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2日目のカレーに大発生⁉《ウェルシュ菌》による食中毒の予防と対策「煮込み料理やとろみのついた介護食の温度管理に要注意」【管理栄養士解説】

「暑さが落ち着いてくる秋は、『涼しいから冷蔵庫にしまわなくても大丈夫』と、食材の温度管理や衛生管理が甘くなりがちです」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。梅雨や夏に並び、秋も食中毒は多い時期だという。とくに10月に注意したいのが「ウェルシュ菌」だ。2日目のカレーにこの菌が増えて食中毒を引き起こすことも。予防と対策を解説する。

教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

10月に増えるウェルシュ菌に要注意

 食中毒を引き起こす原因物質は、自然界に存在する「微生物」(細菌、ウイルス、寄生虫、原虫など)のほか、キノコや山菜などの「自然毒」、そのほか「化学物質」に分類されます。

 秋に注意したいのが、細菌性の食中毒です。ノロウイルスなどのウイルス性の食中毒は冬に多いのですが、細菌性の食中毒は、梅雨や夏場に並び、10月にも多く発生しています。中でもこの時期に用心したいのが「ウェルシュ菌」です。

ウェルシュ菌とは?

 ウェルシュ菌は土壌や河川など広く自然界に存在する常在菌なので、食材そのものから取り去ることは難しいため、温度管理や衛生管理に注意して、菌を「発育させない」「増やさない」ことが大切です。

 ウェルシュ菌が食中毒を起こしやすい理由の1つに芽胞(がほう)をつくる特性があげられます。

 わたしたちの身の回りにいる常在ウェルシュ菌は、熱抵抗性も弱く毒性はほとんどありません。しかし、菌にとって悪い環境(高温など)になると、殻のような構造の”芽胞”をつくって生き残ろうとします。このときに毒素を産生することがあります。芽胞は熱に強く、100℃で1時間加熱しても死滅しません。

 食材の温度が下がり、菌に適した環境になると通常の菌の状態に戻り、再び増殖を始めます。そして増えた菌が体内に取り込まれ、再び芽胞をつくることで食中毒の症状を引き起こします。

カレーやシチュー、とろみがついた食品も危険

 ウェルシュ菌による食中毒の危険性が高い食品は、カレーやシチューなどの煮込み料理や、肉や魚を使った総菜などです。秋になって涼しくなってくると、煮込み料理の頻度が増えるご家庭も多くなるので注意が必要です。

 また、「とろみ」がついた食品も要注意。高齢者の食事や介護食には、とろみをつけることが多いのですが、とろみ自体の保温作用で料理が冷めにくく、水分が多いので、細菌が増殖しやすくなります。

ウェルシュ菌による食中毒予防と対策

「カレーは一晩煮込んだ翌日のほうがおいしい」と考える人もいるかもしれませんが、鍋をそのまま放置していると、翌日には菌が大発生しているなんてことも…。しっかり対策をしましょう。

調理前は流水で洗う

 食中毒予防には、野菜についている土は流水で十分洗い流す、魚なども調理前に流水で洗うなど、このひと手間が大切です。食品は出来るだけその日のうちに食べきるようにしましょう。

調理後は室温に長時間放置しない

 ウェルシュ菌による食中毒は、調理後に長時間室温放置することが原因で起こることが多いため、保冷剤や流水を利用しながら調理後は2時間以内に20℃以下に冷ましましょう。

冷凍保存は小分けに

 カレーなど量が多いとなかなか温度が下がらないので、小分けにしてからのほうが温度も下がりやすく、ウェルシュ菌が苦手とする空気(酸素)に触れさせることで増殖を抑えることができます。

食べるときは中心部までしっかり加熱

 一度加熱調理して適切な温度で保存しておけば、ウェルシュ菌が入っていたとしても芽胞を形成していないことが多いので、しっかり加熱すれば菌は死滅します。

 ウェルシュ菌は、空気(酸素)に弱いので、再加熱するときにはよくかき混ぜて空気を含ませながら15分以上、中心部までよく加熱しましょう。

参考/農林水産省「煮込み料理を楽しむために~ウェルシュ菌による食中毒にご注意を!!~」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/clostridium.perfringens.html

ご飯やパスタに発生する「セレウス菌」にも注意を

 ウェルシュ菌のほか、この時期に気を付けたい原因菌に「セレウス菌」があります。セレウス菌による食中毒の危険性が高い食品は、ご飯もの(チャーハンやピラフ、オムライス、おにぎり等)やパスタです。

 セレウス菌もウェルシュ菌と似た特徴があり、ご飯ものやゆでたパスタを室温に4時間以上放置すると、食中毒のリスクが高まります。調理後は、なるべく早いうちに冷蔵庫か冷凍庫で保存しましょう。

宅配したお弁当や食材の保存に注意

 高齢者の栄養相談を受けていて感じるのが、宅配のお弁当の保存方法や食べ方が誤っているかたが多いこと。お弁当のご飯にもウェルシュ菌やセレウス菌が繁殖するリスクがあります。

 お弁当を1回で食べきれないので昼食と夕食として2回に分けて食べる高齢者のかたが多くいます。本来は1食分の量ですし、2時間以内に食べることが望ましいので1回で食べきってほしいものです。

 どうしても2回に分けて食べる場合は、あらかじめ食べる分だけ取り分けてから食べましょう。一度口を付けたものを保存してしまうと菌が増殖しやすくなるので要注意です。残しておく分は冷蔵庫で保存し、食べるときにしっかり加熱をしましょう。

***

 暑い夏が過ぎた秋も油断せずに手洗いをしっかりして衛生管理を行いながら、食品の温度管理を徹底して食中毒対策を行うことは必要です。

 特に免疫力が弱っている高齢者の場合は、食中毒菌に対しての抵抗力が弱く少量の菌でも発症して重篤化しやすくなります。食材がおいしくなって過ごしやすくなるこの時期だからこそ、改めて作る側も食べる側もお互いに食中毒予防について意識してほしいと思います。

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