《年間10万円支給も》介護保険サービスを利用していない世帯に向けた「家族介護慰労金」 メリットや対象となる条件は?
「自宅で介護をしたい」と考えたときに、知っておきたいのが「家族介護慰労金制度」だ。節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんによれば、「家族介護慰労金制度を利用する支給要件は厳しい」という。そこで、「家族介護慰労金制度」の対象となる詳しい要件や注意点などを教えてもらった。
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教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。
自宅で介護する人を支援する「家族介護慰労金」
介護を担っている人に対して、さまざまな助成金や補助金が用意されています。自治体によっては独自の制度を設けていることもあり、そのうち1つが「家族介護慰労金」です。自宅で家族の介護を行う人を支援するためのもので、金額は自治体によっても多少異なりますが、要介護者1人につき年間10万円ほど。
本来、介護保険を利用した際の介護サービスの補助費用は自治体負担です。しかし、自治体が直接的に費用負担をしない形で在宅介護を行っている場合に、人的負担などを考慮し、金銭的に支援をする制度が「家族介護慰労金」です。
家族介護慰労金の支給要件
家族介護慰労金は、介護をしていれば、誰でもらえるものではありません。自治体によっても要件は異なりますが、いくつかの基本的な支給要件があります。
例えば、新宿区の場合は、在宅の高齢者を介護している家族であることに加えて、以下すべてに該当することが要件となっています(https://www.city.shinjuku.lg.jp/fukushi/file07_05_00002.html)。
【1】高齢者が介護保険の要介護認定で、1年間を通じて要介護4または要介護5と認定されている
【2】高齢者が要介護認定後、1年間介護保険のサービスを利用していない(年間1週間程度のショートステイ利用を除く)
【3】高齢者、介護者とも「住民税非課税世帯」である
【4】介護者が高齢者と同居、もしくは隣地に居住するなど事実上同居に近い形で介護している
また、八王子市の場合は、上記のような要件に加えて、「対象期間中、介護保険施設以外の診療所・病院に90日以上入院していない」といった要件もあります(https://www.city.hachioji.tokyo.jp/tantoumadoguchi/012/004/p023573.html)。
要件は自治体によって異なるほか、自治体によっては制度自体実施していないこともあるため、利用を検討する場合はまず自治体のHPなどで確認しましょう。
制度利用のメリット自体は小さい
ただし、要件を満たしていたとしても支給金額が介護に対する労力などに見合うとは言い難いです。公益財団法人家計経済研究所の在宅介護にかかる費用の調査(https://kakeiken.jp/old_kakeiken/jp/research/kaigo2016/index.html)によると、要介護度4の場合、在宅介護で介護サービス以外にかかる費用は月額約4万2000円、要介護5の場合は約5万3000円となっており、家族介護慰労金で賄えるのは2か月分程度です。
介護サービスを利用した場合の費用は、要介護度4の場合は月額約1万7000円、要介護度5の場合は約2万1000円ですので、介護にかかる負担を考慮すると、介護サービスを利用したほうがいい場合のほうが多いでしょう。
どうしても自分たちで介護をする必要がある場合のみ検討
家族介護慰労金制度を受けるためのハードルは高く、要介護4~5レベルの要介護者の介護は負担が大きいため、慰労金目的に介護保険を活用しないのは現実的ではありません。
ただ、居住地が事業所のサービスの提供範囲外だったり、ヘルパーの人手が足りず、介護サービスを受けられなかったり、適切な訪問介護を提供することが困難なケース(例えば、暴力や迷惑行為が著しい場合)など、介護保険の範疇である「居宅サービス」を受けることができない世帯においては、検討してみてもよいでしょう。