大人用おむつによる皮膚トラブル事例と対処法を排泄ケア専門の看護師が解説「拭き取りや肌ケアの注意ポイント」
「テープ型紙おむつや紙パンツを利用されている高齢者の中には、間違った使い方をしていて皮膚のトラブルを起こして来院されるかたもいらっしゃいます」。こう語るのは、皮膚・排泄ケア特定認定看護師の浦田克美さんだ。大人用のおむつのスペシャリストでもある浦田さんに、テープ型紙おむつや紙パンツによるトラブルの原因や対策について教えてもらった。
教えてくれた人
皮膚・排泄ケア特定認定看護師 浦田克美さん
東葛クリニック病院看護部主任。皮膚・排泄ケア特定認定看護師。紙おむつやおむつ交換に関する情報が少ないと、YouTube「はぴなぴ チャンネル」https://www.youtube.com/channel/UCgonTHiL8Tfnq0M46wcGv5Aなどで、初心者でもわかりやすいように情報を発信中。看護師として、介護する人・される人に寄り添った活動を継続している。共著に『褥瘡ケアのプロになる 看護の技とおむつケア』(医学と看護社)など。
介護中のおむつによるトラブル事例と対策
「テープで留めるタイプの紙おむつをされているかたは、寝て過ごすことが多いと思います。体を動かしにくいため、おむつが不快な状態でもご自身で調整することができません。正しく装着できていないと、排泄物でムレたり、肌にこすれたりすることで皮膚トラブルを起こしやすくなります」
こう話すのは、皮膚・排泄ケア特定認定看護師の浦田さんだ。浦田さんは病院の勤務のかたわら、YouTubeで排泄ケアの方法や紙おむつの使用法などを発信している。
まずは、おむつによるトラブル事例を解説していただいた。
「排泄物で肌に炎症を起こしている」
「医療の現場では、おむつ内排泄が原因で発生する皮膚のトラブルを『失禁関連皮膚炎』と呼んでいます。
排泄物で皮膚が蒸れることで、皮膚がかぶれて痛みや痒みを生じます。
おもに尿道口や、男性だと陰嚢とか陰茎の裏側などが赤くなっているケースが多いですね。便が水っぽい場合、肛門の周囲が赤くなってただれている症状もあります。
テープ型紙おむつや、紙パンツのウエストのゴムやギャザーの摩擦でかぶれている、いわゆる“ギャザーかぶれ”も多いですね。とくに紙パンツのギャザーがあたっている部分に起きやすく、擦れることによって赤くなります」
「寝たきりの場合に多い褥瘡」
「紙おむつやパッドを何枚も重ねることで発生する褥瘡(じょくそう)もあります。床ずれとも言われますが、長時間座っていることでも起きます。汗や排泄物で皮膚がふやけると、褥瘡は発生しやすくなります」
「おむつのテープで腸骨が圧迫される」
「テープ型紙おむつのテープの圧迫によって腸骨(骨盤の左右に張り出している骨)などに傷ができることもあります。テープをとめた箇所が赤くなっていないか確認しましょう」
「そのほかの皮膚炎に感染している」
「カンジダ皮膚炎などカビが原因でおこる真菌感染、病原菌やウイルス感染による皮膚炎を起こしているケース。これらは医師に診断してもらい、処方薬をもらってください」
早めに専門医に相談することが大切
「これまで多くの皮膚トラブルをみてきましたが、皮膚炎というのは原因を見極めるのが専門医でもとても難しいといわれています。
おむつによるトラブルの場合、原因がわかれば、対処法も早く見つかります。おむつのサイズは合っているか、ムレたりたり漏れたりしているのはなぜなのか、正しい装着方法をしているか、改めて確認してみてください」
→大人用のおむつ着用時にやりがちな5つの間違い|漏れやムレ、肌かぶれを防ぐ対策を排泄ケアの専門家が解説
「もしおむつかぶれなどで皮膚炎を起こしていた場合は、なるべく早く施設の看護師や訪問看護師に伝え、必要な場合は医師に診てもらい適切な処置をしてもらいましょう。
原因が摩擦や圧迫なのか、排泄物によるふやけや細菌や真菌感染なのかで処置や薬も変わります」
トラブルを防ぐおむつの交換方法
「おむつ交換ときに排泄物を拭き取る際には、介護用のおしりふきシートを使ってほしいですね。赤ちゃん用のものだとサイズが小さくてケアしきれない場合もあります。
