声が出しづらいと思ったら要チェック!“声枯れ”に潜む危険な病気8「あー、と10秒続けて言えなかったら何らかの異変」【医師解説】
周りの人から「最近、声が変わった?」と指摘されたら放っておくのはキケンかもしれない。なぜなら、ここで紹介する8つの病気が潜んでいる可能性があるからだ。声枯れに潜む危険なサインを専門家に教えてもらったのでご紹介します。
教えてくれた人
楠山敏行さん/耳鼻咽喉科医
東京ボイスクリニック品川耳鼻咽喉科院長。声と喉の疾患を専門とし、声に悩む患者の診察、治療を行う。
1.「声帯萎縮」会話が減ったら注意!
声がかすれる、出しづらくなる、以前に比べて弱々しくなったと感じたら、声帯萎縮を疑った方がいい。東京ボイスクリニック品川耳鼻咽喉科院長の楠山敏行さんは、その理由を説明する。
「声は声帯がしっかりと閉じていることで出すことができます。声帯が萎縮すると完全に閉じることができなくなり、すき間ができて、息がもれてかすれ声になるなど、音声障害を引き起こします」(楠山さん・以下同)
声帯萎縮は声帯の筋肉や粘膜がやせて、動きが悪くなることで起こる。
声帯萎縮の仕組み
声を出さないことで声帯まわりの筋肉がやせてしまう
「これは加齢による変化で、70才くらいから起こることがありますが、実際は若くても発症する可能性があります」
声帯萎縮が起こる大きな原因の1つが、声を出さないことだという。
「声帯を使わないことで声帯まわりの筋肉がやせて縮んでしまい、動きが悪くなります」
そのため、声が出づらくなる、または声が弱々しくなる、息がもれるようなかすれ声になるなどの症状が現れる。
声帯萎縮が疑われる場合は、耳鼻咽喉科を受診を。
「耳鼻咽喉科では症状の確認と内視鏡による検査を行います。声帯の筋肉がやせて外側にたわんでいたら声帯萎縮と診断します」
10秒以上声が続かない場合は声帯萎縮の可能性が…
とはいえ、「病院に行くほどでは……」と迷ったら、「あ~」と息苦しくなるまで声を出し続けてみよう。
10秒以上続かなかったら声帯の乾燥や萎縮など何らかの異変が起きている可能性がある。
「よくないのは声がかすれるからと、声を出さないようになることです。これでは萎縮が進んでしまい、さらに声が出づらくなります。声が出づらくなると人と話すのが億劫(おっくう)になって症状が進み、コミュニケーション不足にもなります。コミュニケーション不足は脳の機能低下にもつながり、認知症のリスクを高めます」
声帯萎縮が起きると食べ物や飲み物が飲み込みづらくなり、肺機能も低下し、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクが高まる。気になったら自己判断せずに、早めに耳鼻咽喉科を受診しよう。
正常に発声されている声帯はぴったりと閉じ、声帯萎縮していると声帯が完全に閉じることができなくなる。
こんな人は要注意
□急激に体重が減った
□声を出す機会が少ない
□閉経後声が低くなった
□人と話すのが苦手だ
2.「声帯ポリープ」風邪や喫煙がのどにダメージを与える
声帯にポリープ(ふくらみ)ができる病気。原因は、過剰に大声を出したり、風邪や喫煙など声帯を酷使することで声帯の粘膜に血豆ができ、ポリープになる。
「ポリープができると声帯を完全に閉じることができず声がかすれる、枯れる、声が出ない、低くなるなどの症状が現れます。発症したら声を出さずに安静に。薬物治療はなく自然治癒となりますが、喫煙や声を多用すると自然治癒力は起きません」(楠山さん・以下同)。
3.「上咽頭炎(じょういんとうえん)」空気の汚れが炎症を引き起こす
上咽頭は咽頭の上の部分で、鼻のいちばん奥にある。風邪をひいたときに喉の奥が痛いと感じるのは、この上咽頭が炎症を起こしているからとされる。上咽頭が炎症を起こす原因は細菌やウイルス感染、排気ガスやハウスダスト、黄砂などの空気の汚れが挙げられる。上咽頭炎の症状は鼻や喉の痛みなど。
「上咽頭炎になると声枯れや鼻詰まりのような声になります。治療法は薬物療法、吸入療法のほか、鼻うがいなども有効です」。
4.「声帯のう胞(ほう)」声を長時間出し過ぎも注意
喉頭(こうとう)のう胞ともいい、声帯や声帯の上下に水の入った袋(のう胞)ができる病気。長時間話をする、歌うなどで喉を使いすぎた場合に起こる。
「ポリープと同様に声枯れが起こるので見分けがつきにくいのですが、声帯のう胞は声帯粘膜下に袋状の組織ができるため、ポリープよりも声のかすれやガラガラ具合、高音の出しにくさが如実に現れます。治療法としては2泊3日の入院で手術を行います」。
