「脳梗塞を発症しても助かるのは動脈硬化リスクの低い人」専門家が推奨する血管を若返らせる生活習慣と食べ物
血管がつまって起こる脳卒中や心筋梗塞は、日本人の死因上位を占める。こういった血管病は、実は健康にみえてもなんらかのSOSを体が発していることも多く、脳卒中なら言語障害や手足のしびれ、心筋梗塞なら吐き気などの消化器症状が出たりなどさまざまな「予兆」がある。「予兆」を見逃さず、国民病ともいえる「血管死」から身を守るための対処法を医師が解説する。
教えてくれた人
平野照之さん/杏林大学医学部教授、大塚亮さん/循環器専門医・おおつか医院院長、室井一辰さん/医療経済ジャーナリスト、渡辺尚彦さん/日本歯科大学病院内科客員教授
血管がつまっても助かる人の共通点
予兆に気づき、迅速な対応をとることも重要だが、そもそも病気になりにくい体を作っておけばさらに安心だ。そのためには生活習慣を見直し、若々しく健康な状態に血管を保つべし。
「脳梗塞の発症から24時間経っても回復しやすい人は、動脈硬化のリスクが低い人だといわれています。つまり生活習慣を見直して健康な生活をしていれば、いざというときに助かる可能性が高くなる」(杏林大学医学部教授で脳卒中の治療に詳しい平野照之さん)
まずは、血圧と体重を適正にコントロールすること。
「食べたカロリーを消費するには、ウオーキングなどで体を適度に動かすといい。1日7000~8000歩が目安です」(平野さん)
カロリーとともに、食べる内容にも気を配ろう。
「血液中にあるアミノ酸『ホモシステイン』値が高い人は血管系の病気をしやすいといわれています。ホモシステインを下げるにはビタミンB6やB12、葉酸が豊富な豚肉、鶏肉・貝、緑黄色野菜をしっかり摂るといい。加えて青魚に多く含まれるDHAやEPAは、血管の内膜にある内皮細胞を整え、血液を固まりにくくし、しいたけの『エリタデニン』は、血圧を下げて血栓を作りにくくする作用があります」(おおつか医院院長で循環器専門医の大塚亮さん)
忙しくて食事に気を使えないときは、悪いものを食べないことだけ意識しよう。
「いい食材を食べても、ほかにたくさん体に悪いものを食べていたら意味がありません。“体にいいものをたくさん食べよう”と足し算でがんばるよりも、“悪いものを食べない”という引き算をした方がトータルで効果があります」(医療経済ジャーナリストの室井一辰さん)
加えて意識すべきは、ストレスはできるだけ減らすように心がけること。
「ストレスを受けると交感神経が刺激されて、血圧が上がりやすい。笑うとストレスが減るので、私は患者さんとの会話にギャグを挟むようにしています。ストレスを減らすには、睡眠も大切です」(日本歯科大学病院内科客員教授で高血圧に詳しい渡辺尚彦さん)
病気は完全に避けられるものではない。しかし、ちょっとした気づきや努力で運命が変わることもある。
「9つの生活習慣」と「7つの食べ物」で血管を若返らせよう!
【生活習慣1】食生活を見直す
脂質や糖質、塩分が多い食事を避ける。
【生活習慣2】お酒はたしなむ程度に
アルコールは1日20gまでなら脳卒中のリスクが低下するとされている。ビールなら中瓶1本、ワイングラスなら2杯が該当する。
【生活習慣3】禁煙する
たばこはハイリスク。副流煙もNGなので、家族に喫煙者がいたらやめてもらう。
【生活習慣4】運動する
体を動かすことで血管が刺激されて血流がよくなり、血栓が減る。女性なら1日7000~8000歩程度は歩くように。
【生活習慣5】お風呂に入る
血管を広げて血流を促す一方で、お湯が熱すぎると血栓が発生しやすくなるのでお湯の温度は41~42℃にする。
【生活習慣6】適正体重を維持する
肥満は血管病のリスクを上げるため、BMI25未満を保つ。
【生活習慣7】血圧を毎日測る
血圧を朝晩2回測り、数値を常に把握しつつ月に1回、逆側の腕で血圧を測る。左右で20mmHg以上の差がある場合、動脈硬化が進んでいる可能性がある。
【生活習慣8】睡眠時間を確保する
睡眠不足は高血圧のリスクになる。
【生活習慣9】ストレスをためない
おしゃべりをしたり笑うとストレスが解消され、血圧が安定する。
【食べ物1】青魚
DHAやEPAの良質な油分には血液の循環をよくする働きがある。
【食べ物2】豚肉
ビタミンB6が心血管疾患の危険因子である「ホモシステイン」の濃度を薄める。
【食べ物3】鶏肉・貝
ビタミンB12が「ホモシステイン」の濃度を薄める。
【食べ物4】野菜全般
キャベツなど葉物野菜に多く含まれる葉酸が「ホモシステイン」の濃度を薄める。また緑黄色野菜に含まれる、抗酸化作用が強いビタミンAやビタミンCには血管を守る働きが。
【食べ物5】納豆
納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」が血栓をできにくくする。
【食べ物6】玉ねぎ
辛み成分「硫化アリル」が血液の凝固を防ぐ。
【食べ物7】しいたけ
特有の成分「エリタデニン」には血圧・悪玉コレステロール値を下げる効果が。
写真/PIXTA
※女性セブン2024年5月2日号
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