または、紙質がやわらかく吸収力が高い“キッチンペーパー”でも代用できますが、トイレットペーパーはおすすめしません。
下痢気味でゆるい便などが多いときは、紙がポロポロと切れてきれいに拭き取れないことも。できれば専用のおしりふきでケアしてほしいですね」
おむつ交換時の肌ケアは撥水クリームやスプレーを
「おむつかぶれを予防するのに、ワセリンを塗るというかたもいらっしゃるのですが、使用する場合には注意が必要です。
ワセリンがおむつに付着すると、おむつの吸収剤が撥水されて尿の吸収量が低下してしまいます。実際、ワセリンの含有量が多いほどおむつの吸水量が減るという研究結果もあります。乾燥している部分だけ塗るなどワセリンを使うときは注意してください。
専用の撥水クリームや撥水スプレーをおすすめします。撥水タイプのものを肌に塗っておくことで、おむつに付着した排泄物が肌に触れるのを防いであげましょう。
肌は弱酸性で、便はアルカリ性。尿も時間が経つとアルカリ性に変化します。このアルカリ性の排泄物が肌に刺激となってしまうのです。撥水性のクリームは、皮膚炎の予防にもつながります」
おむつ交換時のおすすめアイテム5選
浦田さんのお話しをもとに編集部がセレクトしたおむつ交換時に使えるアイテムをご紹介。
※価格はすべて税込みです。
ハビナース トイレに流せるパッとおしりふき(ピジョン)
汚れガード成分配合で汚れが付きにくい
汚れを付きにくくさせる汚れガード成分を配合したおしりふきシート。トイレに流せるので、後始末が簡単。ふた付きケース入りなので乾燥しにくく、シートを片手で取り出しやすい点が便利。大判タイプもあり。
72枚/605円
https://www.pigeontahira.co.jp/products/details/トイレに流せるパッとおしりふき/
サルバ お肌にやさしいおしりふき(白十字)
素肌と同じ弱酸性素材でお肌にやさしい
手のひらサイズで、サッとふけるおしりふきシート。無香料・無着色・ノンアルコールでお肌にやさしい弱酸性素材を使用。
80枚入/オープン価格
396円(編集部調べ)
https://www.hakujuji.co.jp/salva/products/care/nursing03_1.html
薬用サニーナ(花王)
普段使いに便利なスプレータイプのおしり洗浄剤
浦田さんもおすすめのやさしいふき心地のおしり洗浄剤。いつものペーパーにシュッと吹きかけるだけで使えるスプレータイプ。出産前後のおしり・デリケートゾーンにも使える。消炎剤・スクワラン配合。
90ml/オープン価格
660円(編集部調べ)
ライフリー おしりクリーンシャワー(ユニ・チャーム)
お肌の洗浄・保湿・保護がこれ1本で
ひまわり油由来の天然石鹸・オウバクエキス・リピジュアが配合され、洗浄から保湿、肌保護まで網羅するおしり洗浄濃縮液。適温のお湯(40℃前後)で溶かした洗浄液で洗い流し、余分な水分を拭き取るだけのため、気軽に使用できる。
本体+シャワーボトル/1694円
https://www.d-unicharm.jp/item/100329.html
モイストバランス スプレーコート(光洋)
ワンプッシュで汚れをはじく撥水スプレー
ワンプッシュで保護膜をつくりお肌を刺激から守る。液ダレもなく素早く乾き、ツッパリ感がない。片手でプッシュできるトリガー式スプレーなので、扱いやすい。
45ml/2167円
https://www.koyo.jp/haisetsu/product/hospital/care.html
おむつによるトラブル予防と対策【まとめ】
・サイズに合ったおむつを使用する
・紙おむつ、尿パッドの交換の頻度や商品を見直す
・おむつ交換を正しくする
・拭き取る際、皮膚をこすらない
・ケア後は撥水クリームなどを塗る
便利なアイテムを活用しておむつのトラブルを防ぎ、介護生活を快適に過ごしてほしい。
撮影/楠聖子(浦田さん写真) 構成/介護ポストセブン編集部
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