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倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.11「3回目の余命宣告を受けた雪の日のこと」

 漫画家の倉田真由美さんの夫、叶井俊太郎さんはすい臓がんが発覚した2022年6月に「もって一年」と医師に告げられた。余命宣告を受けてから2024年2月に旅立つまで、家族で過ごした日々、夫の死生観について思うこととは。

執筆・イラスト/倉田真由美さん

漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。

夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。

計4回の余命宣告

 激しい黄疸からのすい臓がん判明から亡くなるまで、夫は計4回、医師から余命宣告を受けました。

 最初の1回は2022年の6月、がんであることを告げられた時の「悪ければ半年、もって一年」。私も一緒に聞いて、想像以上の余命の短さに私だけが号泣しました。

 そしてすい臓がんは、がんの中でもとりわけ生存率が低く予後が悪がんだということ、さらに夫の組織をとって調べた細胞診では5段階中5番目、最も質の悪いがんだとも説明されました。それを聞いても夫はあまり動じていませんでした。彼の死生観は、この時から最期までずっと変わらなかったと思います。

 私はその告知後、‘22年初夏からの日々を「悪ければ半年、もって一年」の覚悟で過ごしました。

 ‘23年の初夏。これがリミットだと思い‘22年の夏の旅行も、秋の夫の誕生日も、クリスマスも正月も、「これが最後」と毎回涙しながら、でも娘にはまだ隠していたからそれがバレないように、楽しいよりも苦しい思いでこなしました。

 この時期、夫は仕事関係の人にはがんであることを話していましたが、私はごく親しい人以外には秘密にしていました。夫は元気で普通に暮らせているのに、それが壊れるような気がして怖かったから。続いてきた日常を、変えたくなかったから。

「俺、いつまで生きますか」

 2回目の余命宣告は私がそばにいない、‘23年の夏に夫が胃と小腸をつなぐバイパス手術をした時にされました。執刀医に、「正直に言ってください。俺、いつまで生きますか」と聞いたらしいです。医師は「年内もたないと思う」と答えたそうで、それを私は夫から電話で聞きました。でも既に最初に宣告された余命を過ぎていたので、この頃は「たとえ医師の見立てでも、必ずしもその通りにはならない」と思っていました。体重はかなり減っていたけど旅行にも行けるほど体力あったし、きっと夫と正月を迎えられるはずだと信じていました。

 実際、無事に年を越せました。元旦には「初詣に行こう」と夫が先導し、娘と私と3人で近所の神社に行きました。腹水が溜まり始め、年が明けてからは調子の悪い日が続きましたが、それでも1月中は夫は会社にも行き、好きなものを結構な量食べたりもしていました。後で、大抵気持ち悪くなったりお腹が痛くなったりしてしまうんだけど。

 3回目の余命宣告は、‘24年2月の上旬。血液検査の結果が急激に悪くなった時です。本当に、一気に悪くなりました。2週間前にも調べていたんですが、腫瘍マーカーはその時の2倍の数値でした。夫は医師に再び、余命を聞きました。「今月いっぱいくらいかと思います」と言われました。

 診察室を出て、夫が「やっと終われる」と言った何とも言えない笑顔は忘れられません。私は涙が溢れて止まらず、「そんなわけないよ。こんな寒い日に自転車でここまで来るような人だよ。そんなにすぐ死なないよ」と言い返しました。廊下の窓から、雪がざんざん降るのが見えました。苦しくて悲しい思いと共に、あの雪の窓は今も胸に焼きついています。

 帰り道、雪が降るからタクシーで帰ろうというのに、夫は「大丈夫。自転車ないと不便だし」と20分の距離を自宅まで漕ぎました。「こんなに体力あるんだから、この人は絶対もっともっと生きる」と、後ろをついていきながら思いました。

 でも、それはかないませんでした。3回目の余命宣告を超えることはできませんでした。夫は2月の半ばで儚くなってしまいました。

 4回目の余命宣告については、またいつか書きます。

倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯

 夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。

『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』

夫のすい臓がんが判明するまで表紙

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