倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.49「妹と過ごした日」
漫画家の倉田真由美さんの夫、叶井俊太郎さん(享年56)はすい臓がんにより2月16日に旅立った。葬儀の手配などをサポートしてくれたのが福岡に暮らす実の妹さんだ。姉妹で過ごしたある日、叶井さんの話題になって――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
妹と過ごした時間
福岡から、妹がうちに遊びに来ていました。一週間ほどの長逗留でした。
夫がいなくなった時も妹がすぐに来てくれて、さまざまな面で助けられました。妹がいなかったら葬儀などの事務的な手続きをこなせていたか、怪しいところです。
ほとんど何も考えられず、葬儀社の営業にほぼうなずくしかできなかった私に代わって、質問や交渉をしてくれました。
今回は二人で小旅行をしたり、美味しそうなランチやスイーツの食べ歩きをしたり、楽しい時間を過ごせました。若い頃はそうでもなかったんですが、歳を重ねるに従い妹とは仲よく一緒に遊ぶようになってきました。
夫と妹の相性は…
でも実は妹は、私の夫とはあまり相性がよくありませんでした。
夫は癖の強い人だったので、合う人、合わない人ははっきりしていました。妹は生真面目なタイプなので、夫の、特に金銭面のいい加減さなどに呆れていたようです。
「それにね、ちょっと怖かったよ、叶井さん」
妹は言います。
「え?そう?」
「うん。真由美さんは気づかんかったかもしれんけど、話し方とか威圧感あったよ」
「そうかなあ」
「真由美さんは叶井さんのこと『穏やかな人だった』って言うけど、私にはそう思えんかった。他の人もそうなんやない?」
夫は私や娘に声を荒げたことは一度もありません。でも確かに、仕事相手とはよくトラブルになっていました。喧嘩をしたこともあるとは聞いています。
「そうか、あの人、うちで穏やかだっただけか」
「真由美さんとは喧嘩にならん相性やった、ってことやね。私は絶対無理やもん、叶井さん」
そう、私とは相性よかった。結局一度も彼の怒鳴り声を聞かないまま、私もキレたり大声をあげたりしないまま、家族の時間を過ごせました。「楽しい」もたくさんあったけど、「嫌なこと、不快なことがない」というのも貴重なことです。お金では解決できない、根本的な相性のよさが必要だから。
そんな相手と結婚生活を送れたことを嬉しく思う気持ちと、そういう相手を失ってしまった悲しい気持ちがない交ぜになっていつも苦しくなります。
でも、妹といると独りでいるよりずっと早く明るい気持ちに戻れます。友だちでもそうですが、寝食常に一緒に過ごせる、「同じ屋根の下で暮らせる」のは妹だけです。
また近いうちに来るね、と妹は帰って行きました。次は妹とどこに行こう、と今から考えています。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』