倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.5「最期まで私がこの人をみよう」
すい臓がんで闘病中の夫の叶井俊太郎さん(56才)に寄り添う妻で漫画家の倉田真由美さん。夫は2月に入ってから調子のよくない日が続いている。そんな中、月に1度の検査がやってきて――。夫の状況を見てきたくらたまさんの気持ちの変遷とは?
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』は現在Amazonで無料で公開中。
血液検査の結果
とてもショックなことがありました。
毎月一度、胆管ステント手術をしてくれた国立病院に検査に行っています。そこで血液の状態をみたり、痛み止めや眠れない時の睡眠薬をもらったりしているんですが、先日「状態が急激に悪化している」と言われてしまいました。
「炎症も起きているし、肝臓の値もよくない。現に今も、かなり具合が悪そうですね」
確かに、2月に入り調子のよくない日が続いています。会社にはすっかり行かなくなりました。
「電車の乗るのが怖い」と電話、メール、オンラインで夫は自宅で仕事をしています。
胃液がせり上がり、何度も吐いてしまう日があったり…。この日も朝から調子が悪く、医師の前でも首をうなだれ声にも張りがありません。
病院での血液検査、今まではたいてい良好でした。
腫瘍マーカーは高めだけど、ほかは悪くなくて、むしろ毎回ホッとさせられる時間でした。ところが今回、いろんな数値に異常が出ているらしく、医師が深刻そうな表情で言います。
「訪問医の先生に連絡しましょう。叶井さんは、ホスピスは嫌なんですよね」
「入院は嫌だ。家がいい」
夫は昨年、もっと元気な頃までは「家は嫌だ。痛い時にすぐ処置してもらえるほうがいいから、ホスピス行きたい」と言っていました。
でも胆管炎でかなり長く入院したことをきっかけに、「病院は嫌、もう入院したくない。家で死ぬ」と言い出すようになりました。
以後変わらず、「死ぬまで家にいる」と言います。
気持ちの変遷
私の気持ちも変遷がありました。
終末がまだ現実的にイメージできない頃、「やっぱりホスピスのほうが本人は快適だろうな。私も弱っていく姿を見続けるのは辛いし、世話をする自信ないかも」と思っていました。
弱った姿を家族に見られたくないだろう、というのもありましたし。でも、今は違います。
日々少しずつ良くなったり悪くなったりを繰り返しトータルでは段々と弱っていく夫を真横で見て、細かな世話を積み重ねていくうちに、「最期まで私がこの人をみよう」と気持ちが固まってきました。
夫も、今さらカッコつけたりする気はまったくありません。私に、いろんなことを委ねています。
だから今はもう、夫が私の手を離れ自宅以外に行かれてしまうほうが怖いです。顔を見られない時間が増えるのが怖いです。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』