術後は声を出さずに安静にすること。
5.「逆流性食道炎」胃酸が声帯を傷める
逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道内へ逆流する病気だ。
「胃酸過多になると食道へ胃酸が逆流して、食道の粘膜が損傷し炎症を起こします」
そのため胸焼けやゲップ、胃もたれのほか、喉や口内が酸っぱい感じがする、胸がつかえる、胸が痛む、胃がむかつく、咳(せき)がよく出る、喉に違和感やつまり感があるなどの症状が現れる。
逆流性食道炎のしくみ
食道と胃の間にある筋肉が何らかの原因で緩むことで逆流性食道炎は起こる。喉に酸っぱいものや苦いものが込み上げるだけでなく、喉に違和感がある場合も逆流性食道炎の可能性がある
「声や喉の不調を訴える人には、逆流性食道炎にかかっているケースが多く見られます。胃酸や胃の内容物が食道を通り越して喉頭にまで上がってくると、喉頭の粘膜に炎症が起きます。
すると声帯にも影響が及び、喉の痛みや圧迫感のほか、声帯の損傷により声が枯れてしまいます」
逆流性食道炎を防ぐことが声帯を守ることにもなる。
脂っこいもの アルコールは控える
「暴飲暴食や、アルコール・脂っこい食事・たんぱく質過多・コーヒーなどカフェインの多いものを過剰に摂ることが、胃酸の分泌過多につながるため要注意。
肥満気味の人は、腹部の脂肪によって胃が圧迫されて胃酸が逆流しやすくなることもあります。前屈みの姿勢を長く続けたり食べてすぐに横になると、胃酸が喉頭まで逆流しやすくなり、胃酸によって声帯が損傷し、声が枯れてしまうのです」
逆流性食道炎が疑われる場合はどうすればいいのか。
「逆流性食道炎は生活習慣の改善により、自然と症状が治まることがありますが、胃酸分泌抑制剤など薬によって治療する方法もあります。自己判断せずに気になる症状があれば、すぐに消化器内科を受診しましょう」
ふだんから逆流性食道炎にならないための生活を送ることも重要だ。
「まずは脂っこいものや刺激の強いもの、アルコールは控え、腹八分目の食生活にすることです。食後すぐに横になると逆流しやすくなるので、食べてから少なくとも2時間は横にならないこと。椅子に座って作業する場合は、前屈みにならないように気をつけ、常に背筋がまっすぐになるよう姿勢を正すこと。
仰向けで寝る場合は、10~20cmの高さの枕を使用し、胃より口の位置が高くなるよう工夫をしましょう」
●こんな人は要注意
□早食いと周囲から言われる
□脂っこい食生活を好む
□食べてすぐに寝る習慣がある
□喫煙、飲酒の習慣がある
6.「声帯結節(せいたいけっせつ)」無理な発声は注意
声帯の左右にこぶのようなものができる病気。歌手や歌を趣味としている人がかかりやすい。
「最初は自覚症状がなく、口の中がデコボコした状態だが、無理な発声や歌い続けることで声帯から出血し、粘膜の腫れがひどくなり、こぶが大きくなります」。
声帯結節になると声がかすれる、空気がもれるような音がするなどの症状も現れる。
「治療としては、声を出さずに声帯を安静にするよう指導するとともに、炎症を抑える薬やステロイド吸入を行います」。
7.「反回神経麻痺(はんかいしんけいまひ)」喉の奥の神経が圧迫される
反回神経は、喉の奥の左右にある声帯を動かす神経のこと。この神経の近くには大動脈や食道、甲状腺、リンパ節などの器官があり、これらに腫瘍ができると反回神経を圧迫する。
「圧迫されて反回神経が麻痺を起こすと、声帯が開いたまま動かなくなり声が出ない、食べ物が飲み込めないという症状のほか、誤嚥を起こすこともあります。診察では頭部から胸部をCTまたはMRI画像で検査し、ひどい場合は手術することもあります」。
8.「喉頭(こうとう)・下咽頭(かいんとう)がん」喫煙 受動喫煙・飲酒などが問題
喉頭には左右一対の声帯があり、声帯にがんができると声のかすれなどが起こる。
「声帯にがんができる原因は喫煙で、受動喫煙でもなる場合があります。喉頭の後ろにある下咽頭にできるがんは飲酒が原因とされ、症状は飲み込むときの違和感や長期の咽頭痛が挙げられます。末期になると嗄声(させい/しわがれ声)になります」
いずれも治療は放射線治療、手術、薬物療法など。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2024年9月5日号
https://josei7.com/
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