大人の虫歯ケア|歯茎が下がる!「根面う蝕」を予防する歯の最新ケア方法。50代以上は要注意
厚生労働省によるフッ素配合歯みがき剤の普及・啓発活動により、’80年代以降、10〜14才の子供の虫歯は減少傾向にある。一方で、虫歯になる大人は増加傾向にあるという。中でも注目されているのが、歯茎が下がることでなる、大人特有の虫歯“根面う蝕(こんめんしゅしょく)”だ。
人生100年時代、死ぬまで自分の歯で食事を楽しむため、今からやっておくべき、歯の最新ケア方法を紹介する。
30代で急増し、 50代では約半数いる歯茎下がりと根面う蝕
歯みがきをしていても、加齢でできやすくなる虫歯がある。歯茎が下がることで歯の根元が露出し、その部分が虫歯になる「根面う蝕」だ。東京歯科大学教授の杉原直樹さんは、こう説明する。
「歯茎が下がる症状は30代の約60%にみられ、50代以上ではほぼ100%に。さらに、歯茎下がりも根面う蝕もある50代は45%になります」
歯茎が下がり、歯の根元の象牙質がむき出しになっている。歯の根元に虫歯ができると、詰め物などの治療をしても取れやすいという
つまり、50代以上の人すべてに根面う蝕のリスクが迫っているということだ。歯茎が下がる主な原因は加齢のほか、「歯周病」「不適切なブラッシング」だという。
「歯茎が下がると、酸に弱くやわらかい象牙質がむき出しになり、そこに虫歯ができます。初期は痛みを感じにくく、進行が速い。そのため、気づいた時には深刻化しているケースが多いんです」(杉原さん)
歯髄(神経)にも近いので治療が難しく、結果的に歯を失うリスクが高いという。歯茎は一度下がってしまうと二度と元には戻らない。しかし、根面う蝕は防げると、ライオン快適生活研究所オーラルケアマイスターの平野正徳さんは言う。
「大切なのは、強くみがきすぎない、フッ素濃度の高い歯みがき剤を使う、年に2〜3回は歯科医の定期健診を受けることです。フッ素を配合した歯みがき剤には歯質を強化し、根面う蝕も予防する効果があります。毎日の歯みがきで使ってほしいですね」(平野さん)
日頃のセルフケアと歯科医によるプロのケア、この2つを組み合わせて、大切な歯を100才まで守っていきたい。
「根面う蝕」 こんな人は危ない! チェックリスト
□食べたものが歯の間に挟まりやすくなった
□かための歯ブラシでゴシゴシ強くみがいている
□歯槽膿漏や歯肉炎ではないのに、歯がときどきしみる
□歯茎が下がって歯が長く見える ようになった
□口を開けていることが多く ドライマウス気味だ
※1つでも当てはまる人は要注意!
歯のみがき方、正しい方法
NG:しっかりこすれるよう、 歯ブラシは強めに握る
OK:歯ブラシは鉛筆を 握るように軽く持つ。 力は入れない
NG:"ながらみがき"で いいので、3分はみがく
OK:歯と歯茎の 境目を重点的に
虫歯を防ぐ強い味方「高濃度フッ素」なぜ効く?どう使う?
虫歯予防には、高濃度フッ素配合の歯みがき剤を選ぶといい、と杉原さんは言う。
「そもそも虫歯は、口にたまった歯垢の中で細菌が増殖するのが原因です。その中の一部の細菌が酸を発生させ、歯の表面を溶かすのです」(杉原さん・以下同)
フッ素には、歯質を強化し、一度溶けた歯を元に戻し(再石灰化)、歯垢の中の細菌の活動を抑える働きなどがある。
「フッ素の使い方として、最も虫歯予防効果が高いのは、歯の表面に直接塗ることです。歯科医院では市販の歯みがき剤より高濃度の9000ppm程度のフッ素を塗ります。年に2回以上の塗布で虫歯予防効果が高まります」 市販の歯みがき剤のフッ素濃度は、厚生労働省により1500ppm以内と決められている。根面う蝕の予防を目的に歯みがき剤を選ぶのなら、この上限に近く、かつ口内にフッ素がとどまりやすいタイプがおすすめだ。
フッ素の主な働き
●歯を強くする(歯質強化)
●再石灰化を促進する
●虫歯の原因菌の力を弱める
イラスト/オカダナオコ
※女性セブン2019年4月25日