家族に迷惑をかけず家“ひとり”で過ごしたい。その願いを叶えるために活用したいサービス|地元に詳しいケアマネを見つけるのがカギ
加齢とともに体力が衰えると、周囲の支えなしに暮らすのは難しくなってきます。それでも「できるだけ長く、住み慣れた自宅で過ごしたい」。だが、家族に迷惑をかけるのは避けたい。そこで、介護の専門家に「おひとりさま」でも在宅が実現できる活用すべきサービスを伺った。
教えてくれた人
黒田尚子さん/ファイナンシャルプランナー、小山朝子さん/介護ジャーナリスト・総合情報サイト『オールアバウト』のガイド、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト・ファイナンシャルプランナー
介護サービスは公的だけじゃない。自治体のサービスも上手に活用しよう!
公的介護保険による介護サービスを受けられる条件は、65才以上(第1号被保険者)で「要介護認定」を受けた人、あるいは40~64才で16の特定疾病に該当する人だ。まずは市区町村に要介護認定の申請をし、訪問認定調査員による認定調査(聞き取り調査)を受ける。調査と主治医意見書をもとに審査が行われ、要支援1・2、要介護1~5のいずれかの認定がおりればケアマネジャーが介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、それに合わせて介護サービスを受けられる。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、家族に負担をかけない在宅介護の実現についてこう話す。
「介護サービスを活用すれば家族の支援なしで生活することも不可能ではありません。在宅介護サービスは訪問、通所、宿泊、ショートステイなどとても幅広い。公的サービスのほかに自治体や民間のサービスも組み合わせれば、おひとりさまの高齢者のかたでも日常生活の大半はカバーできるでしょう」(黒田さん)
自治体独自のサービスを組み合わせることで、家族の負担はさらに減らせる。
「多くの自治体が行っている『緊急通報システム』がおすすめです。具合が悪くなったときに専用の通報機器やペンダント型のボタンを押すと、センターに通報が届き警備員や専門家が駆けつけてくれます。ほかにも見守りを兼ねたお弁当の配達や玄関先までゴミを取りに来てくれるゴミの訪問収集など、各自治体のホームページをチェックすると意外なサービスが見つかります」(小山さん)
顔なじみのタッフだから安心!「地域密着型サービス」
●サービスの種類|内容料金目安(※)
●料金の目安は東京都千代田区のホームページを参考に作成。金額は自己負担1割の場合。要支援・要介護度によって金額は異なる。
自宅で受けるサービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
訪問介護員または訪問看護師が要介護者の自宅を定期訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の介護サービス。
[ 内容料金目安 ]6209~3万2437円/月
夜間対応型訪問介護
夜間(18~8時)にホームヘルパーによる介護サービスなどを受ける。定期巡回、随時訪問は1回ごとに料金がかかる。
[ 内容料金目安 ]1128円/月(基本料)
施設などで受けるサービス
認知症対応型通所介護
認知症の利用者がデイサービスセンターなどに通い、介護や機能訓練を受ける。
[ 内容料金目安 ]956~1584円/日
小規模多機能型居宅介護
身近な地域にある小規模施設で、通所サービスを中心に短期間の宿泊や自宅での訪問介護を組み合わせて、同一の介護事業者からサービスを受ける。
[ 内容料金目安 ]3830~3万202円/月
割安で受けられる「自治体の独自サービス」
※サービスの種類|内容|料金目安
配食サービス
買い物や調理が困難な場合、指定の曜日に昼食または夕食を手渡しで配達してくれる。(東京都目黒区の場合)
[ 料金目安 ]1食につき244~541円(普通食の場合)
ゴミ・資源訪問収集
集積所へのゴミ出しが困難な場合、自宅までゴミの回収に来てくれる。(東京都目黒区の場合)
[ 料金目安 ]無料
緊急通報システム
慢性疾患があるなど日常生活をするうえで注意を要する場合、自宅に無線発報器を設置。家庭内で病気や事故などの緊急事態に陥ったときに警備会社に通報できる。(東京都新宿区の場合)
[ 料金目安 ]センサー設置料金2600~3100円
理美容室介助サービス
理美容室へ自力で行くことが困難な場合、送迎をサポートしてくれる。(東京都目黒区の場合)
[ 料金目安 ]1時間400円
介護用品(紙おむつ等)の支給
在宅の重度要介護者を支援するため、紙おむつ等を毎月宅配にて支給。要介護3~5の人が対象となる。(千葉県船橋市の場合)
[ 料金目安 ]支給限度額8900円
認知症高齢者早期発見位置お知らせサービス(GPS装置の貸与)
徘徊行動が見られる人を介護している家族を対象に、徘徊者の早期発見に役立つGPSをレンタル。(神奈川県茅ヶ崎市の場合)
[ 料金目安 ]1320円/月
ケアマネジャーは職歴よりも地元に詳しいかがカギ。自分の気持ちを素直に伝えることが大事
こうしたサービスを見逃さないためにも情報収集が重要だ。そこで頼りになるのがケアマネジャーだが、実際には“当たり外れ”があるという。
「ベテランのように見えても実は転入してきて間もなく、地域密着型のサービスについて詳しくない可能性があります。どれくらい地元で仕事をしているのか確認してみるといいでしょう。また、年代や性格、経験値についてなど細かくオーダーした方がいい。自分に合うケアマネジャーを見つけられることが、家族に負担のない在宅での暮らしを実現する第一歩です。
また地域包括支援センターにはケアマネジャーを統括する立場の主任ケアマネジャーが常駐しているので、困りごとや不明な点があれば問い合わせてみてもいいでしょう」(黒田さん)
そのうえでケアマネジャーとの信頼関係も大切だとファイナンシャルプランナーで介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは言う。
「見栄は張らずにざっくばらんに自分の心身の状態や“どんな生活を送りたいのか”を伝えることが重要です。なるべく外に出たいのか、家の中でゆっくり過ごしたいのか、ご飯だけはしっかりしたものを食べたいのか。要望を明確に伝えることで、自分に合ったサービスプランを立てることができます」
家族に迷惑をかけず、自宅で過ごして最期を迎えたいーーその思いを叶えるために在宅介護サービスを賢くフル活用したい。
写真/PIXTA
※女性セブン2025年10月16日・23日号
https://josei7.com
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