「ショートステイ」とは? 利用条件、介護保険は使える? サービスや費用を徹底解説
「ショートステイ」とは、自宅で生活している人が 1日~最長30日まで施設に入居し、介護サービスを受けられるもの。介護保険を使えるものと使えない場合があります。介護する家族にとっても便利な「ショートステイ」の利用条件や費用、活用法など実例とともに紹介します(監修・社会福祉士/ライトさん)。
ショートステイとは?
「ショートステイ」とは、自宅で介護が必要な人が特別養護老人ホームなどの施設に短期間入所し、日常生活上の支援や機能訓練を受ける介護サービスです。1泊2日から利用でき、家族による介護が一時的に難しい場合や、介護負担を軽減する目的としても利用できます。
「ショートステイ」には、以下の3種類があります。
1.短期入所生活介護
「短期入所生活介護」は、介護が必要な人が高齢者施設などに短期間入所し、食事・入浴などの日常生活上の支援や機能訓練を受けられる介護サービスです。
「ショートステイ」だけを専門とする施設(単独型)と、特別養護老人ホーム(以下、特養)などに併設されている施設(併設型)があります。
介護保険を利用して1日単位で施設に入所できますが、連続して利用できる日数は、最長30日までと定められています。ただし、要介護認定の段階ごとに介護保険適用内で利用できる日数が違うので、介護保険適用内で利用したい場合は、利用可能な日数を事前に確認しましょう。
2.短期入所療養介護
「短期入所療養介護」は、「医療型ショートステイ」や「療養ショートステイ」とも呼ばれており、日常生活の介護、機能訓練の他に、医師や看護師による医療的なサポートを受けることができます。おもに「介護老人保健施設」(老健)で提供されていて、こちらも介護保険が適用となる利用日数は最長で30日までです。
3.介護保険外のショートステイ
民間の介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などが提供する「ショートステイ」は、基本的に介護保険外サービスで全額自費になります(一部、条件付きで保険適用になる施設もある)。
サービス内容は、短期入所生活介護などと同様、日常生活の介護、機能訓練などが受けられます。その施設に長期で入居する前の“体験入居”として利用されることもあります。

「ショートステイ」とは、在宅介護を受けているかたが一時的に入居し、介護サービスを受けられるもの
ショートステイの対象者は?
【介護保険内で利用する場合/対象者】
・65才以上の要介護認定で要支援1・2や要介護1~5の認定を受けた人
・40才以上64才以下で特定疾病により要介護認定を受けた人
【介護保険外で利用する場合/対象者】
要介護認定を受けていない人や自立した生活が送れる人でも利用できます。
「ショートステイ」の利用目的
「ショートステイ」は、基本的に自宅で生活をしていて常に介護が必要な人が、以下のような場合に利用できます。
・在宅介護サービスが一定期間利用できないとき
・体調や病状が不安定なとき
・介護する家族(介護者)が病気のときや特別な事情で介護ができない場合
・介護者の身体的・精神的負担を軽減したいとき
なお、介護保険を利用する場合は、事前に要介護認定を受ける必要がありますので、ケアマネジャーに相談してください。
介護保険適用外で利用する場合は、要介護認定やケアプランがなくても利用できますが、契約する施設によって利用条件が異なるので、施設ごとに確認しましょう。
「ショートステイ」の部屋のタイプ
施設ごとに違いがありますが、おもに4タイプの居室があります。
【1】従来型個室:利用者1人だけの個室タイプ。洗面台とトイレは室内にあることが多いです。
【2】多床室:医療施設に多く見られる部屋タイプで1部屋を2~6人で利用する相部屋形式の居室です。
【3】ユニット型個室:現在主流の10人ほどを1つのユニットとして共同生活する個室。ベッドなどがある個室がリビングなどの共有スペースを囲むように配置されています。トイレや浴室も共有スペースにある場合が多いです。
【4】ユニット型個室的多床室:個室風の多床室。間仕切りなどで区切った各人のスペースと、ユニット(10人程度)で利用できるリビングなどがある居室。
「ショートステイ」中の過ごし方
施設に宿泊し、食事・入浴・トイレなどの介助を受けながら過ごします。また、レクリエーションや機能訓練などをして心身の健康を保つほか、自宅での生活が続けられるよう指導を受けます。
「ショートステイ」にかかる費用
介護保険で「ショートステイ」を利用する場合、要介護度や施設、本人の収入によって利用料が変わります。
介護サービスの基本料金と日常生活費を合わせて、1泊2日の利用料は、約3000円~1万円が目安となります(多床室を1割負担で利用の場合)。
要介護認定を受けていない人でも、退院直後など生活上の介助が必要な場合など、有料老人ホームなどで「ショートステイ」を利用することができますが、全額自費負担となります。
料金内訳
・基本料金(介護保険適用)
併設型・多床室の場合 要支援1:446円/日~要介護5:874円/日
※施設の形態や居室の種類・職員の配置などによって異なります。
・サービス加算費(その他保険適用)
・自己負担分
日常生活費(食費・滞在費・理美容代)など
「ショートステイ」の利用者負担額
日常生活費(食費・滞在費・理美容代など)などは、別途負担する必要があります。サービス費用は、施設の形態、居室の種類、職員の配置などによって異なります。
サービス費用の設定|利用者負担(1割)(1日につき)、併設型・多床室の場合※
要支援1:446円
要支援2:555 円
要介護1:596円
要介護2:665円
要介護3:737円
要介護4:806円
要介護5:874円
※併設型のほかに単独型、多床室のほかに個室の設定もあります。ユニット型の設定もあります。
※参考/厚生労働省「短期入所生活介護(ショートステイ)」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html
料金を抑えられる軽減制度もある
