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補聴器選びの基本|耳あな・耳かけ型タイプのメリット・デメリット「夫が購入を即決した補聴器は正解?」【専門家が教える難聴対策Vol.14】

 補聴器はどんなタイプかによって、その後の使用感やお手入れ方法なども変わってくるという。実例相談をもとに、補聴器のタイプによるメリット・デメリットや選び方のポイントを、認定補聴器技能者で補聴器専門店を経営する田中智子さんに解説いただいた。

教えてくれた人

認定補聴器技能者・田中智子さん

うぐいす補聴器代表。大手補聴器メーカー在籍中に経営学修士(MBA) を取得。訪問診療を行うクリニックの事務長を務めた後、主要メーカーの補聴器を試せる補聴器専門店・うぐいす補聴器を開業。講演会や執筆なども手がける。https://uguisu.co.jp/

相談事例「夫の補聴器の購入の仕方に疑問」

 知人の女性(Aさん、60代)から、「夫が選んだ補聴器が正解だったのかよくわからなくて…」というご相談がありました。ご主人は60代後半になり、だんだんテレビの音量が大きくなり、話しかけても生返事のことが増え、難聴の進行が心配とのこと。

「補聴器なんて必要ない」と渋っていたご主人でしたが、なんとか耳鼻咽喉科を受診。その後、補聴器専門店に行ってみると――。

「夫は耳あなに入れるタイプの補聴器を即決、その場で耳穴の型取りをして帰ってきたというんです。電池交換を定期的にしなければいけないタイプ、しかも片耳だけ。価格は約20万円でした。最新式の補聴器は両耳で100万円くらいすると思っていましたから、これでよかったのかどうか…」

 ご本人は「使いやすいし、だいぶ慣れてきた」と言っているものの、テレビの音量は以前と変わらず大きいまま。ご主人の選択は果たして合っていたのかと疑問を感じていらっしゃいます。

 まずAさんのご主人は、自ら耳鼻咽喉科を受診して補聴器をつける決断をされました。そのこと自体がとても素晴らしいと思います。この一歩がなかなか踏み出せないシニア世代のかたは多いんです。

 Aさんがモヤモヤされているのは、「もっと色々なタイプを試してから決めるべきでは?」ということではないでしょうか。そこでまずは、補聴器のタイプについてお話していきましょう。

補聴器のタイプ「耳かけ型」と「耳あな型」が主流

 現在販売されている補聴器は、「耳かけ型」と「耳あな型」が主流です。市場のシェアは、「耳かけ型」が約6割、「耳あな型」が約4割となっています。

 このほか胸ポケットなどに入れて使う小型ラジオのような「ポケット型」もありますが、こちらは補聴器の全体の出荷台数の1%程度となっています。

 補聴器の代表的な2つのタイプ「耳かけ型」と「耳あな型」それぞれのメリットとデメリットを挙げていきます。

「耳かけ型」補聴器のメリット

 多くのかたが補聴器をイメージされる時に浮かぶ形が、「耳かけ型」のタイプではないでしょうか。各補聴器メーカーが新商品を出す際には、最初に「耳かけ型」タイプから発売することが多く、「耳かけ型補聴器」には各メーカーの最新・最高の技術が搭載されているケースが多いんです。

「耳かけ型」は、比較的どんな人にとっても付け心地が良く、耳に入れる部分(耳栓)は、サイズをや種類を選べるほか、自分の耳穴に合わせて作ることもできます。オーダーメイドで作る耳栓のことを、イヤーモールドと呼びます。

 メーカーや種類にもよりますが、1~3万円程度でイヤーモールドを作ることができ、耳穴にフィットして音がよく聞こえ、ハウリングのリスクも下がることが多いようです。

・各メーカーの最新の技術を堪能できる

・耳栓も複数のタイプを選べ、オーダーメイドもできる

・自分に合うものを探しやすい

「耳かけ型」補聴器のデメリット

 「耳かけ型」のデメリットを挙げるとすれば「大きいものだと補聴器をつけていることがわかりやすい」「存在感が出てしまう」ということでしょう。ただし、「耳かけ型」でも小型で目立たず、装着していることがわからないものも多くあります。

