目の寿命を延ばすために心がけたい「食、環境、生活」のOK習慣・NG習慣「老眼鏡は早めにが○」
病気にならないこと、足腰を鍛えて歩ける体でいること、認知症リスクを予防すること──いつまでも健康でいるための条件は数あれど、実はそのすべては「目」につながっている。「目の寿命」を延ばすことが、すなわち健康寿命を延ばすことになるのだ。
教えてくれた人
■深作秀春さん/深作眼科院長
■平松類さん/二本松眼科病院副院長
100才まで生きる超長寿社会がすぐそこまで来ている現代、多くの人が健康寿命を延ばそうと生活習慣病予防や足腰の衰え防止に気を配っているが、それらと同様かそれ以上に重要なのが目の寿命だ。深作眼科院長の深作秀春さんが言う。
「人生100年時代と盛んに言われますが、目の寿命はそれよりもはるかに短い。何も予防しなければ、一般的には70才くらい。目のことを考えない生活をしていたら、40代、50代で目の寿命がきてしまい、よく見えない不自由な余生となりかねない」
とはいえ、年を重ねるとともに抱える「目が見えにくくなる」という悩みについて、私たちは「老化現象だから」と抗うことなく受け入れている面もある。実際、どんなに気をつけようとも経年劣化は避けられない。二本松眼科病院副院長の平松類さんが説明する。
「私たちの目は、カメラのような構造をしています。レンズに相当するのが水晶体で、毛様体筋という筋肉を使って水晶体の厚さを調節し、ピントが合うようにしている。水晶体は加齢とともに弾力が低下し、ピントを合わせづらくなる。これがいわゆる老眼です。毛様体筋が衰えることも老眼の一因。一般的には40才くらいから症状が現れます」
放置すれば「失明」する
加齢による目の不具合は老眼だけではない。60代以降、患者が急増するのが白内障だ。水晶体が白く濁って視界がかすんだり、光がまぶしく感じられたり、視力低下が生じ、放置すればいずれ失明してしまうこともある。
また、失明原因の1位になっているのが「緑内障」だ。主に眼球内の圧力(眼圧)が高くなることで視神経が障害され、徐々に視野が欠けていく病気だが、発見が遅れるケースが多いという。
「40才以上の20人に1人がかかるというデータもありますが自覚症状がなく、日本人の場合、眼圧は正常でも視神経が障害される『正常眼圧緑内障』が多い。眼科で通常行われている検査では見逃されてしまいやすいのです」(平松さん)
網膜の中心部にある黄斑に障害が起こり、視界の中心部のゆがみや視力の低下が生じるのが「加齢黄斑変性」だ。
「網膜色素変性症、糖尿病網膜症など、網膜の病気は失明の主な原因のひとつになっています。特に障害性の強い短波長の光が出るパソコンやスマホなどを長時間見続けることで、20年ほどで網膜症が起きます。予防をしないと中年以降は失明者が増えていきます」(深作さん)
視力低下や目の病気を放置すれば、失明以外にもさまざまなリスクにつながる。
「老眼や白内障は誰にでも起こりうるもので年をとれば100%と考えてもいい。これを“老化現象だから”と見えにくい状態のまま我慢していると、頭痛や肩こり、吐き気などの眼精疲労につながります。骨折や転倒によって寝たきりになってしまうリスクも高まり、認知症にもなりやすくなる」(平松さん)
深作さんも続ける。
「誰でもかかる白内障によって短い波長の青系統の光が吸収され見えなくなる。すると、ガスの炎の青色が見えなくなり、火に気づかずにやけどや火事などの事故が起こることもあります。白内障で視力が落ちてテレビが見られないし、足元が見えにくいので怖くて外出もできないなど、家に閉じこもってしまうのです。家でも黙ってほとんどしゃべらないので、家族から認知症だと思われている高齢者は多く、白内障手術で視力回復したら元気でよくしゃべるようになり、認知症ではなかったとわかることなどは、よくある偽認知症ケースです」
あらゆる不調につながる目の不具合だが、予防を心がけることで劣化を遅らせ、寿命を延ば「100年見える目」は可能になる。
早速、予防法を見てみよう。