倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.65「夫の再手術、執刀医の腕は運次第?」
漫画家の倉田真由美さんの夫、叶井俊太郎さん(享年56)がすい臓がんと宣告されたのは2022年。「最期は病院ではなく家で過ごしたい」と決心するまでには、手術や入院中の経験が深くかかわっている。胆管炎の手術が失敗し、再手術となったときのエピソードを振り返る。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
胆管炎の再手術
23年初秋、胆管炎を起こし高熱が出た夫は、詰まった胆管を通すための手術をしました。
でもその手術が失敗し、夫は激痛に見舞われました。強いモルヒネが入った痛み止めも投与されましたがそれで痛みが完全に取れるわけではなく、「痛すぎる、つらい」と入院している夫からしばしば連絡がありました。
数日後の再手術。ハラハラしながら連絡を待っていると、
「手術成功した。痛みはほとんどなくなったよ」
夫から連絡がありました。
よかった! 喜びと共に、こんなに急激に痛みが出たり治ったりすることにも少し驚きました。
見舞いに行くと思ったよりずっと元気そうで落ち着いた様子の、いつもの夫がいました。最初の手術で胆汁を管で体外に出したのですが、失敗後はずっと濁った黒っぽい色だったのが、黄色く澄んだ色に変わっていました。
執刀医のこと
「やっぱりF先生は手術が上手いね」
失敗した手術は、今までずっと胆管のステント交換をしてくれていたF先生ではない医師でした。なぜ今回最初からF先生が執刀しなかったかは分かりません。
手術の腕は医師によって差があるのでしょうが、私たち患者は執刀医を選べないし、そもそも誰がうまくて誰が下手かを知る術はありません。運次第ということになってしまいます。
この後、体内にステントを入れ、更に今は体外に出している管を戻さなくてはなりません。手術はまだ続きます。
「退院したら、どこか旅行でも行きたいね」
「どこがいい?」
「まずは近場かな」
痛みがなくなった夫と、家族旅行に行く話をしたりしていました。再手術が無事に終わったら。でも、そううまくは行きませんでした。
夫が全ての闘病期間を通し、最も苦しんだのは次の手術です。
(次回につづく)
倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」を1話から読む
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。