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「シルバーハウジング」とは? 高齢者向け設備のある公営の住まい|サービス内容や費用、サ高住との違いをわかりやすく解説

  シルバーハウジングは、高齢者向けにバリアフリー設計や緊急通報装置などが設備された公営集合住宅のこと。この記事では、バリアフリー仕様の住居で生活支援を受けながら暮らせる「シルバーハウジング」の特徴や「サービス付き高齢者向け住宅」との違いを紹介します。

シルバーハウジング

シルバーハウジングとは?

「シルバーハウジング」(高齢者世話付住宅)とは、地方自治体、UR(都市再生機構)や住宅供給公社が提供している高齢者や障がい者を対象に、自立した生活を行える環境を提供する公営住宅です。比較的低コストで入居できることから人気がありますが、供給する自治体や物件により、収入などの入居条件があります。

 シルバーハウジングには、日中、生活援助員(ライフサポートアドバイザー=LSA)が常駐し、居住者の生活相談、安否確認や緊急対応などを行っています。

入居対象や条件は?

対象者

・対象世帯:60才以上の単身世帯

・どちらかが60才以上の夫婦世帯

・障がい者単身世帯、または障がい者とその配偶者からなる世帯

・60才以上の高齢者のみの世帯(子が60才以上であれば同居も可能)
 供給元によっては65才以上のところもあります。

条件

介護度

 原則として自立自炊ができる程度の健康状態だが、身体機能に低下が認められる人または、高齢などのため独居するには不安があると認められる人

収入

 年収が一定以下。持ち家がある人は不可。(自治体の場合)世帯月収が一定以上(URの場合)

※基準となる収入額は、供給元や物件によって異なります。

 ほかにも、住宅困窮度が高く、家族による援助が困難な人が入居条件となります。

 東京都都営住宅のシルバーハウジングにあたる「シルバーピア」(高齢者住宅)は、3年以上継続して都内に住む独居の65才以上で、所得が年間256万8000円以下の人が対象。

「シルバーハウジング」とは、高齢者が自立して生活することができる公的な賃貸住宅

サービス内容

・生活援助員による生活相談・緊急対応・安否確認など

 生活援助員は、地域の福祉施設などから派遣され日中は常勤していますが、生活相談や緊急時の対応などにとどまります。介護福祉施設とは違い介護・医療・家事支援などはありませんので、必要な場合は個人で介護サービス事業者などと契約する必要があります。

高齢者世話付住宅(シルバーハウジング)生活援助員派遣事業の実施について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4259&dataType=1&pageNo=1

UR賃貸住宅 高齢者向け賃貸住宅(UR賃貸住宅)
https://www.ur-net.go.jp/chintai/whats/system/eldery/

料金

【入居時】

敷金:家賃の2~3か月程度が目安となります。

礼金:0円

【月額賃料】

家賃、共益費、管理費

(公営住宅の場合、入居者の収入により家賃の1~10万円程度の減免措置あり)

 提供する自治体などにより違いがあり、更新料がかからない物件もあります。

居室と設備

<居室>

・居室面積は約30㎡~60㎡程度

 浴室などに手すりが付けられ、段差が解消されているなどのバリアフリー仕様

・見守りセンサーや緊急通報システムの配備

・物件により家具や家電が備わっている場合もある

<共同エリア>

・エレベーターの完備

・共有廊下の手すりが付けられ。段差解消などのバリアフリー仕様

 供給元や物件によって違いがありますが、高齢者に配慮された仕様に設計、また改修されています。

入居までの流れ

Step1 調査

希望する物件の募集状況を調べる

Step2 確認

物件の供給元に問い合わせ、入居条件や料金などを確認する

Step3 申込

供給元の指示に従い、申し込み手続きをする

Step4 選考

応募多数の場合は抽選、UR(都市再生機構)の場合は先着順

Step5 契約・入居

入居権利を受けた後、契約し初期費用を収め入居

シルバーハウジングのメリット・デメリット

【メリット】

・バリアフリー仕様の住居に低コストで住める

・常駐する生活援助員による生活支援サービスが受けられる

・見守りセンサーや緊急通報システムがあり独居でも安心

・家賃の減免制度がある(※公営住宅の場合のみ)

・高齢を理由に契約・更新ができないということがない

・食事や入浴時間などが決められている介護施設等に比べ、生活のリズムを変えることなく、今までと同じ暮らしができる

・高齢者に配慮したバリアフリー化された住居で、生活しやすく安全である

・契約更新料がかからない

【デメリット】

・人気があり入居が難しいことがある

・介護が必要になったときは、退去しなくてはならない場合がある

・介護施設ではないため、介護・医療のスタッフは常駐していない

・入居に年齢や年収、家族構成などの条件がある

「サービス付き高齢者向け住宅」との違い

 大きな違いは、シルバーハウジングが公営であることに対して、「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)は民間です。

 そのため、サ高住は施設により規模や費用に開きがあります。一方、シルバーハウジングは高齢の低所得の人でも入居できるように配慮された賃貸住宅なので、家賃などの費用の面でも抑えられています。

シルバーハウジングは狭き門?

 シルバーハウジングはかかるコストを公的な補助でまかなっているため、その数が増えていないのが現状です。さらに、一度入居すると自立して生活できていれば、長く住むことができるので空室が出にくくなります。

 東京都内などの人気物件は抽選となり、何十倍もの倍率にもなるとのこと。ただし応募回数に制限はないので、まめに自治体、URや住宅供給公社などのHPなどで募集状況を調べましょう。

「賃貸マンションにひとりで住んでいますが、60才で定年になり今のパート収入では家賃を払えなくなりそうです。年金支給も未だだし、体も衰えてくるのに将来住むところがなくなるのが心配です。子どもたちもそれぞれに大変で頼れないし…」

 こう話すのは、民間の賃貸物件では高齢者に対し貸し渋りもあると聞き、将来に不安を感じていた60代女性。条件さえ満たせば、独居の高齢者でも低コストで入居できるシルバーハウジングの存在を知り少し安心したとのこと。
                   * * *

 来年2025年には団塊世代の約800万人が75才以上の後期高齢者になり、超高齢化社会を迎える。見守りを受けながらバリアフリー住宅に比較的安価に暮らせるシルバーハウジングはありがたい住処となり得るため、より供給が増えることが望まれる。

監修者

中谷ミホさん

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703

取材・文/本上夕貴 構成/編集部

●サ高住「サービス付き高齢者向け住宅」とは?費用や入居条件、サービスを解説【専門家監修】

●「UR」の住み心地は? 88才と84才の夫婦が「良い点しか思いつかない」と語る高齢者向け賃貸住宅

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