エアコンが苦手な高齢者に心地よい温度の部屋で過ごしてもらうためのアイディア4選
「エアコンの風が苦手」「電気代がもったいない」と、エアコンを使わずに過ごしているシニア世代の人もいまだに多いのではないでしょうか。家事&節約アドバイザーの矢野きくのさんが、高齢者がエアコンを使いたくないと感じている理由を考察し、心地よく使ってもらうためのアイディアを提案!シニア世代の熱中症対策に活用してほしい。
この記事を執筆した専門家
家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん
節約・家事アドバイザー。防災士の資格を持つ。家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』(講談社)、『「節電女子」の野菜レシピ!』(アスコム)、『50代からの自宅の片づけ 実家の片づけ』(扶桑社ムック) など。https://yanokikuno.jp/
シニア世代にエアコンを快適に使ってもらうために
毎日のように暑さのニュースが流れる日々。日によっては気温が37度代では国内の気温のベスト10にも入らない日もあります。
熱中症で命を落としてしまった方のニュースも流れてきます。それほどに暑い日が続く中でも、シニア世代のかたの中には、エアコンは使わない人がいるのも事実です。周囲がいくら言っても話を聞いてもらえないということもあるでしょう。
そこでシニアのかたに快適にエアコンを使ってもらう方法について考えてみたいと思います。
エアコンを使わない高齢者、その理由は?
テレビの情報番組で、エアコンを使っていない高齢者のお宅でインタビューをしている様子を何度か見かけたことがあります。
ある番組で語っていたエアコンを使わない理由は、「だって、窓を開ければ暑くないから」。
我慢しているわけではなく暑さを感じないとおっしゃっていました。しかしスタッフが室温を測ると34度となっていて、決して「暑くない部屋」ではない温度です。
高齢者が「暑くない」と感じる理由は、大きく分けて3つ考えられます。
1つめは本当に暑さを感じていない場合です。高齢になると皮膚感覚や神経が敏感ではなくなるため、暑さを感じづらくなります。
もう1つの理由としては、無意識のうちにでもどこかで「エアコンは贅沢」という感覚がある人も多いようです。
「昔はエアコンなんてなかった」「エアコンをつけなくても皆暮らしていた」そんな意識が強くあると、エアコンを使うことに罪悪感を抱いてしまうのかもしれません。
3つ目として挙げられるのが「エアコンの風が嫌い」というものです。
いずれにしても、熱中症で救急搬送されるかたや亡くなられるかたに高齢者が多いのも事実。やはり適切にエアコンを使っていただく必要があります。
エアコンを適切に使っていただくために必要なことをご紹介します。
今と昔の気温が違うことを知ってもらう
2018年のデータですが、環境省によると日本の夏季(6月から8月)の平均気温は、100年で約1.5度上昇。中でもとくに東京は約3度上昇しているそうです(環境省平成30年:熱中症の状況と対策についてより)。
また、今月23日に同じく環境省が発表した情報によると、7月21日までの全国の熱中症警戒アラートの発表数はのべ363回で、昨年同時期の195回の約2倍となっているそうです。
昔とは違うだけでなく、今年は昨年とも違う状況となっています。その事実をシニアのかたにも認識してもらうようにしましょう。
汗をかいている“温度”を体感してもらう
また、高齢になると感覚が敏感ではなくなり暑さを感じづらくなっているということも説明しなくてはなりません。
試しにティッシュペーパーを1枚、胸元や脇に貼り付けてみてもらうのもおすすめです。汗をかいていればティッシュペーパーは濡れるので、汗をかいている事実を可視化することができ、「自分は汗をかいているんだ」と納得してくれるのではないでしょうか。
エアコンの快適な温度を知る
「エアコンが苦手」というかたの場合、使い方を変えることで快適に使えるケースもあります。
エアコンをつけている部屋に入った瞬間に「あぁ~涼しい~」と思える温度にしていると、エアコンが苦手な人が寒いと感じる温度帯になっている可能性があります。
部屋の温度を分かりやすく分類すると、以下のようになります。
・エアコンが効きすぎて寒い
・部屋に入ったら涼しいと思える
・暑くない ←この体感温度を目指す
・暑い
エアコンが苦手という人が目指す室温は、この分類の中の「暑くない」温度帯なのです。汗をかかない程度の「暑くない」温度帯、春や秋などの過ごしやすいイメージの温度帯ならエアコンがついていることも意識しないほどです。
エアコンの送風の向きを扇風機で調整する
また、エアコンの送風口の向きも重要になります。
出てきている風が体に当たると不快感を抱く方も多いので、エアコンからの風が人に当たらないようにする必要があります。
扇風機やサーキュレーターをエアコンの下に置き、上向きして風を送りエアコンから出てきた風を部室内の上部で拡散するように使います。
このようにすると、エアコンから冷気が出ているという感覚ではなく、室温が暑くない温度という感覚となり、エアコンを運転していることを意識しなくなります。
いくら「自分は大丈夫」「エアコンなんて必要ない」と言っても、死亡事故にも繋がりかねない酷暑、シニアのかたにも上手にエアコンを使ってもらえるようにしたいですね。
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