【えっ、ダメなの?】聞こえにくい人に耳元で話しかけるのがNGの理由 会話の工夫や配慮を解説【専門家が教える難聴対策Vol.17】
「高齢のご家族や友人がもしかして聞こえにくい?」と感じたら、話しかける側にもできる対策があると、認定補聴器技能者で補聴器専門店の代表を務める田中智子さんは語る。聞こえにくい人との会話をしやすくするための工夫や配慮をはじめ、難聴の早期発見に役立つ便利なツールも教えてもらった。
教えてくれた人
認定補聴器技能者・田中智子さん
うぐいす補聴器代表。大手補聴器メーカー在籍中に経営学修士(MBA)を取得。訪問診療を行うクリニックの事務長を務めた後、主要メーカーの補聴器を試せる補聴器専門店・うぐいす補聴器を開業。講演会や執筆なども手がける。https://uguisu.co.jp/
相手に聞き取りやすく話を伝えるためのコツ
ここ数年、メディアで「難聴」にまつわる話題が増え、以前よりも「聞こえにくい人」への共感や配慮が社会に浸透してきていると感じています。難聴の対策には、本人が補聴器をつけることのほか、話しかける側にもできることがあります。
補聴器を作るために店舗にいらっしゃるお客様は、難聴を抱えていらっしゃるため、私自身、お客様とお話しをするときにどうしたらよく聞こえるか、会話がスムーズにできるか、日頃から考えています。
認定補聴器技能者として活動する中で、聞こえに関する勉強会やセミナーに参加しているのですが、聞こえにくいかたとの会話術をとあるセミナーで学びました。これがとても役立つ方法なので、ポイントをお伝えしていきます。
【1】正面から話す
まず、聞こえにくくなっているかたと話すときは、相手に自分の口元を見せることが大事です。耳元で大声で話す人がいますが、声が大きすぎると音が割れて余計に聞こえづらく、耳を傷めることにもなりかねません。正面から少し大きめの声で、口元を見せながらゆっくりお話してみましょう。
【2】合図をしてから話す
次に、話しかける前に「合図」を送ります。難聴のご高齢のかたはとくに、急に話しかけられても気がつかなかったり、びっくりしてしまったりすることもあります。まず、やさしく肩や腕をトントンと叩いて、「これから話をしますよ」という合図を送り、相手の顔をこちらに向けてもらいます。
さらに「今から○○のお話をしますね」などと、話の趣旨をお伝えすることで、相手は心の準備ができて、会話がしやすくなります。
【3】文節ごとにはっきり話す
話すスピードがゆっくりすぎたり、1文字ずつ区切って話したりすると、かえって理解しにくい場合があります。話をするときは、「文節ごと」を心がけてみましょう。
NG「きょ|う|は|カ|レー|を|た|べ|ま|し|た|か?」
OK「きょうは|カレーを|食べましたか?」
このほか、周りがうるさいとより聞こえにくくなるため、重要なお話をするには、静かな場所を選ぶのがいいでしょう。
また、加齢性の難聴は、高い音(子音)から聞く取りにくくなります。とくに「し」「か」「さ」などの子音は聞き取りにくいことが多いようです。
たとえば、「7時(しちじ)」は、「し」が聞き取れずに「1時(いちじ)」と聞き間違えることが多いので、「夜のななじ」、「19時(じゅうくじ)」と言い換えるといいでしょう。
「聞こえにくさ」をチェックするための便利ツール
難聴の対策として話しかける側の工夫も大事ですが、やはりご自身が聞こえにくいことに早めに気づくことも大切です。難聴かな?と思ったら、耳鼻咽喉科を受診いただきたいのですが、その前に自宅で簡単にできるセルチェックもあります。私が注目する難聴の早期発見に役立つ便利なアプリやユニークなオンラインサービスをご紹介します。
→もしかして難聴かも?「聞こえ」を指で簡単にチェックする方法を伝授
言葉を聞き取る能力をチェックできるアプリ
◆みんなの聴脳力(R)チェック/ユニバーサル・サウンドデザイン
https://u-s-d.co.jp/mimicare/
難聴者向けのサポート機器を販売するユニバーサル・サウンドデザインが手がけるアプリ『みんなの聴脳力チェック』。
こちらは、ヒアリングフレイル※の予防を目的とし、聴力だけでなく言葉を聞き取る力“言語聴取能力”を手軽にセルフチェックできるというもので、一部の自治体や医療機関などでも採用されています。
※ヒアリングフレイル/聴覚機能が低下して、⼈や社会とコミュニケーションがうまくとれず、⼼⾝にストレスを抱えたり⽣活機能が衰えたりする状態のこと。
チェックでは、「あ」「い」など一文字ずつの音が20個再生され、聞こえた音をひらがなで入力し、100点満点で採点されます。
一般的な聴力検査で聞き取るのは「ピー」「プー」という単純な機械による音ですが、このアプリでは⽇本語の音を聞き取る点がユニーク。母音と子音の聞き取りの状態もチェックできるプログラムになっています。
耳年齢が動物でわかる!?オンラインで楽しく聴力チェック
◆あなたの耳はナニ耳?/シャープ
https://jp.sharp/mlp/33animal/
家電メーカーのシャープが販売する補聴器『メディカルリスニングプラグ』のオンラインコンテンツ『あなたの耳はナニ耳?』。こちらは、ウェブ上で体験できる耳年齢チェック。いくつかの周波数の音をヘッドホンで聞き、「聞こえた」「聞こえない」にチェックを入れていくと、可愛い動物のイラストとともに耳年齢が表示され、自分が「ナニ耳」であるかを体験できます。
耳年齢10~20代は「コウモリ耳」や「イルカ耳」、30代は「オオカミ耳」、40代は「フクロウ耳」、50代は「ラッコ耳」、60代は「ゾウ耳」「ウマ耳」、70代以上は「カモ耳」や「カピバラ耳」など、結果によってさまざまな動物が登場。動物の特徴にもとづいた聞こえの状態やアドバイスが表示され、読み物としても楽しめます。
ご紹介したアプリやウェブ上の結果は、診断用の聴力検査ではないので、あくまで参考程度に。心配な結果が出た場合には、耳鼻咽喉科(補聴器相談医)を受診してくださいね。
★うぐいす智子先生のワインポイントアドバイス!
聞こえにくい人との会話術をご紹介しましたが、難聴が進行してしまうと話しかける側にとっては負担になってしまうことも。大切な人とのコミュニケーションを円滑にするためにも、早めの対策が肝心ですね。
聞こえにくい人も話しかける人も相手への想いやりと早めの対策が肝心
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