サ高住を見学する際の6つのチェックポイント「設備の充実度だけでなくサービス面の比較が大切」【専門家解説】
施設探しの大きな決め手となる「見学」。気になる施設が見つかったら、実際に見学することで、パンフレットやインターネットの情報では実感しにくい施設の雰囲気や設備、サービスの充実度を把握できます。さまざまな施設の中でも、とくに「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)は、複数を見比べてサービスを確認すべきだという。介護職員やケアマネの経歴を持つ、中谷ミホさんに「サ高住を見学する際の注意ポイント」などについて詳しく解説いただきました。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
サ高住は「複数」の施設を見学して違いを比較しよう
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、高齢者が安全に暮らせるバリアフリーの賃貸住宅のこと。一般の住宅と同じように自由度の高い生活ができ、安否確認や生活相談などのサービスが受けられます。サ高住は、事業者ごとに提供するサービスや費用が異なるだけでなく、利用できる生活支援サービスもさまざまなので、できるだけ複数の施設を見学して比較することをおすすめします。
サ高住「サービス付き高齢者向け住宅」とは?費用や入居条件、サービスを解説【専門家監修】
サ高住を比較検討する際に注目すべき具体的なポイントは、以下の通りです。
追加で受けられるサービスはどんなものがあるのか確認
サ高住では追加で受けられるさまざまな生活支援サービスが用意されており、入居者はその中から必要なものを選んで利用することになります(※サ高住の基本サービスは安否確認と生活相談の2つのみです)。
見学先のサ高住では、どのようなサービスが用意されているか、必要なサービスが受けられるかをしっかりと確認しておきましょう。
生活支援サービスには、主に以下のようなものがあります。
●食事提供サービス
●買い物や通院などの付き添いサービス
●日常生活サービス(掃除・洗濯・買い物代行など)
●介護サービス(※外部の介護サービス事業者と契約)
●医療サービス(併設・提携の医療機関による訪問診療、訪問看護など)
●緊急対応サービス
夜間の人員体制
夜間の人員体制もサ高住を比較する際に欠かせないチェックポイントです。
サ高住では、日中には介護スタッフや看護スタッフが常駐しますが、夜間の配置は義務付けられていません。夜勤体制を整えて夜間もスタッフを配置するところもあれば、緊急通報サービスのみで対応するところもあるなど、各施設によって異なります。
なお、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた「介護型」と呼ばれるサ高住であれば、夜間も介護スタッフが常駐し、手厚い介護が受けられる体制が整っています。介護型のサ高住は、全国的に数が少ないのですが、気になる方は調べてみると良いでしょう。
認知症の受け入れ・対応
認知症の方の受け入れも施設により異なります。受け入れ可の施設もあれば、対応していない場合もあるため、見学時に必ず確認しましょう。
なお、認知症の方を受け入れるサ高住でも、部屋を間違えるなどの混乱や認知症による一人歩きなどの症状が出てくると、退去を求められる場合があります。建物のセキュリティやスタッフの見守り体制なども含め、どのような症状まで暮らせるのかを施設側に確認しておくことも大切です。
月額費用の総額
パンフレットやホームページに記載されている月額費用は、基本的なサービスのみの金額となっていることが少なくなく、食費や追加の生活支援サービスの費用が含まれていない場合もあります。そのため、これらの費用も含めた月額総額を確認したうえで、各施設を比較することが大切です。
見学の前に準備しておくこと
サ高住の見学には、予約が必須です。予約なしで突然訪問すると、施設側の都合で見学を許可してもらえない場合があります。希望する日時に見学が可能か、早めに問い合わせを行うことが大切です。
パンフレットやホームページの情報を頭に入れておく
パンフレットやホームページはしっかりと読み込み、見学時に見たいところや聞きたい内容をまとめておきましょう。
見学当日にその場で質問を考えると、うまく伝えられなかったり、大切なことを聞き忘れたりする可能性があるためです。また、パンフレットに記載されている内容と見学時の説明や実際の施設の様子に違いがあれば、その場で質問できるので、より正確な情報を得られます。
見学は複数人で
見学する人数は、入居する本人と身元引受人、親族1〜2人程度が適切です。複数人で見学することで、1人では気づけないポイントに気づきやすくなり、より客観的な判断が可能になります。
当日持参するものリスト
見学当日は、以下のものを持参しましょう。
□ 筆記用具(気になったところをメモする)
□ カメラ(スマホでもOK)
□ メジャー(居室の広さや収納スペースのサイズを測る)
□ 質問事項をまとめたもの
□ メモ帳・筆記用具(気になったところをメモに残す)
メモやカメラで記録しておくと、複数のサ高住を比較検討するときの材料となります。
見学時にチェックしたい6つのポイント
見学時は、設備の充実度に注目しがちですが、以下の「見学のチェックポイント」に基づいて冷静にチェックしていきましょう。
1.建物全般
□ 明るく、清潔な雰囲気か
□ 臭いなどはどうか
□ 緊急時の避難経路
□ 内装、インテリアは好みに合うか
2.共用設備
□ 共有スペースの広さ、明るさ
□ 廊下は十分な幅があるか
□ エレベーターの広さ
□ 季節を感じられる場所(テラス、庭)があるか
車いすを使用する方は、廊下の幅を確認することをおすすめします。サ高住の場合、廊下の幅の最低基準は78cm(柱のある部分は75cm)以上と定められています。しかし、車いすで移動する場合は、廊下の幅が90cm以上あると快適に通行でき、廊下を曲がる際もスムーズです。
3. 居室間取り、広さ
□ 日当たり、風通し収納スペースの大きさ
□ 備付家具・電気製品の種類
□ ナースコールは手に届く位置にあるか
□ 手すりの位置
□ トイレ・洗面台が車椅子でも使いやすいか
□ 浴室の広さ、浴槽の深さ
□ 使いやすいキッチンか
4. スタッフ
□ 清潔感がある服装、身だしなみか
□ 笑顔で対応し、丁寧な言葉づかいをしているか
□ すすんで挨拶ができるか
5. 周辺の環境
□ 家族や親戚の家からの距離や所要時間
□ 最寄り駅からの交通手段
□ 周辺道路の交通量
□ 病院、医療機関が近くにあるか
□ 近隣に商店やコンビニがあるか
6. 食事
□ 食事時間
□ 食事の提供体制(施設内で調理するのか、外部の配食サービスか)
□ メニューを選択できるか
□ 特別食(介護食・病態食)の対応と内容
□ 居室配膳が可能か
食事サービスを受けられるサ高住では、食事の提供方法を確認しましょう。施設が食事サービスにどれだけ力を入れているかを見極めるポイントとなります。
また、可能であれば試食して味を確認することをおすすめします。見学の予約時に試食が可能かどうかを確認しておくと良いでしょう。
まとめ
サ高住の見学は、実際に足を運ぶことでしか分からない現場の雰囲気や清潔感、スタッフの対応状況を直接確認して見極められる貴重な機会です。また、希望に合うサ高住を見つけるためには、複数の施設を見学して、サービス面や人員体制、費用面などを比較することが大切です。この記事が、理想のサ高住を見つけるヒントになれば幸いです。