介護保険サービスで「ショートステイ」を利用する場合、「特定入所者介護サービス費」と呼ばれる軽減制度を活用できます。
これは、所得や資産が一定金額を下回る人を対象に費用を軽減する制度。負担限度額を超えた居住費と食費の負担額が介護保険から支給されます。利用するには、市区町村に申請して認定を受ける必要があります。
ショートステイのメリット・デメリット
<メリット>
・短期間でも利用できる
・要介護者の心身機能の維持や改善に努められる
・家族(介護者)の負担を軽減できる
・施設への長期入所への予行練習になる
※参考/厚生労働省「サービスにかかる利用料」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
<デメリット>
・利用日数に限りがある
・介護保険を利用しないと自費となり高額になる
・部屋の空きがなく希望の日に利用できない場合がある
申し込み手続きの流れ(介護保険適用の場合)
介護保険を利用する場合は、事前に要介護認定を受ける必要があります。
1.見学
ケアマネジャーに相談し施設に問い合わせて見学
2.申し込み
基本的にはケアマネジャーを通して施設に申し込む
必要書類を提出
3.面談
4.判定
5.結果通知
6.ケアプランの作成
7.契約
契約書の締結や各種手続きを行う
「ショートステイ」活用の実例と実態をレポート
母を介護中のR60記者が、施設見学や働くスタッフに取材した実例をもとに、「ショートステイ」を選ぶポイントや入居者の事例を紹介します。
※プライバシーに配慮し表現を一部変えています。
「ショートステイ」を渡り歩く実態も
「介護保険内で『ショートステイ』を利用する場合、1回の入所につき最長で30日までと決まっています。
ただ実際に数週間利用して自宅に戻られると、ご家族のほうが再び在宅で介護することが難しくなっているというケースもあるようで…。ほかの『ショートステイ』を提供している施設に移って行かれるかたもいます。
また、「特別養護老人ホーム」の待機中に『ショートステイ』を渡り歩いているという実態があります。
長期利用を望む場合、まずはケアマネジャーや施設や提供している事業所に相談して、より良い方法を伺ってみて下さい」(介護施設職員、以下同)
実際、厚生労働省によると、「ショートステイ」を31日以上連続利用の主な目的は、「『特養』入所までの待機場所として」と答えた人が89.2%と最も多く、31日以上の連続利用者がいる事業所については最も長期間の連続利用日数が平均382.0日となっています。
※厚生労働省「短期入所生活介護」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000650020.pdf
「連続利用の上限は30日までと決まっていますが、それ以上の長期に利用したい場合は、30日の次の1日分を全額自己負担して、32日目以降はまた介護保険を適用して継続することができる場合があります。長期入所を希望する場合は、理由届出書を自治体に提出して認可してもらう必要がありますので、ケアマネジャーに相談してください。
そもそもショートステイは短期入所して自宅に戻り生活を維持できるようにすることを目的にしています。ですから、提供している事業所に対する介護報酬も31日目から減算されてしまいます」
1週間の利用で仕事や自分の用事ができた
「在宅介護していた80代の母親が『ショートステイ』を1週間利用したときのこと、洗濯物を受け取ってみると、母の物ではない無記名の肌着が混じっていました。母の肌着には名前をサインペンで書いていたのですが、名札を縫い付けた方がわかりやすいということがわかりました。
洗濯物のちょっとしたトラブルはありましたが、私自身とても介護に疲れていましたし、仕事や大切な用事も済ませられたので、『ショートステイ』を利用できたのはとってもありがたかったです」(50代女性)
認知症の父が「帰りたいと言い出して…」
「老々介護中だった両親。母親が入院することになり、軽度の認知症だった父親が『ショートステイ』を利用しました。
ところが、父親は帰宅願望が強く、まわりの利用者にも迷惑がかかってしまったため、やむなく3時間で帰宅させることに…。認知症の利用者の対応に慣れたスタッフがいるか、もう少し確認してみてからの方が良かったと反省しています」(50代女性)
「ショートステイ」は、小さな事業所から特養や介護付有料老人ホームまでさまざまな高齢者施設で提供されています。そのため、施設の体制やスタッフの質も施設によってさまざまです。認知症の人への対応についてなどは、事前に確認しておくといいでしょう。
また、本人の意思や気持ちを尊重することも大切。特に認知症の人の中には、環境が変わるだけで不安になる人もいます。まずは「デイサービス」から利用してスタッフと顔なじみになってから「ショートステイ」を利用するといいとのこと。
「ショートステイ」選びのチェックポイント【まとめ】
□本人の意思や気持ちを大切に考える
□介護保険で使える利用日数の確認をする
□具体的にどんな介護サービスが受けられるかを施設に確認する
□馴染みの施設を選ぶ
記者のまわりにも「ショートステイ」を活用している人は多く、「介護に疲れてしまったときや、仕事や息抜きの旅行などのときに利用できる場所があるのは心強い!」と感じている人も。「ショートステイ」は、介護する人、される人にとっても心強い味方と言えるでしょう。
監修者
社会福祉士・ライトさん
地域包括支援センターの社会福祉士として勤務。Instagram「ライト@介護保険のスペシャリスト」として情報を発信し、2万人を超えるフォロワーに支持されている。介護保険サービスの活用から、高齢者施設の解説など、スライドを駆使しながらわかりやすく伝えている。Instagramで2年間発信し続けた集大成として『世界一わかりやすい介護保険サービスの教科書』(電子書籍)と『世界一わかりやすい介護保険サービスの解説動画』を2023年9月2日にリリースし、好評販売中。
https://note.com/light_blog/n/nd0e2b21bd38f
取材・文/本上夕貴 構成/編集部 イラスト/イメージマート