介護休業と介護休暇はどう違う?申請の仕方や活用方法 介護休業給付金のもらい方についても解説
親や家族の介護が必要になったとき、仕事と両立するための制度として知っておきたいのが「介護休業」と「介護休暇」。名称は似ているが、制度内容は異なるうえ、介護休業の場合は、給付金を利用することで金銭的な負担をおさえることも可能だ。節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、「介護休業」と「介護休暇」の違いや、介護休業の場合に対象となる「介護休業給付金」について詳しく教えてもらった。
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教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。
介護のための長期休暇制度「介護休業」
「介護休業」は、労働者が要介護状態の家族の介護のために取得できる長期休暇制度のことです。年次有給休暇とは異なり、要介護者の家族(配偶者(事実婚の場合を含む)、 父母(養子母を含む)、子(養子を含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母)1人につき通算93日分取得可能で、3回まで分割して取得することができます。
ただし、「介護休業」は会社の規程にもよるものの、有給休暇とは異なり、介護休業中は原則無給であることがほとんどです。しかし企業によっては、介護休業期間でも給料が支払われる場合もあるため、就業規則を確認してみましょう。
介護休業中の金銭的負担を軽減する「介護休業給付金」
「介護休業給付金」は、家族の介護のために仕事を休む間、収入減による介護者の負担を軽減するための制度です。受給額は「休業開始時の賃金日額×支給日数×67%」となります。介護休業の申出は、原則休業開始予定日の2週間前までに書面などを用意して、会社に申し出る必要があります。2週間前までに申出が行われなかった場合は、事業主は申出があった日から2週間を経過する日までの間を介護休業の開始日に指定することができます。
また、「介護休業給付金」は、雇用保険の給付金のため、受給資格は原則として介護休業を開始した日前2年間に11日以上就業した月が12か月(※)以上あり、かつ雇用保険に加入している必要があります。さらに、復帰を前提に介護休業をしていること、2週間以上にわたる常時介護のための休業であることが支給要件となっている点にも留意が必要です。
ただし、派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなどといった契約の期間に定めがある労働者の場合は、上記の条件に加えて、「介護休業開始時点で同一の事業者に1年以上雇用されている」「介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約が終了することが明らかではない」という条件を満たしていれば受給することが可能です。(※介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月と換算)
介護休業給付金の申請窓口はハローワークですが、手続きは勤務先で行うため、休業期間が終了した後に担当部署あてに行います。申請の期限は、休業終了日の翌日から2か月後の月末ですので、忘れずに手続きをしましょう。
仕事と介護を両立するための準備に充てるのがベスト
家族の介護のための休業といっても、介護は93日間で終わるとは限りません。そのため、介護休業は自分が家族を介護する期間ではなく、仕事と介護を両立するための準備をする期間として捉えるのがいいでしょう。
地域の相談窓口である地域包括支援センターやケアマネジャーに相談したり、介護施設や預かり施設を探したり、介護サービスの利用申し込みをするなど、介護者が、介護をしやすくするためや、要介護者が不便なく安全に過ごせるように家のリフォームをしたりするなど、やるべきことは多くあります。働きながら介護のための準備をするのもなかなか難しいという場合に、介護休業中に在宅介護の準備に充てることができます。
介護をするための短期休暇制度「介護休暇」
次に「介護休暇」ですが、「介護休業」と大きく異なるのは休暇を取得できる期間です。介護休暇は、要介護状態にある家族(配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)の介護をするために取得可能な短期休暇の制度で、年間最大5日、複数の場合は10日、取得が可能で、1日、半日、時間単位で取得できます。介護休業と同様に、年次有給休暇とは別に取得が可能ですが、休暇中は原則無給です。
有給休暇が余っている場合はそれを使ったほうがいい可能性もありますし、会社によっては介護休暇中も賃金が支払われる場合もあります。会社の制度をよく確認したうえで利用を検討しましょう。
法律上は当日口頭での申請でも取得可能
介護休暇は、法律上は休暇を取りたい当日に口頭で休暇を取りたい旨を伝えて取得することが可能です。ただし、休暇の取得自体が会社の就業規則に従う必要があるため、やはり事前に就業規則などを確認する必要があります。基本的には、年次有給休暇と同様に、書面などで事前申請するケースが一般的です。
急に自分が家族の介護をしなければならないときなどにおすすめ
介護休暇は介護休業と異なり、短期間の休みを柔軟に取ることができる制度です。例えばいつもは母が行っている父の介護を1日だけ自分が代わりに行う必要がある時など、1日単位で介護のための休みを取りたいときなどに利用しましょう。また、直接的に介護をする場合だけでなく、介護施設の見学やケアマネージャーとの打合せなどにも利用可能です。
