使用済み紙おむつは再生できる!<入れ歯・紙おむつ・薬シート>シニア世代に注目のSDGs リサイクル最新事例をレポート
資源を大切にするための活動「リデュース」「リユース」「リサイクル」は3Rとも呼ばれ、持続可能な開発目標であるSDGsの観点から、個人・団体・企業が積極的に取り組んでいる。実は、薬のシートや紙おむつ、入れ歯など、介護・シニア世代にとって身近なものもリサイクルできる。新たにSDGsな活動をはじめてみませんか?
「紙おむつ」リサイクル技術が進化中!
日本では、乳幼児・大人用の紙おむつは年間で約220万tも捨てられている。焼却処分されるのがほとんどだが、使用済みの紙おむつは水分を含んでいるので燃えにくく、多くの固形燃料を使用して燃やさなければならないので、焼却コストもかかっている。
そんな紙おむつだが、適切な処理をして素材を再生し、固形燃料・建築資材・猫用トイレの砂などにする方法も生み出されている。また、驚くことに再生素材から再び新品の紙おむつを製造する技術も開発されているという。
大手日用品メーカーのユニ・チャームでは、紙おむつを独自の技術で新品の紙おむつの材料として再利用する「紙おむつの水平リサイクルシステム」を構築。それにより森林資源の利用や環境への負荷を軽減できるという。
ユニ・チャームの広報担当の藤巻尚子さんに、紙おむつ(同社では紙パンツと呼ぶ)のリサイクルで苦労した点や今後の展望を聞いた。
「数多くの苦労がありましたが、中でも『オゾン処理による滅菌技術』を確立することが大変でした。
紙パンツをリサイクルするというと抵抗を感じるかたもいると思いますが、衛生的に処理する独自の方法を生み出すことでリサイクルが可能になりました」
鹿児島県の志布志市や大崎町の自治体との協力を得て紙おむつ回収に取り組んだところ、リサイクルパルプを使用したトイレットペーパーやメモ用紙などを作成して提供できたとのこと。
「使用済み紙パンツの『水平リサイクル』によって抽出・精製したパルプを原材料に使用したのが、大人用紙パンツ『ライフリーRefF一晩中安心さらさらパッド』と『ライフリーRefF横モレ安心テープ止めMサイズ』。
2022年5月に、南九州地区の一部の介護施設様や病院様で実際にご利用いただき、現在では約60か所でご利用いただいております。
ご好評をいただき、2023年10月には、リサイクルパルプを使用した『ライフリーRefF横モレ安心テープ止め(S/Lサイズ)』を追加で発売しました」(ユニ・チャーム広報室・藤巻尚子さん)。
同社ではリサイクルの取り組みは、2024年から大人用の紙パンツに限らず、赤ちゃん用の紙パンツへの展開も検討している。また、2030年までに10の自治体へ展開も目指しているという。
【データ】
ユニ・チャーム
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使用済みの紙おむつの分別回収を行っている自治体は増えている。捨てるときは、汚物などをできるだけ取り除くのがポイントで、専用の袋で回収ボックスに入れる。
【リサイクルできるもの】
・大人用紙おむつ、ベビー用紙おむつ
※各メーカーの指定は特にない
【リサイクル方法】
・地域自治体の紙おむつ回収ボックスで回収
【回収方法例】鹿児島県志布志市の場合
1. 使用済み紙おむつの汚物をなるべく取り除く
2. 紙おむつ専用袋に入れ口を結び、回収ボックスに袋ごと入れる
※新聞紙などの印刷された紙、ペット用の紙おむつやシート、ゴム手袋などは回収不可。
※紙おむつの回収ボックスについては、お住まいの地域の自治体にご確認ください。
「金属付きの入れ歯」捨てずに社会貢献!