 耳の後ろに掛けて使うため、マスクやメガネなどと併用することが多い場合には、煩わしさを感じることがあるかも知れません。

・大きいものを選ぶと目立つ

・マスクや眼鏡と干渉してしまう

「耳あな型」補聴器のメリット

「耳あな型」は耳の穴にすっぽりと収まるため、目立たず付けていることが周囲にわかりにくい。慣れてしまえば、自分の体の一部のように馴染み、眼鏡やマスクも気にせず、快適に使うことができます。

 自分の耳の穴の形に合わせて、オーダーメイドすることがほとんどなので、しっかりフィットし、耳から落ちてしまうリスクも大きく低下します。

 耳穴に合うオーダーメイドはとくに、補聴器から出た音がどこにもぶつからずに鼓膜まで届くため、音がキレイに耳に届けられるというメリットもあります。

・目立たない

・眼鏡やマスクが気にならない

・耳にフィットし落ちにくく、効率よく音が届けられる。

「耳あな型」補聴器のデメリット

「耳あな型」が、耳の穴に本体がすっぽり収まるだけに、人によっては自分の声がこもって聞こえてしまうということもあります。

 また、補聴器が耳穴の中で密着することで蒸れやかゆみを感じるかたもいらっしゃいます。特に耳垢がやわらかいタイプの人は、汚れが補聴器に入りやすいため、こまめなメンテナンスが必要になることも。

「耳あな型」には、充電式・電池式が選べます。メーカーや機種によっては、電池タイプしか発売していないものもあり、その場合は装着や電池交換などの際には手先による細かい作業を要し、人によっては扱いづらく感じることもあるでしょう。

 耳かけ型は最新の技術が結集していると書きましたが、逆に言うと、耳あな型は、搭載されている機能が少ない場合があり、聞こえ以外の機能を重視したい方には適していないことがあります。

・自分の声がこもって聞こえる人も

・耳に密着するので蒸れやかゆみが心配な人も

・電池タイプだと交換が手間

・メーカーによっては、2~3世代前の機能を搭載した機種しかない

耳あな型でもお試しができるのか?

 当店の場合は、初回来店時に、「耳かけ型」「耳あな型」それぞれのメリット・デメリットをお話して、どちらがいいかご本人や家族と決め、貸し出しをして、試していただきます。

 「耳あな型」を試したいとなった場合には、多くの日本人に合うように作った形の耳穴型の補聴器を各メーカーごとにご用意していますので、まずはそれを試してもらい、よさそうだということであれば、次に耳の型取りをしてオーダーメイドで作る段階へ進むケースが多いです。

 店舗によっては耳あな型はお試しできないこともありますし、選び方やおすすめの仕方はさまざまですが、ご本人が「これがいい」と納得して決めたのであれば、その選択は間違いではないと思います。

片耳だけの購入で良いのか?

 補聴器工業会の調査(2022年)によると、補聴器の両耳装用は43%、片耳57%となっています。最初の1台は片方からというかたも多いようですが、当店では聴力に左右差がなければ、両耳装用をおすすめしています。

 眼鏡を作るときに片方だけ作る人はいないように、補聴器も両耳に装着でしたほうがより聞こえ方が自然になり、方向感が分かるなどメリットが大きく、当店のお客さまは8割が両耳装用となっています。

 しかし、日中、ベットの上や決まった位置で過ごすことが多いなど、片方だけの装用でも大丈夫なケースもあるので、ご相談しながら決めていくことになります。

補聴器は購入後にも「慣れる」プロセスが大事

 補聴器を選ぶときは、「試して納得してから購入する」「ご自身が使いこなせるものを買う」ことが大切だと考えています。相談者さんのご主人は、ご自身が気に入って購入されたのですから、次のステップは「しっかり聞こえるようになること」。そのためにも、定期的にお店に通って適切な聞こえに調整していけるといいですね。

★うぐいす智子先生のワインポイントアドバイス!

「補聴器はさまざまなタイプがあります。自分に合うタイプはメリット・デメリットの両方を検討して選んでくださいね!」

「自分に合うタイプはメリット・デメリットの両方を検討して選ぼう」

取材・文/立花加久 イラスト/奥川りな

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