説「給付制度もフル活用して」
超高齢社会の日本において、誰しも考えるのが「最期をどこで迎えるのか」という問題。病院ではなく自宅で死にたいと願う人も多いが、実際に成就することは難しい。老いゆくなか、「家で死にたい」という親の最後の望みを叶えるためにはどうすればいいのかを専門家に伺った。
教えてくれた人
山中光茂さん/しろひげ在宅診療所院長、黒田尚子さん/ファイナンシャルプランナー、小澤竹俊さん/めぐみ在宅クリニック院長
「訪問診療」「訪問看護」で家族に負担をかけず自宅での看取りを叶える
古くは「自宅で最期」が一般的だったが、今は8割以上が病院で亡くなる。医療の進歩や核家族化、認知症の増加などが背景にある。それでも「住み慣れた家で最期を迎えたい」と願う人は多い。
親を自宅で看取るために絶対に欠かせないのが、公的なサービスを正しく活用すること。痛みや苦痛、夜間の不穏などに医療的措置を行うのが訪問診療である。
「訪問診療は医師が定期的に患者の家を訪問し、診療や治療を行います。診療や治療の内容に制限はなく、看取りに必要な一連の医療を受けることができます。訪問診療で医師が患者の痛みや苦痛をきちんと緩和することが、看取る家族に負担をかけないための第一歩です」(山中さん)
医師が自宅まで来てくれるので病院で診てもらうより高額になるイメージがあるが、それは間違いだ。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが言う。
「訪問診療でも、患者が加入する医療保険が利用でき、自己負担額はかかった医療費の1~3割が原則です。それでも高額になった場合は、限度額を超えた金額が払い戻される『高額療養費制度』を使えば自己負担額を軽減できます」
かかりつけ医の指導のもと、看護師などが患者の自宅を訪問して療養にかかわる世話や診療の補助を行うのが訪問看護だ。
「入浴や排泄ケアのほか、注射、点滴やカテーテルの管理などの医療措置や家族の支援、悩みの相談なども行います。訪問看護師は、医療的な知識を持って介護ができる大切な存在です」(山中さん)
自宅での看取りを叶える主な「介護・居宅サービス」
※サービスの種類/内容/料金目安(注:料金の目安は東京都千代田区のホームページを参考に作成。金額は自己負担1割の場合。要支援・要介護度によって金額は異なる。)
自宅で受けるサービス5選
【1】訪問介護(ホームヘルプ)
ヘルパーが自宅を訪問して入浴、排泄、食事などの身体介護や掃除、洗濯、調理などの生活援助を行う。
料金:身体介護(20分以上30分未満)279円/生活援助(20分以上45分未満)204円
※「夜間対応型訪問介護」にあたるものを除く。
【2】訪問入浴介護
看護師を含めたスタッフが自宅を訪問し、持参した浴槽によって入浴介助を行う。
料金:976~1444円/回
【3】訪問看護
看護師などが自宅を訪問して療養にかかわる世話、または必要な診療の補助を行う。
料金:436~537円/回(30分未満の場合)
【4】訪問リハビリ
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、心身の機能の維持回復、日常生活の自立を助けるためのリハビリを行う。
料金:331~342円/回
【5】乗車・降車介助
自宅から病院までの移動、交通機関を利用する際の乗降介助を受けられる。
料金:111円/回
施設などで受けるサービス5選
【1】通所介護(デイサービス)
利用者が日帰りで介護の専門施設に通い、食事や入浴などの日常生活の支援、機能訓練などのサービスを受ける
料金:718~1252円/日
【2】通所リハビリ(デイケア)
医師が常駐した介護施設や病院、診療所などに通い、日帰りでリハビリを受ける。
料金:794~1432円/日
【3】短期入所生活介護(ショートステイ)
特別養護老人ホームなどの施設で短期間宿泊をする。入浴、排泄、食事などの介護及び機能訓練を行う(連続利用日数の上限は30日)。
料金:501~982円/日
【4】短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
介護老人保健施設や介護医療院、病院・診療所などで短期間宿泊する。入浴、排泄、食事などの介護及び機能訓練を行う(連続利用日数の上限は30日)。
料金:669~1147円/日
【5】特定施設入居者生活介護
指定を受けた特定の有料老人ホームや軽費老人ホームなどで日常生活の支援や介護などを「居宅サービス」として受けられる。
料金:200~887円/日
