認知症の母の実家が停電「見守りカメラが映らない!」離れて暮らす息子がとった行動と対策
岩手・盛岡で暮らす認知症の母を遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。住み慣れた家で暮らし続けたいと願う母のために、見守りカメラなどさまざまな機器を駆使して介護を続けている。台風や地震などの自然災害が気になる昨今、停電の不安も。実際に停電を経験したときのエピソードと対策をご紹介する。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。
著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
遠距離介護に欠かせないIoT機器、停電時はどうする?
遠距離介護先である岩手の実家は、見守りカメラやエアコンを遠隔で操作できるスマートリモコンなど、いわゆるIoT機器がインターネットと常時接続された状態になっています。
そのおかげで台風や地震などの自然災害が起きたときも、わたしは見守りカメラですぐに実家の母の安否や家の状況を確認できるので、本当に重宝しています。
幸いにしてインターネットがつながらなくなるほどの自然災害は、遠距離介護がスタートした2012年以降、一度も経験していませんが、最近は猛暑でゲリラ豪雨や落雷の回数が増え、その影響で停電も多くなりました。
IoT機器は遠距離介護に欠かせないものですが、停電してしまうと見守りカメラの映像は映らないし、エアコンの遠隔操作もできません。また固定電話もつながらなくなるため、携帯電話を持っていない母とは連絡がつかなくなってしまいます。
わが家で起きた停電と、その対策についてご紹介します。
実家の停電は真冬に起きた!
岩手の実家が停電したのは、真冬でした。東京に居たわたしは、実家の様子を見守りカメラで確認しようとしたのですが、映像が映りません。最初は見守りカメラ1台だけ故障したのかと思ったのですが、他の見守りカメラも反応がありませんでした。
さらにスマートリモコンで実家の居間の室温を確認したら、こちらも表示されなかったので、実家のインターネット自体がつながっていないかもしれないと考えました。
わが家のインターネットは光回線なので、NTT東日本の障害情報を確認したところ、光回線の異常はなかったので、別の原因を考えました。
インターネットのトラブルでなければ、停電かもしれない。そう思って、当時のtwitter(現X)で盛岡の停電情報を調べると、実家のあるエリアが停電しているようです。その後、東北電力の情報を改めて確認すると、停電中であることが判明しました。
停電した実家はどうなってしまったのか?
真冬に停電すると、エアコンやこたつなどの暖房器具が使えなくなります。真夏なら、熱中症のリスクが高まるでしょう。母は認知症なので、停電に気づくことができませんし、暖房のつかない部屋で過ごすしかありません。
しかし停電した日は、母がデイサービスにいたので、停電の影響は受けませんでした。とはいえ、いつ復旧するか分からないし、復旧に時間がかかったらデイサービスから帰ってきた母は暖房のない家で生活しなければならず、命の危険もあります。
ひょっとしたらデイサービスも停電しているかもしれないと思って、東北電力の停電情報を確認したところ、実家周辺の狭い地域で起きた停電で、デイサービスは停電していませんでした。
停電の原因は、電線の上の積雪による断線で、何時に復旧するかの情報はありませんでした。そこでわたしは、デイサービスに電話をすることにしたのです。
デイサービスの停電時の対応は?
東京から岩手のデイサービスに電話をすると、停電の情報は入っていないようでした。家に帰っても停電していて暖房がつかないので、可能な限り母をデイサービスで預かってもらえないかとお願いしました。
デイサービスなので泊まりの対応はできないけど、停電が復旧するまで可能な限り施設で預かるとの回答をもらったのです。
これで夕方までは大丈夫と思いつつ、改めて東北電力の停電情報を確認しました。すると停電は復旧していて、デイサービスにはいつも通りの帰宅で大丈夫と改めて連絡しました。
わたしはすぐに遠隔操作でエアコンの暖房をつけて部屋を暖め、デイサービスから帰ってきた母はこたつの電源を入れて、何事もなかったかのように夕食を食べていました。
真冬の停電をきっかけに行った対策
わが家の遠距離介護は、たくさんのIoT機器に依存しています。停電してしまうと、離れて暮らすわたしは何もできなくなると分かったのです。
そこで新しい停電対策として使い始めたのが、電力会社が提供しているアプリでした。わが家で使っている東北電力のアプリは、実家の町名を登録しておくと停電が起きたときに通知が来るようになっています。
工藤さんが活用中のアプリ『東北電力 よりそうeねっと』
■GooglePlay
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.tohokuepco.enet&hl=ja
停電したその日にアプリをインストールしたのですが、翌朝起きてスマートフォンを見ると、アプリから新しい停電の通知が届いていました。これはまずいと思って情報を調べると、母が寝ている間に2回目の停電が起き、すぐ復旧していたようでした。
現在、わたしが行える対策は、このアプリで「停電をいち早く把握する」だけです。本当はポータブル電源を購入して、停電が発生しても充電されたポータブル電源からの給電で、インターネットがつながった状態を維持しつつ、次の手を打てるようにしなくてはなりません。
ポータブル電源の機種の選定は終えているのですが、実はまだ買っていません。最近の落雷の多さを考えると、おそらく停電の回数は増えていくと思うので、今が準備するタイミングなのかもしれません。
今日もしれっと、しれっと。
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