86才の現役料理研究家<若杉ばあちゃん>に学ぶ食養術「食べ合わせで体を軽くする毒消し食材」
とはいえ、これまでの食事をいきなり変えることはそう簡単なことではない。日々の食事でまず意識すべきは、「食べ合わせ」と「食材の陰陽」にある。
若杉ばあちゃん流「主な食材の陰陽表」
<陽>(温める・締まる・縮む)
×卵 ×肉 ×乳製品 ×赤身魚 △白身魚 ○川魚 ◎塩(自然塩)◎みそ ◎しょうゆ
<中庸>
◎玄米 ○おもち、うどん
<陰>(冷やす・ゆるむ・広がる)
△豆腐、油あげ×豆乳、納豆 ○みかん、りんご ×バナナ、桃、梨 ×砂糖 ×人工甘味料 ○海藻 ○根菜 ○野草 ○小松菜、白菜 ○長いも、大和いも ×じゃがいも ×なす、ピーマン ×激辛食品 ×アルコール
◎…常に食べてよい、または旬のときにとってよい
○…調理法やバランスに気をつけて食べてよ
い
△…旬のときに限り少量を食べ、療養中は避ける×…とらない方がよい
「血をつくるもの、こわすもの、守るものを知ってほしい」(若杉ばあちゃん)。出典/取材をもとに本誌作成。詳しく知りたい場合は書籍参照もしくは公式HPより陰陽表が購入できる。
毒消し食材で体を軽くする
「静岡に住んでいた頃、『魚を毎日食べるけど健康だ』という漁師さんがいました。よく話を聞くと、その人の奥さんは畑で大根をたくさん作っていて毎日大根おろしを茶碗に一杯食べているっていうの。『大根どきの医者いらず』ということわざがあるように大根に含まれる酵素は胃腸の調子を整え、病気知らずの体にしてくれる。とりわけ魚のたんぱく質や脂肪の分解に働くので、魚をたくさん食べる人が大根を食べるというのはとても理に適っています。肉や卵など体に負担をかける食べ物には、その負担を軽くする食べ物を合わせることが肝心なんです」
“毒消し食材”は表の通り。ステーキソースにはにんにくがたっぷり使われていたり、さんまの塩焼きには大根おろしや柑橘類が添えられていたりと、自然と食べ合わせが実践されていることに気づくだろう。
食べ合わせて体を軽くする!「毒消し食材」
肉・卵×玉ねぎ・ねぎ類・にら・しょうが・にんにく・きのこ・トマトなど
魚介×大根・しょうが・わさび・青じそ・みょうが・山椒・ごぼう・柑橘類・海藻・酢など
砂糖×梅干し・梅酢など
油×大根おろし・柑橘類・野草
「毒消しだけでなく、健康な体をつくるためには食材の陰と陽をわかってほしい。食べ物には、体を冷やして組織をゆるめ血液を壊す陰のものと、体を温めて組織を引き締め血液をつくる陽のものがある。陰陽のバランスをとって中庸(ちゅよう)を目指すことがおいしい料理につながり、病気知らずになるの」
調理法にも陰陽はある。炒めるときや混ぜるときに右回りで回す右回転、塩や熱を加え、時間をかけて調理するのは陽。生で食べることが多い夏野菜は陰だが、加熱することで中庸になり、陰陽のバランスがとれるようになるということだ。
【ばあちゃんメソッド4】減塩こそが不調のもと
「陰の代表は砂糖で、陽の代表は塩」と言う若杉ばあちゃんは、現代の減塩志向にもNOを突きつける。
「なんでもかんでも減塩、減塩というけれど、それは大間違い。塩を摂らないと、体は冷えるし免疫力だって下がってしまう。月経不順や子宮内膜症など、冷えは女性の病気も招きます。
“いい塩梅”というように物事の加減は塩で決まる。それを“適塩”と言うの。料理の味を見るときも“塩梅を見て”というでしょう。減塩で作った薄味の料理は気が抜けておいしくないじゃない。食べたときに、おいしい!と感じるくらいの適塩が大切。ただし、精製した塩ではなくミネラルを含んだ天然塩を使ってください」
【ばあちゃんメソッド5】調味料は「本物」を使う
精製塩を使わないというように、調味料にこだわるのも「体に対する投資」と言い切る。
「本物の調味料こそ、天然のサプリメント。ばあちゃんは調味料にはこだわっています。にがりの少ない塩を選んで、みそやしょうゆを手造りし、砂糖は使わず米と米麹と米焼酎だけで作られた本みりん、油は酸化しにくいごま油と菜種油というふうに、厳選した本物を使っているの。
遺伝子組み換え食品を原料にしたものは絶対に使わないし、保存料や添加物も避けたい。本物は値段も高いけれど、外食するのにお金をかけるなら自分の体のメンテナンスをすると思って調味料に投資してちょうだい」
食材や調味料に気を配るならば、同時に意識したいのは調理道具だ。玄米は土鍋で炊くことを推奨しているが、土鍋の用途は炊飯だけではない。
「うちにあるのは、土鍋と鋳物のフライパンだけ。土鍋はね、ゆっくり温度が上がるから素材の旨みや甘みをしっかり引き出して料理をおいしくしてくれる。土鍋を使って煮物や炒め物をすれば、こっくりとした甘みが出るから、土鍋生活をしていると砂糖が欲しくなくなるから不思議」
【ばあちゃんメソッド6】自然の力で不調を治す
あらゆる毒を体にため込み病気になってしまうと、その先に待っているのは病院通いと何種類もの薬の服用だろう。それで果たして病はよくなるのか。若杉ばあちゃんは「化学物質で体がよくなるわけがない」と断言する。
「どんな薬だって副作用はあるし、体が持つ自然治癒力を阻害してしまう。病気はさまざまな症状を出すから、そのたびに薬をのんでいたら体は悪くなる一方です」
若杉ばあちゃんが実践しているのは、野菜やお茶、野草の力を活用した“食薬”だ。
「内臓疾患や冷え症、女性の病気全般に効くのはよもぎ。乾燥よもぎを煎じて足湯や腰湯、湿布をして患部を温めるだけで、痛みがピタリと止まって風邪も治ってしまう。毎日の習慣にしてほしいのが梅しょう番茶。梅干しとしょうがの搾り汁、しょうゆを番茶に入れるだけの簡単なお茶だけど、これは万能薬。風邪のひき始め、頭痛、冷え症、低体温、めまい、吐き気、腹痛などあらゆる不調を改善してくれるからばあちゃんは毎日欠かさず飲んでます」
若杉ばあちゃんの教えは、古来日本人がつないできた知恵そのもの。米や野菜を手作りすることはできなくとも、産地や製法にこだわった食材を選ぶことはできるだろう。日々の食事が私たちの体をつくる―その基本に立ち返ることで、医者いらずの健康長寿が叶うのだ。
写真/本人提供
※女性セブン2024年2月8日号
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