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公的介護保険「親や自分は利用対象になる?」申請できる人の条件や制度の基本を解説【専門家解説】

 40才以上のほとんどの人が納付している「(公的)介護保険料」。いざ介護が始まると、介護保険適用のサービスを一定の負担で利用できる便利な制度だ。しかし、まだ介護をしていない人にとっては、「いつから」「誰が」利用できるのかなどわからないことも多いのではないだろうか。親や自分は利用対象者になるの?など基本的なことを社会福祉士の資格を持つ渋澤和世さんに解説いただいた。

この記事を執筆した専門家

渋澤和世さん

在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。

介護保険の対象者について知っておこう

 2000年4月から始まった日本の介護保険制度。高齢など何かしらの理由で支援が必要になった場合でも、できるだけ住み慣れた地域で生活が続けられるような社会にという願いが込められています。医療技術の発達で寿命も延び、結果的に介護期間も長期化していることもこの制度が成立した背景のひとつです。

 筆者も18年前あたりから親の介護が始まりましたが介護保険サービスは大いに利用し、時間的にも金銭的にも大変助かりました。

 ちなみに、介護保険制度は、3年毎に改正や見直しが行われています。2024年の改正では、地域包括ケアの強化、自立支援・重度化予防、働きやすい職場環境の確保、制度の持続可能性向上が見直されています。

 一方、要介護1・2の総合事業※への移行、ケアプランの有料化、2割自己負担の対象拡大などと、特別養護老人ホームの特例入所基準の緩和・多床室の全額自己負担は見送られ、引き続き検討事項となっています。

 親の介護や自分自身も年齢を重ねることで必要になる介護保険。「介護はまだ先のこと」と思っていても何が原因で突然介護が始まるかわかりません。

 まずは、介護保険は誰が使えるのか、対象者について知っておきましょう。以下で詳しく解説していきます。

※介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)。要介護認定を受けていなくても地域包括支援センターでサービスを利用できる制度のこと。

介護保険の<利用対象者>となるには一定の条件が必要

 介護保険の対象者は、「第一号被保険者」と「第二号被保険者」があります。

「被」という言葉には、他人から、行為や恩恵などを受けるという意味があり、介護保険が利用できる人ということになります。では、ふたつの違いを見ていきましょう。

1. 第一号被保険者

65才以上の人。要支援、要介護になった場合、理由を問わずに介護保険サービスを受けられます。

2. 第二号被保険者

40才から64才までの医療保険加入者。特定疾病 (指定の16疾病※)で介護認定を受けた場合にのみ、介護保険サービスを受けられます。

 要介護状態になったとしても、特定疾患に該当しなければ対象外。例えば、63才のかたが交通事故で怪我をして、介護が必要になったとしても対象外となります。

特定疾病

1がん※

2関節リウマチ

3筋萎縮性側索硬化症

4後縦靱帯骨化症

5骨折を伴う骨粗鬆症

6初老期における認知症

7進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病

8脊髄小脳変性症

9脊柱管狭窄症

10早老症

11多系統萎縮症

12糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

13脳血管疾患

14閉塞性動脈硬化症

15慢性閉塞性肺疾患

16両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

※医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。

16疾病

※参考/厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html

・介護保険を使える人【まとめ】

・65才以上で要支援・要介護認定を受けた人

・40~64才の特定疾病の人

介護保険料の<支払い対象者>は?

 介護保険料の納付は国民の義務であり、40才を迎える月から介護保険料が徴収されはじめ、支払いは一生涯続きます。この際に特別な手続きは不要で、年齢層別に支払い方法が異なります。

 また、40才になる誕生日の前日から納付が義務づけられるため、誕生日が1日のかたは前月から介護保険料を納める必要があります。

 支払い方法は、年金や給料からの天引き「特別徴収」と、銀行やコンビニ等から納付書での支払う「普通徴収」の2種類があります。

●40~64才…健康保険の一部として支払う

・会社員は、会社で加入している健康保険と併せて徴収される(事業主と被保険者が折半)。

・自営業は、国民健康保険加入者の所得、資産、人数など世帯単位で決められ、世帯主が徴収される(国民健康保険の支払滞納が介護保険料の滞納に直結するので注意)

