介護保険サービスの利用者が知っておくべき《サービス加算》とは?「質の高いケアを受けるために必要な場合も」3つのメリットを専門家が解説
デイサービスやリハビリなどの介護保険サービスを利用する際、料金には「サービス加算」が含まれることがある。”加算”と聞くと負担額が上がってしまうのかと心配になるかもしれないが、介護者や家族にとってメリットもあるという。「サービス加算」はどんなものなのか、介護職員やケアマネジャーの経験もある中谷ミホさんに解説してもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X https://twitter.com/web19606703
介護保険利用料の「サービス加算」とは?
要介護に認定されると受けられる介護保険サービスの料金は、「基本サービス費」と「サービス加算」の2つで構成されます。
基本的な費用に加え、サービスの内容や、サービスを行なう事業者の体制などによって、費用の上乗せを行なっています。その上乗せ部分の費用を「サービス加算」と言います。
「加算」と聞くと、「自己負担額が上がる」と感じるかもしれません。実際、加算分の金額は上乗せになっているのので支払い額は増えてしまいます。しかし、このサービス加算は必要な人に質の高いケアを届けるための仕組みであり、利用者の安心や満足につながる重要な制度なんです。
では、どんな場合でサービス加算が生じるのか。例えば、介護サービス事業所が、夜間や早朝など負担の大きい時間帯にサービスを提供する場合や、専門的なケアを提供する場合にこの「加算」が適用されます。また、訪問介護サービスを早朝や夜間の時間帯に利用した場合、通常の時間帯より職員の負担が大きいため、追加料金(早朝・夜間加算)が発生します。
以下で代表的なサービス加算を紹介します。
知っておくべき!主な「サービス加算」の種類と内容
主なサービス加算の種類と内容は以下の通り。「質の高い介護サービスを提供する事業所ならではのサービス加算もあります」
訪問介護の夜間・早朝加算
夜間(夕方から早朝)に訪問介護サービスを利用する場合に適用され、基本のサービス費用に一定割合の追加料金が上乗せされます。
■時間外加算の料金
・早朝(午前6時~8時):基本料金の約25%増
・夜間(午後6時~10時):基本料金の約25%増
・深夜(午後10時~翌朝6時):基本料金の約50%増
※参考:厚生労働省「訪問介護費」(https://www.mhlw.go.jp/content/000925363.pdf)
例えば「夜中にオムツ交換が必要」「朝早くに着替えを手伝ってほしい」といったケースでは、この加算によってヘルパーに来てもらうことが可能です。自己負担額は増えますが、必要な時間帯にプロの介護を受けられる安心感を得られます。
特定事業所加算
質の高い介護サービスを提供する事業所を利用した場合に適用される加算です。具体的には、経験豊富な介護福祉士が多く在籍していたり、研修体制が整っていたりするなど、国が定めた基準を満たした事業所が該当します。
例えば、24時間の緊急連絡体制があることや、サービス提供責任者が手厚く配置されている訪問介護事業所などです。この加算により、より質の高いサービスや手厚い対応を受けることができます。
医療連携体制加算
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)において、医療機関との連携を強化することで、入居者が適切な医療サービスを受けられるようにするための加算です。医療機関と協力することで、日常の健康管理や医療的ケアが円滑に行われ、入居者は安心して生活を送ることができます。
その他の加算
上記以外にも、さまざまな場面に対応するサービス加算が用意されています。一例として、緊急時訪問介護加算(緊急時に迅速な対応ができる体制への評価)、口腔ケアや栄養ケアに関する加算(口腔衛生管理や栄養改善の取り組みへの評価)、介護職員処遇改善加算(介護職員の待遇改善に取り組む事業所への評価)などが挙げられます。
これらの加算は、利用者の安心や健康を支えたり、介護現場の質を高めたりするために設けられているものです。
「サービス加算」を利用した場合の3つのメリット
サービス加算によって利用者やその家族は、次のようなメリットがあります。
【1】必要なケアを適切なタイミングで受けられる
利用者一人ひとりの状況に応じた適切なケアが受けやすくなります。
【2】専門性の高い支援が受けられ、自立支援につながる
リハビリや医療的ケアなど、専門的な支援を受けることで、身体機能の維持や回復が期待できます。
【3】家族の負担が軽減する
充実したサービスで介護の負担が減り、家族の精神的・身体的な負担を和らげることができます。
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介護保険サービスは、要介護認定を受けた後、ケアマネジャーが作成したケアプランにもとづいたサービスを利用することになります。ケアマネジャーとよく相談し、必要な支援を適切に受けられるようにしたいものです。利用者や家族も、介護サービス事業所に、どんなサービス加算があるのか、どのような体制でサービスを提供しているのかを確認しておくといいでしょう。