「入れ歯がリサイクルできるの?」と意外に思われるかもしれないが、金属が付いた入れ歯であれば、NPO法人「日本入れ歯リサイクル協会」に提供することで、各市区町村の福祉事業団体に寄付されたり、ユニセフを通じ世界中の栄養不良で苦しむ子どもたちの救済などに使われたりと、社会貢献につながるのだ。
入れ歯には金属のクラスプ(歯にかけるバネ)が付いている。クラスプには、貴重な貴金属が含まれているため、金属部分を資源として再利用できるとのこと。
「不要となり捨てられている入れ歯を見かけて『もったいない』と感じたことが、この取り組みを始めたきっかけでした。
入れ歯は、身体の一部ともいえますし、大切な人の形見というかたもいらっしゃる。生活に深く結びついているんです。そのような思い入れのある入れ歯をゴミとして捨てるのではなく、社会の役に立つようにできないかという想いから始めた活動は今年で17年目を迎え、多くのご寄付をいただいています。
今後も社会福祉と環境保全のため全国の自治体様やユニセフ様とともに、当活動を推進していけたらと思います。この活動をひとりでも多くの皆様に知っていただければ幸いです」と、同協会の代表理事・三好勇輝さんは話す。
【リサイクルできるもの】
・金属付きの入れ歯(総入れ歯でも部分入れ歯でも可)
・歯にかぶせた金属
・歯と歯をつなぐブリッジなどの金属
【リサイクル方法】
・NPO法人「日本入れ歯リサイクル協会」への直送
・不要入れ歯回収ボックスへの投函
【回収方法】
1.入れ歯の汚れを落とし熱湯消毒するか入れ歯洗浄剤で洗った後、厚紙で包みビニール袋に入れる。
2.同協会へ郵送するか、全国の各自治体、地域包括センター、社会福祉協議会、歯科院などに設置している回収ボックスに投函する。詳しい設置場所は以下、協会のHPで確認を。
【データ】
NPO法人「日本入れ歯リサイクル協会」
「お薬シート」製薬会社のサステナブルな取り組み
第一三共ヘルスケアがテラサイクルジャパンや横浜市と取り組み、薬シートの回収実証実験「おくすりシート リサイクルプログラム」を行った。
1年間(2022年10月20日~2023年9月30日)の実験を終えた最終報告によると、薬シートは約108万枚相当(約1077kg)も集まったとのこと。
薬シートとは、薬の錠剤やカプセルを包装しているアルミとプラスチックが用いられたPTPシートのこと。この薬シートをゴミとして廃棄せずにリサイクル(再利用)しようという活動だ。
→SDGsで注目!大手製薬会社が横浜市の協力で「薬のシート」リサイクル実証実験を開始
横浜市内の協力店や施設など60拠点(2023年9月末時点)に薬シートの回収箱「おくすりシート くるりんボックス」を設置し不要な薬シートを回収。その後、アルミとプラスチックを分けて、それぞれ再利用する。
同社では実験的に、回収した薬シートをリサイクルして置時計などを製作。今後は健康を支える物に形を変え提供していくとのこと。
「『こんなに軽くて小さいものが本当に集まるの?』といったお声がある中、横浜市内の一部地域で開始したプログラムでしたが、当初の目標より倍以上もの薬シートが集まりました。おかげ様で回収箱も12月までには83か所に増えました。
幅広い年齢層のかたや企業・団体の皆様にご興味を持っていただきご協力いただけたおかげだと思います」と、同社・サステナビリティ―推進マネジャーの古市亜美さん。
同社は実証実験後も回収箱をそのまま設置し、2024年には回収場所を100拠点まで増やし、今後は全国展開も視野に入れているという。
【リサイクルできるもの】
・薬シート
【リサイクル方法】
・「おくすりシート くるりんボックス」へ投函
※錠剤やカプセルが残っていない薬シートのみ受け付け
【データ】
第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/okusuri-sheet/
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製薬会社によるリサイクル運動は活発化している。大塚製薬は2023年7月に徳島県と協定を締結し、県内で廃棄されるペットボトルを回収し再びペットボトルを製造する資源循環水平リサイクル(ボトルtoボトル)を推進するなど、資源循環の取り組みを拡大している。
これからも各社のSDGsな取り組みに注目していきたい。
取材・文/本上夕貴
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