尿漏れ・夜間頻尿に悩む人へ「排尿問題」を改善して幸福度を上げる8つの方法を医師が解説
排尿状況を把握するとともに取り組みたいのは体を動かすこと。西村さんが推奨するのは、ウオーキングやスクワットなどふくらはぎの筋肉を使う運動だ。
「下半身に水分がたまってむくんでいると、横になったときにそれが一気に心臓に流れて血管内に戻ります。循環する血液の量が増加することで腎臓から濾過されて出てくる尿量も増え、夜間多尿や夜間頻尿につながります。
ウオーキングやスクワットを行ってふくらはぎを動かしておけば、下半身に滞留した水分が昼間のうち、また適量ずつ心臓に戻りやすくなる。持病がない健康な人であれば、圧力が強めの弾性ソックスをはくだけでも効果があります」
下半身のむくみを取るためには、昼寝を取り入れることも効果的だと平澤さんは続ける。
「午後3時ぐらいに15分ほど、足を心臓の位置よりも高くして横になるだけで、水分が上半身に還流されて、起きている時間帯に尿が出るようになります。
体を横たえることが重要なので、実際に眠らなくても効果が見込めます。また、夜の就寝時も同じですが、横になるときは腹部の締め付けが強い下着は避けた方がいい。膀胱が圧迫され、頻尿につながります。加えて、寒い時期は体が冷えることで夜間頻尿が増えるため、膀胱や腎臓がある下腹部を腹巻きで温めたり、室温を上げると症状が緩和される場合がある。実際に室温をそれまでより2.5℃以上高く設定することで夜間頻尿の回数が減ったという研究報告もあります」(平澤さん・以下同)
尿漏れの改善に「骨盤底筋体操」も
睡眠環境を整えつつ、横になったままできる「骨盤底筋体操」も取り入れよう。
「この体操で6割の患者の尿漏れが改善されました。座った状態でもできるため、睡眠時だけでなく電車に乗っているときなど、日中にも行ってみてください。1日に数分でいいので日常生活の中で実践し、習慣づけることが大切です」
■骨盤底筋体操のやり方
【1】仰向けになって足を肩幅に開き、両膝を少し立て、腕を体の横に置いてリラックスして体の力を抜く。
【2】おならをがまんするイメージで肛門を締めながら腟と尿道を頭の方に引き上げるように意識する。
【3】そのまま10秒キープした後、力を抜く。
尿道を吊り上げる手術も選択肢の1つ
生活習慣の改善から運動まで、いろいろ試しても効果が見込めなければ、病院で治療を受けるという選択肢もある。
「歩いているだけで尿漏れがあるなど、生活に支障をきたすレベルであれば、病院を受診した方がいい。骨盤底筋の緩みなどに起因する尿漏れならば、尿道を吊り上げて締める『尿道スリング手術』という選択肢もあります。過活動膀胱の場合は、まずは薬で治療することになります」(西村さん・以下同)
ただし根治には時間を要するため、治療中いかに排尿トラブルとつきあっていくかも重要だ。
「近年は尿漏れ専用の下着や、失禁用のパッドやライナーなど排尿トラブルに特化した製品が数多く開発されており、おりものシートと一体化した薄い吸収シートや、吸収量は多いのにアウターに響かないパンツなど、ひと昔前に比べてかなり充実しています。生理用ナプキンと同様に、量や頻度、洋服などTPOに応じて適切な用品を選ぶことでQOLの向上が見込めます」
イラスト/勝山英幸 写真/PIXTA
※女性セブン2024年2月8日号
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