●65才以上…健康保険から離れ介護保険料として支払う

・年間18万円以上の年金受給があるかたは、2か月ごとに年金から天引き(特別徴収)される。年金は種類があり、複数の年金を受給している場合、「老齢基礎年金 → 老齢基礎・通算年金 → 退職年金 → 障害年金・遺族年金」の順番で特別徴収される年金が決まる。

・年金額が年間18万円未満のかたは、納付書にそって役所、銀行、コンビニ、銀行口座振り込み(普通徴収)などで支払う。

 なお、専業主婦(夫)で64才まで介護保険料を配偶者の健康保険料とともに納付してきた場合でも、65才になると、「特別徴収」か「普通徴収」のどちらかで、介護保険料を納付することになります。

 そして、特別徴収の対象者が普通徴収へ切り替えることは原則できませんが、一部許可している自治体もあるようです。希望する場合は確認してみましょう。

滞納するとどうなる?

 健康保険料の一部として納付するか年金から天引きされる「特別徴収」の場合は滞納することはありません。

 しかし、保険料を自分で納めなければならない自営業者や、65才以上、「普通徴収」で納付書支払いを選択していると忘れてしまうこともあるかもしれません。

 介護保険料を納付することで、被保険者でいられるわけであり、滞納してしまうと介護保険を利用する際の自己負担が増える、または延滞金が請求されます。

 災害等の特別な事情がある場合を除くと、次のような制限を受けることになります。

【1】保険料を1年以上滞納すると、介護サービスにかかった費用の1割、2割または3割負担ではなく、費用の全額をいったん自己負担し、申請のあとで保険給付分(支給限度額を超えない範囲で費用の9割、8割または7割)が支払われるようになります。

【2】保険料を1年6か月以上滞納すると、保険給付の一部または全部が一時的に差し止めになります。滞納が続くと、差し止められた保険給付から滞納保険料が差し引かれる場合があります。

【3】保険料を2年以上滞納すると、利用者の負担額が、その滞納期間に応じて、利用者負担が1割または2割の方は3割に、利用者負担が3割の方は4割に引き上げられ、高額介護サービス費等の支給が受けられなくなります。

介護保険料を支払わなくていい人っているの?

 40才以上になると、介護保険料の徴収が義務づけられていますが、特定の条件を満たせば支払いを免除されることがあります。以下に該当する場合は、「介護保険適用除外届(該当・非該当)」を提出することで、支払いを免除されます。詳しくは、お住いの自治体に確認してみてください。

【1】日本国内に住所がない海外居住者

日本の介護保険制度は海外で使えないため、日本に住所を持っていない海外居住者は、介護保険は不要となり、介護保険料は免除されます。

【2】介護保険適用除外施設の入所者

介護保険適用除外の施設は以下の通りです。

・医療型障害児入所施設

・厚生労働大臣が指定する医療機関(当該指定に係る治療等を行う病床に限る)

・独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設

・国立及び国立以外のハンセン病療養所

・生活保護法に規定する救護施設

・労働者災害補償保険法に規定する被災労働者の受ける介護の援護を図るために必要な事業に係る施設

・障害者支援施設

・障害者総合支援法に規定する指定障害者支援施設

・障害者総合支援法に規定する指定障害福祉サービス事業者である病院

【3】短期滞在の外国人(在留資格1年未満のかた)

 1年未満の在留資格を有する者は、介護保険は不要と考えられ介護保険料は免除されます。
また、災害や失業など特別な事情で支払いができない場合、減免の対象になることがあります。自治体の担当窓口に相談してみてください。

***

 今回は、介護保険の対象者について解説しました。介護保険料を徴収されるのも、介護保険サービスを利用できるのも40才以上となります(40~64才は利用に条件あり)。

 筆者も42才あたりから親の介護が始まりました。40才を過ぎると介護保険は何かしらかで関わりが強くなります。今まで無関心であったかたも是非、気に留めてみてください。

●介護が始まりそう…そんな時に頼りにしたい【地域包括支援センター】相談前に確認すべき5つのこと「委託運営の場合は経営母体はどこかチェックする」

●「フルタイム勤務、2人の子育て中介護離職しないで済んだのは【小規模多機能】のお陰」社会福祉士が振り返りつつ解説する介護制度活用法

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