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倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.19「今はもういない夫に教えてあげたいこと」

 倉田真由美さんの夫、叶井俊太郎さんのすい臓がんが発覚したのは2022年6月のこと。当初は夫の病気病のことを周囲に内緒にしていたという。余命宣告の1年を超えて生き続けた夫のこと、漫画やコラムに書くようになった経緯を明かしてくれた。

執筆・イラスト/倉田真由美さん

漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。

夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。

夫の棚から知らないファイルが

 夫の棚を整理していたら、知らないファイルが出てきました。

 目立つのが嫌いじゃない夫、自分が出た雑誌のページを切り抜いてファイルに保存していました。私と結婚してからインタビューされたり特集された雑誌やスポーツ新聞を棚に残してあるのは知っていましたが、結婚前のものはきれいに切り取ってファイリングしていました。若い頃、私と知り合う前の夫の姿、夫の、いかにも夫らしい言い分を目にすることができるのは望外の喜びです。

 すい臓がんがわかった時、夫は「あんた、俺のがんのこと漫画にしたら?」と私に言いました。’22年初夏頃です。私は「嫌だよ。そんなの描きたくない」と拒否しました。

 夫が重病を抱えていることを人に伝えたくなかったし、漫画にするなんてとてもそんな気にはなれませんでした。実際私は友人2名と母、妹以外にはずっと内緒にしていました。夫は即、周囲の人に言って回っていたけど。

励ましの声、共感の声に「予想外の感動」

 告知から一年以上、「悪ければ半年、長くても一年」と言われていたその「長くても」の一年を超えた頃、夫が本を出す話が決まりました。『エンドロール!末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』。タイトル通り、夫と親交の深かった方15名と、末期がんを告白した夫との対談集です。

 その本が昨年秋に発売され、夫が末期すい臓がんであることが公になりました。同時に私も周囲の人に事情を話し、「末期がんの夫と暮らしていること」を皆が知ることになりました。

 それから徐々に、夫のことをSNSで発信するようになりました。たくさんのかたの励ましの声、そして「私も身内が」「私自身が」という共感の声をいただきました。これは私にとって、予想外の感動でした。実際に経験してみないと分からない、心強さでした。今もこのコラムに届く皆さんの温かい声は、ともすれば折れそうになる気持ちを癒してくれています。

「あんたのこと、書いてみるわ」

 夫に告げたのは昨年末頃。夫は「ふうん。面白く書いてよ!」と答えました。面白く書けているかどうかわかりませんが、今はもう夫のことが一番書きたい、圧倒的に書きたいことです。

 今年に入ってこのコラムが始まった時、「父ちゃんのこと書いた記事、結構読まれてるみたいよ」と夫に報告したら嬉しそうでした。「まだ書いてる、読んでもらってるよ」と、今はもういない夫にまた教えてあげたいです。

倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯

 夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。

『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』

『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』

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この記事へのみんなのコメント

  • かげろう

    私の父は5年前に骨髄腫という血液のガンになり3年前に膵臓がん、2年前に肺がん、胃がんを手術で切除しました。その後去年の秋頃から調子が悪くなり、今年の1月に膵臓がんの再発、腹膜播種にもなり余命3ヶ月と言われました。83 歳でした。そして、2ヶ月半で亡くなりました。父は、とにかく生きたい人で前向きに治療もしようとしていました。余命宣告を受けた時に、私達娘息子の3人姉弟は、必死で毎日毎日治療法を探しました。父もショックを受けしばらく落ち着きもなく忘れたいように動き回っていました。膵臓がんは、5年生存率が一桁で、わかってはいたもののそれでも奇跡があるのでは無いかとネットでも情報を読みあさりました。叶さんは、食べる事が最期の方まで出来た事は本当に良かったと思います。うちの父は食べる事がすごく好きだったんですが、食べられなくてすぐに吐いてしまい、飲み物すら飲めなくなって、亡くなる前1ヶ月半程ほとんど食べられませんでした。痛くて痛くて、気晴らしに出かける事も出来ず、いつも険しい顔をしていて、今思うと亡くなる前もっとたくさんいろんな話をしたかったです。1週間毎に状態がすごく悪化してしまっていました。何も食べられず飲めず、病院からはもう何も出来ないので、緩和病棟へと言われ。緩和病棟の話を本人も聞かねばならなくて一緒に行った時に、父の目が赤くなっていて。今まで、頑固で建設業の1人親方だった父の気弱な姿を見た時に、何か出来る事はまだ無いのかとまた調べて残り1ヶ月だったけど、自由診療の治療をはじめました。それで、かえって弱ったかもしれません。でも、最後まで諦らめず治療をした事に後悔はありません。でも、その時に超脱水で干からびていると言われました。ガンで亡くなる前に栄養失調や脱水で亡くなってしまう場合もあるそうです。訪問看護の看護師さんに亡くなる2週間前に、今の気持ちはって聞かれた時に父は食べられる様になりたいと言っていました。何も食べられず逝ってしまいました。最後の10日は痛みがきつかったので医療用麻薬で、せん妄がひどくほとんど話も出来ず、最後の会話はお坊さん呼んどいてでした。亡くなる前に覚悟をしなければならなくなってきます。それまではできる事を必死に考えました。覚悟を決めたら、話をするほうがいいと思いました。伝えたい事をたくさんもっともっと言っとけば良かったです。

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