どんどん、私の知らない父になっていく…。戸惑うけれど、笑って過ごしたい【実家は 老々介護中 Vol.31】
81才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私は、兄と協力して実家を手伝い、忙しく過ごしています。再び父が高熱で入院してしまいました。父を見守る私たち家族は、いまこそ仲よくしていたいのに、疲れから兄と私はケンカしがち。「最期まで笑って過ごす」というのはなかなか難しいです。
老いが進み、変化していく父を見守る
父の発熱はまたも肺炎が原因でした。コロナは陰性、体力があれば2週間ほどで退院の見込み。
兄「タレイカ、俺、これまで言わないでおいたけどさ。家で最期を迎えたいなら入院しないほうがいいんじゃない?」
私「んー、私もちょっとそう思うけどさ。ただ、『肺炎は治せるから、まだ体力が残ってるなら、治してまた家で過ごしたい』っていうのが、お父さん、お母さんの考えなんでしょ」
兄「でもおかしくない? それは賭けになっちゃうでしょ。病院でガクンッてなったら、そのままさよならでしょ。俺たちが居ないときにお母さん勝手に決めちゃって、俺、責任取れないよ」
私「えー、別に仕事じゃないんだから、責任とか言わないでよ。賭けたかったら賭けてもいいじゃん。お母さんが決めたんだから、それを応援するのがお兄ちゃんと私の務めでしょ」
ここで兄が、「お前、いつも自分が正しいみたいな言い方だよな」とブツクサ言い出し、ヒートアップする前に「もうやめよう」と会話を終了。変なところで衝突するのできょうだいって難しいです。
さて、母とふたりで父を見舞うと点滴をしていました。私や母の顔はわかるようです。しかし数日会わないうちに不随意運動が起こっていて、口をモグモグ動かしていました。自分の意思とは関係なく動いてしまうのですが、会話はでき、手を握ると「あったかいねえ」なんて言ってくれました。
高齢なこと、統合失調症の薬を長く飲んでいることなどが影響しているということですが、どんどん“知らない父”になっていくので、戸惑ってしまいます。
肺炎治療は順調に進みましたが、病院でも父はオムツ替えを拒否して看護師さんをてこずらせているよう。不穏なときは「触るな!」と怒鳴っているらしく、家族は謝るしかありません。
一方、入院したことで受け入れたものがありました。水を飲むのに使う、透明の小さい急須みたいな「吸い飲み」です。「ヨボヨボじいさんみたいだから」と、ずっとイヤがっていたのですが。体調が戻ればまた家に帰れるからと、頑張って自ら水分を摂るために妥協したのでしょうか。
看護師さんは、「年齢的に喉が乾いたと感じにくいと思うんで、吸い飲みが使えて便利になりましたねー」と朗らかに言ってくれました。
入院でもうひとつ気づきがあり、金属のスプーンを使うと、父は唇や歯茎などに当たったときに痛いらしいのです。病院では柔らかいシリコン製のものを使っていました。年を取ると金属のスプーンだけでも痛いのか! 今まで気づかず使っていてごめん、お父さん。
病室を出るとソーシャルワーカーさんに呼び止められ、治療が終了したら本当に家に帰るのか、再確認されました。この病院から実家までは距離があるので、このまま弱っていったら、移動する車の中で亡くなる可能性もあるかもしれない、と。そのケースも致し方ない、と本人や家族が思えるならば、帰る方向で考えましょう、という話でした。
母は「ずっと病院だよって言うより、お父さんは納得だと思うから、家に帰したい」と答え、さてどうなるかという感じです。
もしも家に帰って来れたらまた在宅介護が始まります。父と過ごせるラストチャンスでしょう。でも、慌ただしさに疲れてきて、大きい声じゃ言えないけど「いつ終わるの?」という気持ちになることも。引き続き、アラフィフのエネルギーを振り絞ります…。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(81才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
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