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女性の声の変化は要注意。可能性のある病気と喉年齢チェック法

 5月16日、松任谷由実(65才)が昨年9月からスタートした全国アリーナツアー『タイムマシーンツアー』を終えた。40万人を動員した今ツアーは、過去のステージを彷彿とさせる演出がちりばめられた、まさにユーミンワールド。『守ってあげたい』『春よ、来い』『やさしさに包まれたなら』など28曲を歌い、千秋楽にはサプライズアンコールとして、夫の松任谷正隆(67才)の伴奏で『卒業写真』を披露した。詰めかけたファンは大興奮。

「まさかと思っていた曲が聴けて、号泣した!」「相変わらずゴージャスでSHOWと呼ぶのにふさわしいステージ」など絶賛の声が相次いだ。

ユーミンの声変わりに心配するファン  

 しかし、ユーミンを心配する人たちの声も少なくなかった。 「全体的に声が低く、高い声はほぼ出ていなかった。どこか具合が悪いのかなと心配になりました」(福井公演に行った50代女性)

「キーを下げているのは明らかでしたが、それでも、声がつらそうでした。あのユーミンが、こんなふうになるなんて…」(横浜公演に行った60代女性)

 ユーミンの“声変わり”についての指摘は、今回が初めてではない。

「昨年の紅白歌合戦では『ひこうき雲』と『やさしさに包まれたなら』を歌いましたが、CDなどでユーミンの声を聞き慣れた人にとっては『これがユーミン?』と疑いたくなるような声で、密かに話題になりました。彼女の場合はどうもここ2~3年で、声に変化が出てきた。多くの歌手が老齢期にぶつかる声の老化です」(音楽関係者)

40~50代に加速する女性の声の老化で誤嚥性肺炎のリスクも

 50代以上の多くの人が実感することだが、高い声が出にくくなったり、かすれる現象。これが声帯の老化である。近年、この「のど」のトラブルは、深刻な問題として受け止められている。’11年に日本人の死亡原因の3位に肺炎が入ったことから、のどが注目され、テレビではNHKの『あさイチ』などがのど特集を放送。書店でものどの健康に関する本が目につくようになった。

『長生きしたければのどを鍛えなさい』(SB新書)を著書に持つ池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは説明する。

「女性の場合は40代から50代にかけて、声の老化が加速します。理由は2つ。1つ目は呼吸筋(肋間筋や横隔膜)の衰えです。呼吸筋の衰えは息を吐く力を弱めますから、声が弱々しくなります。2つ目はホルモンの分泌量の減少です。その影響で声帯がむくんで太くなり、それによって声が低くなったりかすれやすくなったりするのです」  

 声が聞きとりづらい、声が低くなったと言われるのも声の老化現象の1つ。誰しもが直面する問題ではあるが、そういうものだからと放置しておくと、リスクがある。

「呼吸筋が衰えると、咳き込む力が弱まって、異物が気管に入ってしまう誤嚥が起きます。また、声帯には気道に蓋をする役割もあるのですが、これが衰えるとぴったり蓋ができず、唾液などが気道を通って肺に到達してしまうこともあります。実は、誤嚥性肺炎の多くは、夜、寝ている間に唾液が肺に入ってしまうことで起きています。唾液にはウイルスや細菌が含まれていることがあるので、それによって炎症が起こり、肺炎になるのです」(大谷さん・以下「」同)

 誤嚥性肺炎は、日本人の死因の3位である肺炎の約7割を占める。大谷さんによると、死因の1位であるがんで亡くなる人の多くも、誤嚥性肺炎を併発したことによって命を落としているという。のどの老化を放置することには、死と隣り合わせともいえるリスクがあるのだ。

のど年齢は「ゴックンテスト」でチェックを

 自分の「のど年齢」を確かめるにはどうすればいいのか。大谷さんは「ゴックンテスト」でのチェックをすすめる。やり方は簡単。人さし指をのど仏にあてて、30秒間に何回、唾液を飲み込めるかを数えるだけだ。

「50代の平均は7回です。8回以上なら飲み込み力に問題はなし、3回から7回の場合は飲み込み力がそれ以上低下しないよう注意してください。3回未満の場合は、飲み込み力が低下しています 

【ゴックンテスト】

●人さし指をのど仏にあてる
●30秒間に何回、唾液が飲み込めるか数える

ストレッチで「のどの老化」を止める!

 のどの老化を進めないために、大谷さんはタオルストレッチを推奨する(下図参照)。

 

 両足を肩幅に広げ、両手でタオルを持ち、ゆっくりと息を吸いながら腕を持ち上げる。真上まで上げたら、息を吐きながら下におろす。横隔膜の動きを意識して行う。

 息を吐きながら、ひじを伸ばした状態でゆっくりと体を右側に伸ばし、体の左側を伸ばす。反対側も同様に行う。この一連の動作をセットで3~5回繰り返す。

声の変化は病気のサインかも

 また声の変化は、老化ではなくいくつかの病気のサインの可能性もあるという。

「まず考えられるのは、声帯そのものの異変。『声帯炎』と呼ばれるものはかぜに似ていて、比較的短期間で治ります。声帯が厚くなり突起ができる病気の『声帯結節』は声帯を休ませることで治っていきます」 

 こういった声帯の異変であれば治療ができるが、慢性的なかすれ声はより深刻な病気の可能性もある。ポイントとなるのは、胸からのど、そして脳へと走る「反回神経」だ。

「この神経は声帯の動きをつかさどるものですが、胸にある大動脈と絡んでいるのです。その大動脈にコブができた状態、つまり大動脈瘤が発生すると、反回神経が圧迫され、声帯に麻痺が起こり、その結果、声がかすれてしまうのです。また、甲状腺や食道、肺に腫瘍があり、それが反回神経に触れても、声がかすれ始めます。急激に声が変わったなと思うような場合には、すぐに病院へ行ってください」

 つまり、声のかすれは重大な病気のサインかもしれないのだ。人生100年時代、声とのつきあいも長くなる。食事や会話を楽しみ、歌うためにもしっかり「のど」をケアしたい。

イラスト/藤井昌子

※女性セブン2019年6月13日号

●死を招く誤嚥性肺炎を防ぐ のみ込む力を鍛えるトレーニング法

●命の危険にもつながる誤嚥性肺炎を防ぐ|予防法やトレーニング法【まとめ】

●声が低くなる、かすれる…声の老化を改善|自分でできる声帯トレーニング法

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